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神籍のトワ  作者: 灯野 しおん
第四章 高天原の呼び声

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第四十一話

会議室は静まり返っていた。


 誰も言葉を発せない。


 創世主の言葉。

「君も私と同じ場所から来た。」


 それは。

 今までの常識を全て覆していた。


「……私が?」

 ようやくトワが口を開く。


「うん。」

 創世主は頷いた。


「正確には。」

「君の魂の一部。」


 トワは眉をひそめる。

「意味が分からない。」


「だろうね。」

 創世主は苦笑した。


「少し昔話をしよう。」

 黒い侵食の映像が変化する。


 宇宙。

 星々。

 銀河。

 さらに遠く。

 さらに外側。

 やがて。

 何も無い場所が映る。

 光も。

 闇も。

 時間も。

 存在しない場所。


「ここが外側。」

 創世主が言う。

「世界が生まれる前の海。」


 トワはその景色に見覚えがあった。

 夢で見たことがある。

 何度も。


「ここには生命が無かった。」

「でも。」

「可能性だけは存在した。」


 静かな声。

「だから私は。」

「一つの世界を作った。」


 無数の光が生まれる。

 魂。

 星。

 命。

 そして。

 輪廻。

 世界が完成していく。


「最初は順調だった。」


「けれど。」

 創世主の表情が曇る。

「私は間違えた。」


 全員が息を呑む。

「世界は完成した。」

「でも。」


「孤独は消えなかった。」


 ヨルが目を伏せる。

 アマツも黙る。


「だから私は。」

「自分の魂を砕いた。」


 トワの心臓が跳ねる。


「砕いた?」

「うん。」

「世界の中へ。」

「無数の欠片として。」


 光が砕ける。

 無数の流星。

 世界へ降り注ぐ。


 その中に。

 一際強く輝く光があった。


 白い光。

 希望の色。


「それが。」

 創世主は微笑んだ。

「君。」


 トワの呼吸が止まる。

「……私?」

「神崎トワ。」

「シオン。」

「神の子。」

「全部正しい。」

「でも。」

「もっと古い名前がある。」


 創世主が手を伸ばす。

 モニター越しなのに。

 温かさを感じた。


「君は。」

「私の希望だ。」


 その瞬間。

 トワの胸が光った。


 白い光。

 今までで最も強い光。

 世界中の神籍が反応する。


 東京。

 京都。

 黄泉駅。

 高天原。


 全ての魂が共鳴する。


 だが。

 その時だった。


 警報。

 ビーッ!!

 ビーッ!!


 カナメが叫ぶ。

「侵食速度急上昇!!」


 全員がモニターを見る。

 天魂樹。

 根元の腐食が。

 爆発的に広がっていた。


「なに!?」

 天之御影が青ざめる。

「ありえない!」

 創世主も初めて表情を変えた。


「……来た。」

 低い声。


 トワの背筋が凍る。

「誰が?」


 創世主は静かに答えた。

「私を壊したもの。」


 その瞬間。

 モニターが真っ黒になる。


 そして。

 映し出された。

 二つの赤い瞳。


 前に現れた"目"よりも深い。


 憎しみ。

 虚無。

 終焉。

 全てを飲み込む瞳。


 そして。

 その存在は。

 初めて言葉を発した。


 《発見》

 《創世主残存確認》

 《希望残存確認》

 《処理を開始する》


 トワの胸が激しく脈打つ。


 創世主が立ち上がる。


 ヨルも。

 アマツも。

 レンも。

 誰もが理解していた。

 今までの敵は前座だった。

 本当に世界を滅ぼした存在が。


 ついに。

 こちらを見つけたのだ。

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