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神籍のトワ  作者: 灯野 しおん
第三章 『ユラ』

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第二十九話

「見つけた。」


 少年は笑っていた。


 モニター越し。


 京都の夜空。


 巨大な黒い鳥居の上。


 まるでそこが当たり前の居場所であるかのように。


 神籍管理局東京支部。


 誰一人として声を出せない。


 ミコの顔は青ざめていた。


 レンですら驚いている。


 トワは画面を見つめる。


 不思議だった。


 怖いはずなのに。


 どこか懐かしい。


 少年もまた。


 トワを見つめていた。


 まるで。


 ずっと前から知っているように。


 その時。


 少年の唇が動く。


 「トワ。」


 名前を呼ばれた。


 次の瞬間。


 トワの頭に激しい痛みが走る。


 ドクン。


 心臓が脈打つ。


 映像。


 知らない景色。


 夜空。


 星。


 海。


 そして。


 一人の少年。


 白い髪。


 金色の瞳。


 その少年が笑う。


 『大丈夫。』


 優しい声。


 『僕が最初だから。』


 映像が途切れる。


 トワは膝をついた。


 「っ……!」


 レンが支える。


「神崎!」


 だが。


 少年の声は続く。


 『思い出して。』


 画面越しなのに。


 直接心へ響く。


 『僕たちは、

 一緒に生まれた。』


 トワの呼吸が止まる。


 ミコが叫ぶ。


「聞いちゃ駄目!!」


 その瞬間。


 モニターがブラックアウトした。


 真っ黒。


 警報だけが鳴り響く。


 静寂。


 やがて。


 カナメが震える声を出す。


 「……京都支部。」


 通信。


 ノイズ。


 そして。


 絶望的な報告。


 『京都支部壊滅。』


 部屋が凍り付く。


 『伏見結界崩壊。』


 『封印対象、

 覚醒を確認。』


 『識別コード――』


 ノイズ。


 そして。


 『アマツ。』


 ミコが目を閉じる。


 レンは天井を見上げた。


 苦々しく。


 「最悪だ。」


 トワは呟く。


 「……アマツ?」


 誰もすぐには答えない。


 やがて。


 ミコが静かに言った。


 「最初の魂。」


 ヒカリが震える。


 ユラたちも怯える。


 「輪廻が始まる前に生まれた魂。」


 トワは息を呑む。


 「神より古い存在。」


 部屋が静まり返る。


 ミコは続ける。


 「世界で最初に生まれた魂。」


 「そして。」


 彼女の声が少し震えた。


 「世界で最初に、

 独りになった魂。」


 その言葉に。


 トワの胸が痛む。


 理由は分からない。


 でも。


 分かる気がした。


 アマツは。


 ずっと待っていたのだ。


 一人で。


 何千年も。


 何万年も。


 そして今。


 ようやく。


 トワを見つけた。


 その頃。


 京都。


 伏見。


 巨大な黒い鳥居の上。


 アマツは夜空を見上げていた。


 その隣に。


 黒い霧が集まる。


 シグレが姿を現す。


 「計画通り?」


 アマツは微笑む。


 「ううん。」


 金色の瞳が細まる。


 「予定より早い。」


 シグレが眉を上げる。


 「何が。」


 アマツは東京の方角を見る。


 そして。


 静かに笑った。


 「トワが、

 僕を思い出し始めた。」


 その笑顔は優しい。


 だが。


 どこか危うかった。


 まるで。


 世界そのものを壊してでも、

 一人の少女へ会いに行こうとする存在のように。

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