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神籍のトワ  作者: 灯野 しおん
第四章 高天原の呼び声

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第四十八話

光だった。


 高天原全体が。


 白い光に包まれる。


 トワの光。


 もう一人のシオンの光。


 二つの希望。


 離れていた魂が。


 初めて共鳴していた。


 ゴォォォォォォン――


 天魂樹が震える。


 枝が輝く。


 葉が輝く。


 魂が輝く。


 侵食された黒い部分さえ。


 一瞬だけ白く染まる。


「これは……。」


 天之御影が息を呑む。


「神籍の原初反応。」


 樹巫女が涙を流す。


「初めて見た……。」


 何万年。


 誰も見たことがない。


 希望の完全な姿。


 その時。


 トワの身体が浮いた。


「え?」


 白い光が包む。


 同時に。


 天魂樹頂上のシオンも浮かび上がる。


 二人が近づいていく。


 まるで。


 磁石のように。


「トワ!」


 レンが叫ぶ。


 だが。


 止められない。


 ヨルも理解していた。


「来たか。」


 静かな声。


 アマツが振り返る。


「知ってたの?」


「なんとなく。」


 ヨルは空を見上げる。


「希望は元々一つだった。」


「なら。」


「いつか戻る。」


 トワはシオンを見る。


 シオンも見ていた。


 同じ顔。


 けれど。


 違う人生。


「あなたは。」


 トワが呟く。


「ずっと独りだったの?」


 シオンは少し驚く。


 そして。


 小さく笑った。


「うん。」


 初めて見せる。


 普通の少女みたいな笑顔。


「ずっと。」


 何万年も。


 創世主を探し続けた。


 観測者から逃げ続けた。


 誰にも知られず。


 誰にも見つけてもらえず。


 ただ。


 歩き続けた。


「苦しくなかった?」


 トワの問い。


 シオンは答えない。


 代わりに。


 涙が流れた。


 それが答えだった。


 トワは微笑む。


「お疲れ様。」


 その瞬間。


 シオンの瞳が見開かれる。


 何万年。


 誰にも言われなかった言葉。


「もう大丈夫。」


 トワが手を伸ばす。


「帰ろう。」


 シオンの身体が震える。


 そして。


 泣きながら笑った。


「うん。」


 二つの手が重なる。


 その瞬間。


 世界が光に包まれた。


 希望が一つになる。


 優しさ。


 強さ。


 願い。


 覚悟。


 全てが混ざり合う。


 トワの髪が光る。


 瞳が白金色へ変わる。


 その背中に。


 巨大な光の翼が広がった。


 創世主が涙を流す。


「シオン。」


 懐かしい名前。


 最初の希望。


 完全な姿となった光。


 だが。


 その瞬間。


 カグロが笑った。


「ようやくだ。」


 全員が振り向く。


 観測者の欠片。


 その顔には歓喜があった。


「ずっと待っていた。」


「希望が揃う瞬間を。」


 トワの胸がざわつく。


 嫌な予感。


 カグロは空を見上げる。


 そして。


 言った。


「門が開く。」


 その瞬間。


 高天原の空が割れた。


 巨大な裂け目。


 今までの比ではない。


 世界そのものを覆うほどの裂け目。


 その奥で。


 無数の赤い瞳が開く。


 一つではない。


 十でもない。


 百でもない。


 数え切れない。


 観測者たち。


 世界を終わらせる存在が。


 ついに姿を現した。


 神々が絶望する。


 樹巫女が震える。


 天之御影が膝をつく。


 創世主でさえ青ざめる。


「そんな……。」


「まだいたのか。」


 そして。


 裂け目の最奥。


 全ての観測者の中心で。


 一際巨大な瞳が開いた。


 その存在を見た瞬間。


 創世主の顔から血の気が消えた。


「嘘だ。」


 初めて。


 創世主が恐怖を見せた。


「お前は……。」


 巨大な瞳の奥から。


 声が響く。


 《発見》


 《創造者確認》


 《実験世界確認》


 《処分開始》


 世界が震える。


 そして。


 創世主は震える声で呟いた。


「違う。」


「観測者じゃない。」


「もっと上だ。」


 トワが振り向く。


「何なの?」


 創世主は答える。


 絶望と共に。


「私を作った存在だ。」

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