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【中編版】実家も国も私を捨てましたが、実は私を愛さないとこの国、滅びるんですよ? 絶望する皆様を特等席で眺めながら、私は冷徹な王子の腕の中で思考停止(とろ)けています。  作者: 久世朱里
第一章 滅びる国に未練なんてない

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 ヴァルモント伯爵家の三女だった私、エミリアは、持参金が出せないという理由で家族に捨てられました。


 国もとっくに私の事など忘れています。


 家族にも国にも、期待など最初からしていませんでしたから、私は別にいいんです。


 ——ただ一つ、問題があるとすれば——……。


 私がこの国の「加護」そのものだったということです。


 私を拾った王子と、外壁から街の外に出ると街を包む結界は崩壊しました。


◆◆


「平民でも何でもいいから嫁げ」


 お父様はそう言って持参金にでもしろと金貨の入った袋を私に投げ渡す。


 私のお父様のレオポルド・ヴァルモントは伯爵の爵位を持っている。


 けれど三女の私、エミリア・ヴァルモントに与える持参金は僅かな金貨だけだった。


 十枚も入っていない持参金で嫁げるのはお父様のいう通り平民くらいでしょう。


「ごめんなさい、エミリア。私がこの国の王子様に嫁ぐから持参金をたくさん使ってしまって……」


 私のすぐ上の姉で、伯爵家の次女セシール・ヴァルモントが悪びれた様子も無く私に言います。


 この国の王子リヒャルト・アルスター様は珍しく私にも優しくしてくれる人だから、持参金が金貨百枚以上でもいいと思います。


「でも、エミリアみたいにおかしな恋にはこの辺の貴族は近寄らないから、持参金が金貨十枚でも多すぎるくらいよね」


 姉のセシールは悪いと思っていないどころか、あからさまに私を馬鹿にします。


 それであなたが満足ならいいのだけれど、私はいつものことなので気にしていません。


 公爵家に嫁いでいる長女マルグリッド・ヴァルモントもセシールと同じく金貨百枚は持たされていましたが、三女の私の持参金が金貨十枚以下と聞けば笑うでしょう。


 三女の私は明らかに他の姉妹と差をつけられているけれど、それは私がおかしいから、仕方がないのです。


 私は前世の異世界で生きていた記憶を持ったままにこの世界に生まれてきました。


 そのせいで子供らしいところのない子供で不気味がられていました。


——『それは大切な使命を持っているから仕方のない事なの』


 ひいお婆様のセラフィーナ・ヴァルモントだけが私を分かっていました。


 だから、私はひいお婆様の後を継ぐことになってしまいました。


 それは世界とズレてしまった私たち——異世界からの転生者にしか出来ない仕事でした——。



◇



 少し前のことです。


 私の家族が私を結婚させようとしていることは分かっていました。


 ただ私と結婚したいなどという物好きな人は見つからないだろうと思っていました。

 

 私は、結婚など最初から考えていないから、一人で生きるための仕事をくださいと王宮を尋ねました。


 けれど、伯爵令嬢にさせられる仕事はないと断られました。


「あ、でも、第二王子のリヒャルト様がちょとした雑用をしてくれるような秘書を探していたから、それなら……」


 リヒャルトの秘書……。


「それは絶対に無理だ。彼女はリヒャルト様の婚約者のセシール様の妹だ」


「え、彼女が……あの……」


 私はこれ以上、王宮の政務官たちを困らせてはいけないからと、その場を後にしました。


 ちょうど政務官たちの仕事場にリヒャルトが入ってきました。


 私は慌てて横に避けます。


 リヒャルトが私に驚いた顔をしました。


 でもすぐに笑顔を作って私に挨拶してくれました。


「エミリア、こんにちは」


 たったそれだけですが、私を知っていて挨拶をしてくれる人は貴重でした。


 少しだけ心があったかくなります。


「……秘書に……彼女を雇うなんて出来ない……!」


 リヒャルトの強い口調が聞こえてきました。


 ズキッと胸が痛みました。


 どんなに表面上は優しくても、みんな結局は同じでした。


「……あんなに綺麗な人なのに……あれがヴァルモント伯爵の三女……縁談が来たけど、もちろん断りましたよ、気味が悪い」


 親切にしてくれた人も、私の素性を知れば手のひらを返します。


 もう、慣れたことだけど……——。


 いつもは振り返らないのに、振り返ってしまいました。


 あなたは私を見ていました。


 憐れむような瞳でした。


 私は目を伏せ前を向きます。


 ——この国に私の居場所はないようです。



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