第100話-B:スポーツって、何ですか?
ごめんなさい、今回の話は99話-Aのコピペです。手抜きですwwwww
かくして今回の県予選大会は、彩花が優勝、隼人が準優勝という結果に終わった。
だが鎮静剤の効果が未だに身体に残っており、しかも朱雀天翔破の反動で右肘を痛めている今の静香が、とても楓との試合が出来る状態では無いと本部長が判断した事から、本部長と運営による話し合いの結果、楓と静香の3位決定戦の扱いは結局保留という形になった。
なので3位決定戦の扱いが正式に決まるまでは、今日の試合のチケットの半券は捨てずに取っておいて欲しいと、ウグイス嬢が観客たちに対してアナウンスしたのだが。
それでも観客席からは、六花に対しての怒号と罵声が未だに止まらない事態になってしまっていた。
そう…彩花を虐待したなどという、周囲の身勝手な大人たちのせいで理不尽に着せられてしまった、六花への冤罪が理由だ。
「皆、彩花の優勝インタビューが終わったら、隼人と朝比奈さんを彩花と一緒に、近くの総合病院に連れて行くわ。一応3人に精密検査を受けさせたいと思っているから。」
そんな中でも六花は先程までと違って決して取り乱す事なく、聖ルミナス女学園バドミントン部の監督代行として、穏やかな笑顔で愛美たちに指示を出したのだった。
今の六花は、隼人から『希望』を貰ったから。それ故に神衣を身に纏う事が出来たのだから。
だから自らに浴びせられる罵声にも、もう決して怯む事はない。
朱雀天翔破を彩花との試合で二度も放ってしまった反動で、痛めてしまった静香の右肘の状態も勿論なのだが、彩花に五感どころか第六感まで奪われてしまった隼人の状態も心配だ。
だから六花は彩花の優勝インタビューが終わり次第、3人を病院に連れて行きたいと考えているのだ。
まあ神衣に目覚めて五感も第六感も完璧に取り戻した今の隼人なら、恐らくは大丈夫だと思うのだが…。
「隼人と朝比奈さんは後で私が車で自宅まで送っておくから、皆は先にバスで帰っていいわ。運転手には私の方から話をしておくわね。明日は日曜日だから、ちゃんと練習を休まないと駄目よ?休む事もアスリートの立派なお仕事の1つなんだからね?」
「それはいいんですけど…肝心の藤崎監督は、この後どうなるんです?」
そんな六花に対して、愛美がとても不安そうな表情で、六花に対して懇願したのだった。
今、この場にいる聖ルミナス女学園バドミントン部の部員たち全員が、心の底から思っている事を。
「その…こんな事になってしまいましたけど、それでも藤崎監督には代行なんかじゃなくて、これからも私たちの正式な監督でいて欲しいです。」
先程、六花が目の前で黒衣を暴走させながら死ね死ね叫んでいたのに、それでもなお愛美たちは、こんな事を六花に対して告げているのだ。
六花が指導者としても超優秀な人物だという事を、愛美たち全員がその身を思って思い知ったというのも当然あるのだろうが。
何よりも黒メガネが指導者としても人間としても、色々とアレな人物だった事もあるのだろう。
だからこそ愛美は六花に対して、これからも聖ルミナス女学園バドミントン部の監督を続けて欲しいと、必死に懇願したのだが。
「御免なさいね。それは私1人の一存だけで決められる事ではないわ。今の私はあくまでも退場処分を食らった古賀監督の代行だし、JABS名古屋支部が私に対して、今後どんな指示を出すか分からないから。」
それでも六花はとても申し訳無さそうな笑顔で、愛美たちに通告したのだった。
そう、六花は稲北高校に直接雇用されて監督業に就いている美奈子とは、置かれている立場が全く違う。
六花はあくまでもJABS名古屋支部に勤務する正社員であり、形式上ではJABS名古屋支部から聖ルミナス女学園に出向している立場なのだ。
だからこそ六花がこれからも聖ルミナス女学園バドミントン部の監督を続けるかどうかは、例え六花本人がそれを望もうが、六花の一存だけでは最早どうにもならないのである。
ただ、愛美たちの要望があったという事に関しては、取り敢えず月曜日にJABS名古屋支部に出社した時に上層部には伝えておくと言う事を、六花は愛美たちに約束したのだった。
「それじゃあ彩花、最後にもう一仕事。優勝インタビュー頑張ってね?」
「うんっ!!」
六花と運営スタッフに促されて、威風堂々と壇上へと向かう彩花。
日本や欧米諸国のプロリーグのスカウトたちが、優勝インタビューを終えた彩花に真っ先に話しかけようと、押すな押すなと一斉にコートまで駆けつけてきている。
そして罵声や怒号が飛び交う異様な雰囲気の中、記者たちにカメラのフラッシュを無数に浴びせられながら、それでも怯まずに威風堂々と壇上に上がった彩花だったのだが。
「観客の皆様。それでは只今より藤崎彩花選手への優勝インタビューを行います。」
それがまさか、こんな事態になってしまうとは…誰が想像しただろうか…。
「まずは藤崎選手。優勝おめでとうございます。今、どのようなお気持ちですか?」
「……。」
アナウンサーにマイクを向けられた彩花だったのだが…それでも彩花は答えない。
そんな彩花に対して、戸惑いの表情を浮かべるアナウンサーだったのだが。
「あ、あの…藤崎選手?」
「すいません、ちょっとマイクを貸して貰えますか?」
「え?は、はい、どうぞ…。」
「今、お母さんが私を虐待したとかで大騒ぎになってますけど…その件について当事者である私自身の口から、真実を語らせて頂きます。」
アナウンサーからマイクを受け取った彩花は、とても真剣な表情で観客たちに呼びかけたのだった。
自分と六花が、周囲の身勝手な大人たちに何をされたのかを…その衝撃の真実を。全く嘘偽りも誇張表現も無い、その全てを。
自分は本当は稲北高校への進学を希望していたのに、自分を最強のバドミントン選手にしたいという支部長の身勝手なエゴによって、無理矢理聖ルミナス女学園へと入学させられた事。
当然六花は猛反対したが、断れば玲也が職を失う事になると脅された事。
その聖ルミナス女学園において自分は、ただの一度も授業をまともに受けさせて貰えず、直樹によってバドミントン漬けの日々を強要させられた挙句、財布もスマホも取り上げられてしまい、普段の食事も完全栄養食と水道水しか与えて貰えなかった事。
それに嫌気が差した自分が聖ルミナス女学園から脱走し、自宅までの20kmもの道のりを歩いて帰宅したものの、待ち構えていた学園長に拉致されて連れ戻されてしまった事。
そして学園長が己の保身に走るあまり事実を隠蔽しようと企て、よりにもよって証拠隠滅の為に自分を殺そうとまで考えた事。
その絶望から、自分が黒衣に呑まれてしまったのだという事を。
「これでも皆さんはまだ、お母さんが私の事を虐待したとか言うんですか!?お母さんは私の事を今までずっと、女手1つで必死になって育ててくれたのに!!そんなお母さんの苦労を知りもしないで!!」
彩花の口から告げられた衝撃の真実に、バンテリンドームナゴヤは一転して、戸惑いとどよめきに包まれてしまっていた。
「悪いのは周囲の大人たちなのに!!何もかも全部お母さんのせいにされて!!ねえ、一体どうして!?お母さんが何をしたって言うんですか!?何でお母さんが悪者扱いされないといけないんですかぁっ!?」
そして先程の本部長の時とは違い、彩花の叫びはマイクを通じて、正常に観客たちに届けられていた。
何故なら、あの時と違って今回は…余計な邪魔が入らなかったのだから。
「ふ、ふざけんなや!!離せ!!離しやがれ!!俺たちだってガキのイタズラ気分でこんな事をやってた訳じゃないんや!!仕事としてやってるんやぞ!?」
本部長からの密命を受けた秘書の女性が、エ~テレのディレクターがマイクの受信機の電源を落としていた事を突き止め、通報を受けたバンテリンドームナゴヤの警備員に、部下の男性共々拘束させたのである。
それでも全く悪びれる様子も見せず、秘書の女性に対して悪態をつき、自らの正当性を訴えるディレクター。
「藤崎六花を悪者のままにしておけば、今回の生中継の視聴率を稼げる!!特番だって組める!!俺らだって遊びでやってる訳じゃ無いんやからな!?」
「それで彼女の名誉が傷付けられても構わないと、貴方はそう言いたいのですか!?」
「当たり前やろが!!あの女がスイスで何億稼いだと思っとるんや!?別にJABSをクビになろうが、おまんま食うのに苦労はしねえやろうが!!」
ジタバタと暴れるディレクターだったが、それでも屈強な警備員たちが相手では、最早抵抗など出来るはずも無かった。
そんなディレクターを、怒りの形相で睨み付ける秘書の女性。
「けどな!!俺らは違うんや!!仕事として局に利益を出さんとあかんのや!!金を稼がないとあかんのや!!」
「世の中の真実を国民に伝える責務がある、報道機関に所属する身である貴方が!!そんな下らない理由で、こんな馬鹿げた事をぉっ!!」
「馬鹿はお前や!!俺らだって生きるのに必死なんや!!お前らみたいなお役所仕事しか出来んような連中と一緒にすんなボケがぁっ!!」
仕事としてやっている以上は、局に利益を出さなければならない。
このディレクターの言っている事も、ある意味では正しい物ではあるのだろう。
秘書の女性も同じ社会人として、JABS本部に勤務する正社員として、それは頭の中では理解していたのだが。
「…もういいです。連れて行って下さい。お2人の悪事は後でエ~テレのコールセンターに通報しておきますね。」
「ひいいいいいいいい!!綺麗なお姉さん!!それだけは勘弁して下さいいいいいいい!!僕はディレクターに命令されただけなんですううううううううう(泣)!!」
「お、おい!!離せ!!離せっつってんだろうがああああああああああああ!!」
それでも、例えどのような理由があったとしても、六花の事をあそこまで苦しめた事に対しての免罪符には、絶対にならないだろう。
警備員にバンテリンドームナゴヤの外に摘み出される2人を睨みつけながら、秘書の女性は豊満な胸元のポケットからスマホを取り出したのだった。
「本部長、大西です。マイクの受信機を操作していた、エ~テレのスタッフ2名を取り押さえました。」
『よくやってくれた。君にも届いているだろうが、こちらも藤崎彩花君が藤崎六花君の冤罪を証明してくれた所だ。』
「しかし、これで藤崎さんが本当に救われればいいのですが…。彼女は何も悪く無いとはいえ、一度失ってしまった信用を取り戻すのは容易では無いかと…。」
『うむ。だがそれでも切っ掛けにはなるだろう。今回の君の働きは絶対に無駄にはならないはずだ。取り敢えず君はこちらに戻ってきてくれ。』
「承知致しました。すぐに戻ります。」
そんな騒動がある事など当然知るはずも無く、彩花はこれまで溜め込んでいた不満を、観客に対して情け容赦なくぶつけたのだった。
今回のバドミントンに限った話では無く、今の日本のスポーツが、どれだけ愚かなのかという事を。
高校野球において熱中症アラートが出る程の過酷な猛暑の中で、どこの学校でもエース投手が『勝つ』為に、学校側から毎日のように連投に連投を強要され続けている事。
そんな無茶をしてしまえば、エース投手が肩や肘を壊す危険があるというのに、どこの学校も勝利至上主義に走るあまり、プロのように先発ローテーションを組む事も、中継ぎや抑えのシステムの確立さえもしない事。
中には左肘の疲労骨折が判明したものの、他に信頼出来る投手がいないからという無茶苦茶な理由で登板を強要させられ、結果的に甲子園には出場出来たものの、その代償として選手生命を絶たれてしまった投手さえもいた事。
大会運営側も全く対策しようともせず、投手の球数制限を設けるべきだと言う意見や、酷暑に晒される甲子園ではなく、空調が効いて雨天順延の心配も無い京セラドーム大阪で試合をするべきだという意見も出ているのに、それらを『伝統』などという下らない理由の為に却下し続けている事。
最近ではそれらの実情を知らされた大リーグのスカウトたちが、選手を潰す気なのかと苦言を呈した事が大々的に報じられた有様だ。
それだけではない。日本のスポーツにおいて未だに無くならない『暴力』。
つい先程でも準決勝第2試合で、黒メガネが静香に対して、彩花の顔面に維綱をぶつけろなどという、あまりにも愚劣極まりない指示を出した始末だ。
そして彩花は聖ルミナス女学園では体験しなかったものの、それでも学校の部活動における愚かな上下関係や、練習という名目の悪質ないじめ行為が、多くの学校でニュースやネットで表沙汰になっているというのが現状だ。
こんな事はスイスでは、絶対に有り得なかった事だというのに。
誰もが競技に対して、ただ純粋に全力で取り組むことが出来る環境だったというのに。
それなのに、どうしてこの日本では…。
「…ねえ、皆さんに聞きたいんですけど…スポーツって、何ですか?」
一呼吸して心を落ち着かせた彩花が、悲しみに満ちた表情で観客たちに問いかけた。
「お母さんは私とハヤト君に対して、スイスに居た頃からいつも口癖のように言ってました。バドミントンは楽しく真剣にって。それが駄目だって言うんですか?バドミントンを楽しむ事の一体何がいけないんですか?」
彩花は失望していた。今の日本のスポーツの愚かさに心の底から失望していた。
その失望をマイクを通して、ただただ観客たちに対して吐き出していた。
およそ優勝インタビューとは程遠い彩花の問いかけに、観客たちは驚きの表情でシーンと静まり返ってしまっている。
「…この優勝インタビューの準備が進んでいる間に、私とハヤト君とお母さんと美奈子さんの4人で、話し合って決めた事があります。それを今この場で皆さんにお伝えします。」
やがて決意に満ちた表情で、彩花は観客たちに宣言する。
この国のスポーツの愚かさ、そして自分と六花をあそこまで理不尽に追い詰めた周囲の大人たちに失望した彩花が、隼人と六花、美奈子と話し合って決めた結論を。
「既に多くのプロチームのスカウトたちが、私とハヤト君をスカウトに来てるみたいですけど…。」
その直後に彩花の口から放たれた、誰もが予想もしなかった爆弾発言に、観客たちは大騒ぎになってしまったのだった。
「私とハヤト君は、大学まででバドミントンを引退します!!」
バンテリンドームナゴヤが物凄い大喧噪に包まれる最中、隼人と彩花を自分たちのチームにスカウトしようとしていた各国のプロチームのスカウトたちもまた、唖然とした表情で彩花を見つめている。
大学までで引退って。一体全体、どうしてこんな事になってしまったのか。
「私もハヤト君も、もう身勝手な大人たちのエゴに振り回されるつもりは、ミジンコもありませんから!!」
「いや、藤崎選手、ミジンコじゃなくて微塵…!!」
「それでは失礼します。」
それだけ告げた彩花は、戸惑いを隠せないアナウンサーに丁重にマイクを返し、やり切ったと言わんばかりの表情で六花たちの下に戻っていったのだった…。
病院へと向かう隼人たちに、ダクネスと亜弥乃、内香が語る事とは…。




