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魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】の各話一覧  作者: Koh


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第32話 同率優勝

 魔法大会から二週間後。学園の大講堂。


 全校生徒が席を埋めていた。正面の壇上には学園長が立ち、その横に二つのトロフィーが並んでいる。



「——本年度の王都魔法大会、決勝は引き分け。審議の結果、同率優勝となった」


 学園長の声が、大講堂に響いた。


「優勝——アリサ・ヴァイスフェルト。ピリカ・ベルフォード。以上二名、壇上へ」



 拍手が広がった。二人は席を立ち、壇上へ向かった。



「"才無し侯爵"が優勝って、あいつ、どんなイカサマしたんだよ」


「それが、爆裂魔法で闘技場を壊しかけたらしいぜ」


「闘技場の壁を粉々にしたとか」


「私は砂にしたって聞いたわよ」


「は? どんな威力だよ。ってかあのファイアボールも撃てないピリカがそんな魔法使えるわけないじゃん」


「いや、俺、実際に会場で見たんだよ。たしかにすっっげぇ見たこともない威力の爆裂魔法だった」


「なんか最近のピリカ、よくわからないな……」


 ざわざわと、あちこちでひそひそ声が聞こえた。



 壇上に並んで立った。



 学園長が、まずアリサにトロフィーを手渡した。


 大講堂が割れるような拍手と歓声に包まれた。歴代最高の才能。超級魔法フェニックスを出した天才。誰もが認める優勝者。——アリサはトロフィーを受け取り、静かに一礼した。



 次に、学園長がピリカの前に立った。トロフィーが差し出される。


 ——拍手は、まばらだった。


 ぱらぱらと、義務的な音がまだらに散っている。その隙間を、ひそひそ声が埋めていた。


 金属の表面に、ピリカの顔がぼんやり映っている。


 ——三ヶ月前、ファイアボールが出なくて泣いていた自分が、これを持っているなんて信じられない。


 ——でも、手の中の重さは本物だった。



 学園長がマイクの前に戻った。


「——二人にもう一度、盛大な拍手を!」


 大講堂に、今度は大きな拍手が広がった。——それでも、さっきアリサが受け取ったときの歓声には届かない。


 アリサがちらりとこちらを見た。小さく、目だけで笑った。


 ——大丈夫。隣にいるのが、あの決勝を一緒に戦った相手だと思うと、不思議と周囲の声は気にならなかった。



 表彰が終わり、大講堂から出た。


 廊下を歩いていると、すれ違う生徒たちの視線を感じた。好奇、困惑、疑念。——以前のような無関心や蔑みや哀れみとは、少し違う目だった。



 アリサが、自然な足取りで隣に並んできた。


 二人とも、友人と呼べる相手はいなかった。アリサは実力が突出しすぎて周囲が距離を置き、ピリカは"才無し"の烙印が人を遠ざけた。——けれど、模擬戦と大会を経て、二人はよく話すようになっていた。


 アリサはすでに知っている。ピリカに魔法の才能がないことを。——そして、それを超えるほど魔法の勉強に打ち込んでいることも。理論や授業でわからないことがあると、アリサの方からピリカに相談を持ちかけることも増えていた。



「この後、ピリカは魔力量の再測定をするんでしょ?」


「うん。——まぁ、そこは本当に変わってないから、意味ないんだけどね……」


「あれだけの規模の爆裂魔法を五千人の前で披露したんだもの。学園としては"ついに魔力量を増やす方法が見つかったのか!?"ってなるわよね」


「残念ながら、期待には応えられないなぁ」


 ピリカは苦笑した。魔力量は変わっていない。変わったのは、魔力の使い方だ。——でも、それを証明するには測定を受けるしかない。


「ねぇ、私も一緒に見ていていいかしら?」


「別にいいけど、最低ランクの魔力量が証明されるだけだよ?」


 ピリカは笑ったが、アリサは笑わなかった。


「それでも、一回ちゃんとこの目で見ておきたいの。——あなたは、"魔法使いの新しい可能性" になると思っているから」


「えぇ……そんな大袈裟な……」



 世界はまだ、彼女を「才無し」と呼んでいた。


 ——けれど、世界最強の魔法使いは「努力の才能」と、歴代最高の才能と呼ばれる少女は「魔法使いの新しい可能性」と呼んだ。世界の頂点に立つ二人が、世界の評価を裏切る言葉を、別々の場所で口にし始めていた。


 その重大さにまだ気付いていないのは、世界と——そして、ピリカ本人だけだった。


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