第四十話
会議室に誰も声を出せなかった。
モニターの向こう。
黒い侵食の中心。
そこに立つ人物。
創世主。
世界を生み出した存在。
そのはずだった。
だが。
トワには違和感があった。
目の前の存在からは。
圧倒的な力を感じる。
それなのに。
どこか寂しそうだった。
「やっと会えたね。」
その人物は再び言う。
まるで。
ずっと探していた誰かを見つけたように。
「トワ。」
優しい声。
だが。
その瞬間。
ヨルが前へ出た。
「名前で呼ぶな。」
空気が変わる。
トワは驚く。
ヨルが怒っている。
本気で。
「……ヨル?」
創世主は少し悲しそうに笑った。
「まだ怒ってるんだね。」
ヨルの拳が震える。
「当たり前だ。」
「君は消えた。」
「全部残して。」
部屋が静まり返る。
アマツも目を伏せる。
ミコも苦しそうだった。
創世主は否定しない。
「うん。」
「ごめん。」
その一言に。
逆にヨルの怒りが強くなる。
「ごめんで済むと思うな。」
黒い影が揺れる。
最初の孤独。
最初の夜。
ヨルの感情が溢れ始める。
「お前が消えた後。」
「どれだけ壊れたと思ってる。」
「どれだけ泣いたと思ってる。」
トワの胸が痛くなる。
ヨルはずっと独りだった。
その原因が。
目の前にいる。
創世主は静かに聞いていた。
反論もしない。
やがて。
小さく言った。
「知ってる。」
ヨルが固まる。
「全部見てた。」
「……は?」
「ずっと。」
その瞬間。
天之御影が叫んだ。
「それは不可能です!」
創世主が視線を向ける。
「どうしてですか。」
「あなたは消失した!」
「神々の観測からも!」
「神墓にも記録が無い!」
創世主は静かに微笑む。
「だって。」
「私は最初からそこにいなかったから。」
全員が凍りつく。
「……何?」
レンが呟く。
創世主の瞳が細くなる。
「君たちは勘違いしてる。」
「私は世界を作った。」
「でも。」
「世界の住人じゃない。」
会議室の空気が重くなる。
嫌な予感。
前に見た。
あの裂け目。
世界の外側。
創世主は静かに言った。
「私は外から来た。」
沈黙。
「外?」
トワが呟く。
「うん。」
創世主は頷いた。
「世界の外側から。」
「この世界を作った。」
天之御影の顔色が変わる。
神々ですら知らない真実。
それが今。
語られようとしていた。
そして。
創世主はトワを見つめる。
優しく。
懐かしそうに。
「でもね。」
「君は違う。」
トワの心臓が鳴る。
「え?」
創世主は微笑む。
「トワ。」
「君も。」
そして。
世界を揺るがす言葉を告げた。
「私と同じ場所から来たんだ。」
静寂。
誰も。
一言も発せなかった。
神崎トワ。
神の子ではない。
最初の魂でもない。
さらにその前。
世界の外側から来た存在。
最大の秘密が。
ついに姿を現し始める。




