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 ナイジェルと思いを通じ合わせたセレスティナは、晴れて彼の婚約者として扱われることになった。オリヴィアは「そうなると思っていたわ!」といたく喜んでくれた。ネリーとアンも喜んでくれたのだが、ティルダだけはぎこちない笑顔で、それでもおめでとうとお祝いを述べてくれた。もしかして自分は彼女に悪いことをしたのかもしれないとセレスティナは思ったが、ナイジェルを諦めることはできそうにないので心の中で謝っておいた。

 侍女としてそのままオリヴィアに仕え続けるか、それとも立場を変えるかとオリヴィアに聞かれたのだが、このまま仕えさせ続けてほしいとセレスティナは希望した。たとえばナイジェルの侍女になることも打診されたのだが、執務をしている彼を見た感じ、周りにいる侍従たちが有能そうなので入り込む隙間がなさそうだった。執務の補助を重ねて経験を積み、ナイジェルと呼吸を合わせた彼らのような仕事ぶりは、少なくとも一朝一夕には無理だ。それよりも前公爵夫人という立場を持つオリヴィアのもとで、次期公爵夫人としての振る舞いを覚え、必要なことを学ばせてもらった方がよさそうだ。有能な侍女ではなく手のかかる子供のようで申し訳ないのだが、自分には足りないものが多すぎることを自覚しているので甘えさせてもらう。その代わり、出来そうなところでなるべく役に立ちたい。

 オリヴィアの侍女であり続けることを希望した理由は、もう一つある。

「……本当にいいのね? 無理をすることはないのよ?」

「いいえ、やらせてください。この力をお役に立てたいのです」

 案じてくれるオリヴィアに、セレスティナは強く言った。解呪師として魔物討伐に同行したい、ファルカンド公爵家で学ばせてもらったことを役立てたい、そう思ってオリヴィアの魔物討伐への同行を志願したのだ。

 侍女仲間であるネリーは、おっとりした性格ながら小型の魔物は倒せるくらいの実力がある。ティルダは戦闘技能こそないものの、持ち前の冷静さで魔物を目にしても怯まず、オリヴィアの命令に従って魔物討伐の手伝いができる。そんな二人がオリヴィアに付き従って魔物討伐に出向くことが決まったので、ここなら自分も何かの役に立てるかもしれない。

 オリヴィアの侍女であり続ければ、現場に出る機会が増える。セレスティナはそれを望んだので、立場を変えたいと思わなかったのだ。

 ナイジェルも魔物討伐に関しては一通りの修練を積み、実戦もこなしてきているが、現場に出るのはオリヴィアが主だ。公爵という立場にあるためやることが多く、魔物討伐で深手を負ったりした際の影響も甚大だということで、オリヴィアがその部分を担当しているというわけだ。ナイジェルが公爵としてさらに経験を積み、執務に必要な人員を充分に集めてある程度のことを任せられるようになるまではこの体制を続けるつもりだということだ。ちなみにオリヴィアの夫ウォルターは魔物討伐にまったく向いていないらしい。

 魔物討伐に当たる騎士たちを取りまとめているのもオリヴィアで、いずれ指揮権をナイジェルに譲る意思はあるものの、まだ役割を移行する段階に入ってはいない。そういった状況なので、セレスティナにも手伝える部分がありそうだ。ナイジェルへの指揮権の移譲が滞りなく行われるように、次期公爵夫人として魔物討伐に関する知識を得、経験を積んでおくことは重要だ。一般的に言って公爵夫人に要求されることではないが、先代の公爵夫人がこうなので、その後継になるセレスティナもまったくの素人では示しがつかない。

 ナイジェルには心配されてしまったが、自分がやりたいことだとセレスティナは彼を説得した。曲がりなりにも解呪師の家系の血を継ぐセレスティナだからこそ、現場でのいち早い対応が可能になる。ネリーも以前に言っていた。魔物討伐に解呪師がいてくれたら安心なのに、と。

「あなたの心意気は買うわ。でも、くれぐれも自分を過信はしないように。現場の雰囲気を知り、見ておくだけのつもりで最初はいいと思うわ。私の命令には従って、絶対に無茶をしないように」

「心得ました」

「……もしかしてと思うのだけど、あなたの父君のことを気にしている?」

「それも……少しあるかもしれません。本当に申し訳ありませんでした」

 セレスティナの父、ソレム伯爵ルイスの不法侵入についてだ。彼がパーティに招かれるわけがないと思ったのでオリヴィアに確認したのだが、やっぱり招かれざる客だった。彼を通してしまった門番が叱責されていて、そちらに対しても申し訳ない気持ちになったのだが、これはこちらの手落ちだとオリヴィアには逆に謝られてしまった。

「罪滅ぼしなんて考えないでね。これは本当にこちらが悪いのだから。……いえ、悪いのはあちらね」

 少しおどけて言ったオリヴィアに、セレスティナは少し笑った。

 だが、心のどこかで、彼がまだ諦めていないだろうことを……今後も何かが起こるだろうことを予感していた。

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