表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

放課後の教室

導入みたいなもんです。

 僕は自分が嫌いだ。


 いや……許せないと言っても過言ではない。


 ナルシストという言葉を知っているだろうか。彼らは自分が好きで好きでしょうがない人種らしい。


 僕はその単語を知ったとき、そいつらを心底羨ましいと感じた。だって自分が好きということほど、幸福なことはないよ。


 だってそうだろ?好きな奴と居るとき、人間は最も幸福を感じるのだろ。なら好きな奴と一心同体なナルシスト達は最高に幸せだ。


 僕も一度で良いから自分を好きになってみたいよ。


 あぁー自分を好きな世界ってどんな世界なんだろう。


 夢の中の不知火仏しらぬいほとけが呟いた瞬間、突如彼を呼ぶ声がして現実世界に引き戻された。


 不知火は気分の悪い夢を見たためか、不機嫌そうに、机から顔を上げた。


 鋭い目付きに、やや整った顔立ちが、より一層の不機嫌さの演出をしている。


 不知火の目の前には、きりっとした整った顔立ちの女の子が、不知火の不機嫌な顔にも全く動じることなく、仁王立ちで腕を組み、不知火を見下ろしている。



 彼女は迫力を出しているつもりかもしれないが、子猫っぽい雰囲気の顔立ちと、肩まで伸びたポニーテールが幼さを演出しているため、迫力は皆無と言ってもいいだろう。


 「完全に寝ぼけた顔しちゃって!もう放課後だよっ、寝る時間じゃないよっ、帰る時間だよっ」


 不知火を起こし、矢継ぎ早に話しかける彼女の名は、能登路歩夢のとじあゆむ、不知火のクラスメイトであり、クラス委員長をやっている、明朗快活でお節介な少女である。


 不知火に積極的に関わろうとする人物は少ないので、不知火が学内で認識している数少ない人物の一人だ。


 「んー委員長……今何時?」


 不知火は瞼をこすりながら、気だるそうに話しかけた。


 「えーと……午後六時少し前だねっ!というか私の名前は委員長じゃないよっ!歩夢って呼んでって何度も言ってるでしょ!」


 能登路はポニーテールをぴょこぴょこ揺らしながら、冗談半分にもとれるように怒っている。


 「じゃあ歩夢さんで……」


 (つかもう六時か、こんな時間まで寝てるなんて……)


 不知火は放課後まで昼寝してしまった自分に少しイラついた。


 「そういえば、なんで歩夢さんはここに?」


 「へっ、私?ちょっとクラス委員長の集まりで長引いちゃってさ!あとね、毎日言ってる気がするけど、明日になったらまた委員長って呼ぶのはなしだよ!分かった?分かったね?分かったよね?分かれぇぇぇぇ!」


 歩夢は突然な質問に少し驚きながらも、能登路節を炸裂させ、不知火に追い打ちをかける。


 「分かった分かった。明日からはきちんと歩夢さんって呼ぶから落ち着いて」


 不知火はテンションがうなぎ登りで上がる歩夢に圧倒され、少し引き気味だ。


 「よしよしっ。分かれば良いんだよっ、ワトソン君。嘘は針千本だからね」


 先ほどのハイテンションは嘘かのように、ケロッと平常に戻り、嬉しそうに笑っている。


 相変わらずコロコロと表情が変わる面白い奴だなと思いながら、不知火は机にかけてある鞄を持ち立ち上がった。


 「こんな時間だし、僕はもう帰るよ」


 「うんっ!私もこれ片付けてから帰るから、先に帰ってて」


 不知火は歩夢と挨拶をした後、夕闇に染まる街並みの中、家路を急ぐ。


 逢魔時が見せる光景はどこか幻想出来で、現実と切り離された幽世の世界を感じさせる気がする。


 その美しさと不気味さを兼ね揃えた街並みから、不知火はなんとなく嫌な予感を感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ