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【Aルート完結】バドミントン ~2人の神童~【Bルート連載中】  作者: ルーファス
Bルート第1章:新生・稲北高校バドミントン部編
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第99話-B:約束、覚えてる?

 隼人に勝利した彩花が、隼人に語る事とは…。

 「何とも無様な幕切れだったな。よもや最後の最後に互いにイージーミスをやらかして、こんな呆気無い形で決着が付くとは。」


 美奈子と六花に身体を支えられて立ち上がった隼人と彩花の姿を、ダクネスが苦笑いしながら見つめていた。

 ダクネスの言う通り、最後の2人のプレーに限って言えば、確かに褒められた代物では無かったかもしれない。


 彩花は結果的に運良く勝てはしたものの、最後の最後に疲労の影響で集中力が切れてしまったのか、しょ〜もないサーブミスをやらかしてサーブをネットの上っ面にぶつけてしまった。

 隼人にしてもそうだ。彩花が目の前でしょ〜もないサーブミスをやらかした事で、まだ審判が正式にゲームセットのコールをしていないにも関わらず、最後の最後に油断をして自らの勝利を勝手に決めつけてしまい、サーブへの対応が完全に遅れてしまった。

 これがプロの試合であれば今頃は2人共、監督やコーチから一体何をやっているんだと、物凄い剣幕で怒鳴り散らされている事だろう。


 「…だが、見事だ。」


 それでも立ち上がったダクネスが穏やかな笑顔で、隼人と彩花に対して心からの拍手を送る。

 確かに最後のプレーだけは褒められた物では無かったが、それでも間違いなく称賛に値する試合だった。

 パリオリンピックの開幕が来週に迫っているクソ忙しい中で、わざわざ日本に足を運んでまで直接観戦に赴いた甲斐があったという物だ。

 準決勝の2試合も決勝も、ダクネスにとって得られるものがとても大きかった。3試合のいずれもが実に見事な試合だった。

 

 「いい試合を見せて貰ったぞ!!須藤!!藤崎!!」

 「負けたとは言え、須藤も本当に素晴らしかった!!」

 「2人共、インターハイも頑張れよ!!期待してるからな!?」


 それを皮切りに他の観客たちも一斉に立ち上がり、隼人と彩花に対して大声援を送る。

 もう隼人も彩花も疲労困憊で満身創痍といった感じで、互いに美奈子と六花の肩を借りながら、ヨレヨレの状態で向かい合う。

 正直言って自分たちを温かく包み込んでいる観客からの声援は、ヘロヘロの隼人と彩花の耳には全く届いていなかった。


 「お互いに、礼!!」

 「「有難うございましたぁっ!!」」


 そして審判に笑顔で促されて、互いに穏やかな笑顔で握手をした瞬間、さらに凄まじい大声援が2人を包み込んだ。

 かくして今年の県予選大会は、彩花が優勝、隼人が準優勝という結果となり、この2人が愛知県代表としてインターハイに出場する事になったのである。

 彩花を単位不足を理由に失格にして、静香を繰り上げでインターハイに出場させようと目論んだ様子だったのだが、その目論見が叶わなかった事で歯軋りしながら悔しそうな表情を見せている。

 その静香もまた楓の肩を借りながら、穏やかな笑顔で隼人と彩花の姿を見つめていたのだが。


 「…ねえ、ハヤト君。約束、覚えてる?」


 ふと、彩花が隼人に対して、突然そんな事をいい出した。

 彩花の問いかけに、一瞬「?」という表情になってしまった隼人だったのだが。


 「…ああ、君が僕に勝ったら、何でも1つだけ言う事を聞くっていう話になってたっけ。」


 それでもすぐに彩花の問いかけの意味を理解し、思わず彩花に対して苦笑いしてしまった。

 確かに彩花との試合前に、そんなような約束を彩花と交わしていたのだが。

 結果的に彩花は隼人に勝った訳だが、一体彩花は隼人に何をさせるつもりなのだろうか…。


 「だけどあの時も言ったけど、僕の小遣いで賄える範囲で頼むな?」

 「心配しなくても大丈夫だよ。お金なんて1円も掛からないから。」

 「1円も掛からないって、じゃあ君は一体何を…。」


 てっきりワクワクドナルドでハンバーガーを奢れとか、吉田屋で牛丼を奢れとか、ゼニーズでスペシャルメロンパフェを奢れとか、そんなような事を彩花が要求する物だと隼人は思っていたのだが。

 だがそんな隼人の頬に、彩花は恥ずかしそうな笑顔で右手を添えて…。


 「⋯好きだよ。ハヤト君。」

 「へ!?」

 「私とお母さんと一緒に、3人で家族になろうよ。」


 彩花は隼人と唇を重ねた。


 「!!!!!!!!!!??????????(泣)」


 まさかの彩花の公衆の面前での大胆な行動に、バンテリンドームナゴヤが物凄い騒ぎに包まれてしまう。

 そして周囲の記者たちがニヤニヤしながら、こんな特ダネを逃してたまるかと言わんばかりに、隼人と彩花に物凄い勢いでカメラのフラッシュを浴びせた。

 これはもう翌日のスポーツ新聞の記事が、とんでもない事になってしまうに違いない。

 やがて隼人から唇を話した彩花はとってもニヤニヤしながら、困惑する隼人の顔を見つめていたのだった。


 「ちょお、彩花ちゃん(泣)!?」

 「だってハヤト君、私に言ったよね?僕の小遣いで賄える範囲ならなって(笑)。」

 「いやいやいやいやいや!!確かにそう言ったけども!!言ったけれども(泣)!!」

 「だからハヤト君。ちゃんと約束を守ってよね?私の彼氏になってよね(笑)?」

 「ひいいいいいいいいいいいいいい(泣)!!」


 確かにこれならば彩花の言う通り、隼人に1円たりとも金銭的な負担は発生しない訳だが。

 そして彩花は隼人に対して、間違いなく言ったのだ。

 そして隼人は、間違いなく了承したのだ。


 この試合で私が勝ったら、何でも言う事を1つだけ聞けと。


 そして彩花は壮絶な死闘の末に、この試合で隼人に間違いなく勝利したのだ。間違いなく勝利したのだ。大事な事なので2回言いました。

 だから約束通り自分と付き合えと…彩花は物凄い勢いで隼人に迫ったのだが。

 と言うか、最早愛の告白をすっ飛ばして脅迫になっていた…。


 「…駄目?」


 隼人の困惑の表情を、彩花が何だか不安そうな表情で見つめていたのだが。


 「隼人君。貴方、私に言ってくれたわよね?私と彩花には幸せを掴む権利があるはずだって。」


 そんな彩花に対して助け舟を出してやろうと、六花が彩花の肩を優しく抱き寄せながら、穏やかな笑顔で隼人に呼びかけた。


 「その時、私たちの隣に貴方が居ないなんて、そんなの私は絶対に許さないわよ?」


 そして六花もまた、神衣をその身に纏ったのだった。

 類稀な才能をその身に宿す者が、絶望を乗り越えて希望を掴んだ際に顕現するとされている、伝説の闘気を。

 まさかの事態にバンテリンドームナゴヤは大騒ぎになり、記者たちは一斉に六花にカメラのフラッシュを浴びせる。

 だが今の六花には、そんな物は全く目にも耳にも入らない。

 穏やかな笑顔で、美奈子の肩を借りている隼人を見据えていた。


 彩花を絶望の底から救ってくれた隼人こそが、六花にとっての『希望』だ。

 隼人の存在が、六花に神衣を纏わせたのだ。


 「隼人君…ん~ん、隼人。」

 「り、六花さん…。」


 神衣を纏った六花の神々しい姿を、唖然とした表情で見つめている隼人。

 なんかもう自分が彩花に負けたせいで、とんでもない事態になってしまっていた…。

 

 「じゃ、じゃあ彩花ちゃん…。」


 いやまあ隼人自身、別に彩花と恋人同士になるのは嫌ではないのだが。

 いきなりこんな事になっちゃった事に苦笑いしながら、隼人は美奈子の肩を借りながら彩花を真っすぐに見据え、はっきりと告げたのだった。


 「付き合っちゃおうか。僕たち。」

 「うんっ!!」


 隼人の言葉に彩花はとても嬉しそうな表情になり、記者たちも一斉にカメラのフラッシュを浴びせる。

 バンテリンドームナゴヤに集結した15000人もの観客たちも、スマホで撮影した隼人と彩花のキスシーンを一斉にSNSで拡散し、ネットを通じてあっという間に全世界に広まってしまっている。

 もうプライベートも何もあった物じゃない。本当に恐ろしい世の中になってしまった物である…。


 「…ハヤト君…。」


 大きくなったら、ハヤト君のお嫁さんになる。

 幼少時から抱いていた彩花の夢が、今ようやく叶ったのだ。


 「ずっと…ずっと一緒だよ!!」


 とても嬉しそうな笑顔で、まるで夜中に寝ている飼い主の布団の中に潜り込む猫みたいに、彩花は隼人の身体をぎゅ〜〜〜〜〜〜っと抱き締める。

 そんな2人の微笑ましい姿を美奈子と六花が、とても慈愛に満ちた笑顔で見つめていたのだった。

 インターネットって本当に恐ろしい代物だよね。

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