表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神籍のトワ  作者: 灯野 しおん
第四章 高天原の呼び声

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/88

第四十二話

《処理を開始する》


 その声が響いた瞬間。


 世界中の神籍が震えた。


 人々は気付かない。


 けれど。


 犬が空へ吠え。


 鳥が一斉に飛び立ち。


 眠っていた子供たちが同じ夢を見る。


 世界が本能で恐れていた。


 終わりを。


 神籍管理局東京支部。


 会議室の床が軋む。


 モニターいっぱいに映る二つの赤い瞳。


 その存在は。


 今まで出会った誰とも違った。


 ヨルの孤独。


 アマツの力。


 創世主の神秘。


 それら全てを超えている。


 ただ見ているだけなのに。


 魂が削られていく。


「目を合わせるな!」


 レンが叫ぶ。


 即座に結界を展開。


 ミコも術式を重ねる。


 天之御影は神言を紡ぐ。


 三重の結界。


 それでも。


 壁に亀裂が走る。


 トワは息を呑んだ。


「何なの……あれ。」


 創世主が答える。


「観測者。」


 静かな声。


「世界の外側を巡る存在。」


「生まれた世界を観測し。」


「異常があれば消去する。」


 全員が凍り付く。


「消去?」


 トワが呟く。


 創世主は頷いた。


「本来なら。」


「世界は有限であるべきだった。」


「生まれ。」


「育ち。」


「終わる。」


「それが自然。」


 天之御影が青ざめる。


「だから輪廻が。」


「そう。」


 創世主は頷く。


「輪廻は異常だった。」


 静寂。


「え?」


 トワの頭が追いつかない。


「魂が終わらず巡る世界。」


「そんなもの。」


「本来は存在しない。」


 創世主の声は悲しかった。


「私が作った。」


「死が終わりにならないように。」


「誰も独りにならないように。」


 ヨルが目を伏せる。


 トワは理解した。


 この世界そのものが。


 創世主の願いだった。


 孤独を終わらせるための。


 だから。


 観測者は来た。


 異常だから。


 許されないから。


「ふざけるな。」


 低い声。


 レンだった。


 全員が振り向く。


 レンは珍しく怒っていた。


「誰も独りにならない世界の何が悪い。」


 静寂。


 創世主が目を見開く。


 ヨルも。


 アマツも。


 レンは続ける。


「守る。」


 拳を握る。


「この世界を。」


「神崎たちを。」


「全部。」


 トワの胸が温かくなる。


 すると。


 モニターの向こうで。


 赤い瞳が動いた。


 初めて。


 レンを見る。


 そして。


 《観測》


 短い言葉。


 その瞬間。


 レンの身体が光に包まれた。


「レン!」


 トワが叫ぶ。


 だが。


 レン自身が一番驚いていた。


「……何だ。」


 光が強くなる。


 そして。


 誰も予想していなかったことが起きた。


 レンの背中から。


 白銀の翼が現れた。


 巨大な翼。


 神ですらない。


 魂でもない。


 もっと古い何か。


 天之御影が震える。


「まさか……。」


 創世主も立ち上がる。


 初めて。


 本当に驚いた顔で。


「君だったのか。」


 レンが振り向く。


「……何が。」


 創世主は呟いた。


「失われた最後の欠片。」


 トワの心臓が止まりそうになる。


 失われた欠片。


 創世主の魂。


 トワが希望。


 ヨルが夜。


 ならば。


 レンは何なのか。


 創世主の瞳が潤む。


「やっと見つけた。」


 そして。


 その名を呼んだ。


「――れい。」


 レンの知らない名前。


 しかし。


 その瞬間。


 レンの記憶の奥底で。


 封じられていた何かが目覚め始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ