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【Aルート完結】バドミントン ~2人の神童~【Bルート連載中】  作者: ルーファス
Aルートおまけ:ヤンデレの美奈子に死ぬほど愛されて眠れない隼人編
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おまけ第3話-A:一生懸命収穫したアスパラガスだもの

 ビーフシチュー。

 ファーストゲームを制したダクネスの強さは、まさに圧巻だった。

 流石は世界ランク2位にして、現時点における『スイス最強』。

 いくらスイスのプロリーグで17年間も活躍してみせたとはいえ、既に引退しており40歳を過ぎている美奈子では、いかに神衣に目覚めたといえども、流石に相手が悪過ぎるのではないかと。

 観客の誰もが、そんな至極当然の事を考えていた。


 このままダクネスの希望通り、毎週日曜日が『カップラーメンの日』と定められてしまい、スイス国民全員が毎週日曜日にカップラーメンを食べる事を義務付けられてしまうのか。

 それがまさかセカンドゲームにおいて、こんな試合展開になろうとは…一体誰が予想しただろうか…。


 「セカンドゲーム、ラブオール!!専業主婦、須藤美奈子、ツーサーブ(泣)!!」

 「ビ~~~~~~フ、シチュ~~~~~~~~~~~~~~~!!」


 いよいよ始まったセカンドゲーム。神衣を纏った美奈子の黄金のサーブが、ダクネスに襲いかかったのだが。


 「0-1(泣)!!」


 それがダクネスの右側のラインギリギリに、まさに精密機械の如き精度で突き刺さったのだった。


 「ちょっとお!!ダクネスさん!?一体どうしちゃったんですか(泣)!?」


 やけにあっさりと美奈子にポイントを奪われたダクネスの姿に、違和感を覚えた隼人。

 確かに美奈子のサーブの威力は凄まじかったが、それでもダクネスならば余裕で返せた一撃だったはずなのだ。

 それなのにダクネスが全く反応出来ず、こんな棒立ちになって立ち尽くしてしまうとは。


 「…美味い…!!」

 「え(泣)!?」


 だがダクネスは何故か恍惚こうこつとした表情で、感動の涙を流していたのだった。

 一体全体ダクネスに何が起きたのかと、意味が分からないといった感じの隼人だったのだが。


 「この牛肉の美味さは何だ…!?安物の肉を使っているというのに、まるで口の中でとろけるようではないか…!!」

 「ええええええええええええええええええええええええええ(泣)!?」


 ダクネスの口から飛び出した、まさかの予想外の言動に、戸惑いを隠せない隼人。

 牛肉が美味しいって。ダクネスは一体何を馬鹿な事を言っているのかと。

 だが次の瞬間、美奈子の口から、さらにとんでもない言葉が飛び出したのである。 


 「でしょう?私が隼人君と玲夜さんの為に、愛情をたっぷりと込めて作ったビーフシチューだもの。カップラーメンなんかとは訳が違うわ。」

 「はああああああああああああああああああああああああああ(泣)!?」


 ビーフシチューを作ったって。しかも愛情をたっぷりと込めたって。

 このお母さんは、一体何をアホな事を言っているのだろう…。


 「いやいやいやいやいや!!母さん!?今ダクネスさんと試合をしてる真っ最中だよね!?ビーフシチューなんか作ってないよね(泣)!?」


 まさかのダクネスの変貌ぶり、そして美奈子の意味が分からない言動に、体育館中が一斉にどよめきに包まれてしまったのだが。

 ただ1人、六花だけは見抜いていたのだった。

 美奈子がダクネスに対して、一体何をしたのかという事を。


 「これは…!!藤崎六花さん!!一体ダクネス選手に何が起きたのでしょうか!?」

 「どうやら今のサーブで、美奈子さんに味覚を奪われてしまったようですね。」

 「み、味覚を奪われたぁ!?」 


 六花の解説に、体育館中が物凄い大喧噪に包まれてしまう。

 そう、美奈子は愛情たっぷりの美味しいビーフシチューを、神衣の力で空想の中でダクネスに食べさせ、ダクネスの味覚をビーフシチューで満たしたのである。

 カップラーメンなんぞとは比べ物にならない、正真正銘の本物の手料理という奴を。


 いや、これ…バドミントンの試合だよね…?


 「私の味覚が美奈子殿に奪われただと!?だが所詮はまやかしだ!!こんな物でぇっ!!」

 「ダクネスちゃん。お代わりもあるから、沢山食べてね?」

 「はぁんっ!!」

 

 美奈子の言葉に、思わず右手のラケットを差し出してしまったダクネス。


 「美奈子殿!!お代わり!!(´・ω・`)」

 「はい、どうぞ。」


 美奈子の黄金のスマッシュが、ダクネスの足元に情け容赦なく突き刺さった。


 「0−3(泣)!!」

 「…はっ!!私とした事が!!あまりにも美味過ぎて、ついお代わりをしてしまったああああああああああああ!!(´・ω・`)」

 「ダクネスさんんんんんんんんんんんんんん(泣)!!」


 隼人のコールと同時に、何とか正気を取り戻したダクネスだったのだが。


 「だ、だが、こんな物でこの私に勝とうなどと…!!」

 「ダクネスちゃん。」


 そんな事は許さないと言わんばかりに、さらに美奈子のダクネスへの猛攻は続く。


 「…ちゃんとサラダも食べなきゃ駄目よ?」

 「…な…に…!?」


 美奈子のロブが精密機械の如き精度で、ダクネスの背後のラインギリギリに突き刺さった。


 「0−5(泣)!!」

 「あああ…このアスパラガスの食べ応えのある食感は最高だ…!!」

 

 感動の涙を流しながら、美奈子が調理したアスパラガスを、空想の中でバリボリと口にするダクネス。

 噛めば噛む程、少量のバターと共に適度に炒められた濃厚なアスパラガスの旨味が、ダクネスの口の中に広がっていく。

 これもまた、美奈子の料理の腕の良さを表していると言えるだろう。


 「でしょう?この間の日曜日に彩花ちゃんが泥まみれになりながら、一生懸命収穫したアスパラガスだもの。不味い訳が無いわ。」

 「うええええええええええええええええええええ(泣)!?」


 いきなり美奈子に名指しされた事で、思わず目をうるうるさせながら仰天してしまった彩花なのであった…。


 「確かに彩花ちゃん、ノエルちゃんちでリハビリ目的で野菜の収穫を手伝ってたけれども!!規格外のアスパラガスを沢山お裾分けして貰ったけれども(泣)!!」


 彩花は日本で心無い記者のせいで心が壊れてしまってからというもの、半年近くも全くの無気力、無表情で、六花からの問いかけにも全く応じる事無く、ただただ黙って座っていただけだった。

 それ故に完全になまってしまった身体のリハビリも兼ねて、須藤家がスーパーまで買い出しに出かけていた同時刻に、六花と静香に付き添われながらノエルの家でバイトをしていたのだが。


 「3-12(泣)!!」

 「あああ…包丁をトントンと叩く心地良い音が聞こえる…。」


 その後も神衣を纏った美奈子の猛攻は、止まらなかった。

 美奈子の愛情にたっぷりと包み込まれた、ダクネスの聴覚が。


 「4-16(泣)!!」

 「焼きおにぎりの芳醇な香りが…。」


 ダクネスの嗅覚が。


 「5-18(泣)!!」

 「コーンポタージュの、とろけるような食感が…。」

 

 ダクネスの触覚が。


 「6-20(泣)!!」

 「私の目の前に、美奈子殿の手料理が並んでいる…!!」


 遂には視覚に至るまで。

 ダクネスは美奈子に、五感を完全に剥奪されてしまったのである。

 そう、かつてバンテリンドームナゴヤでの県予選決勝において、彩花と戦った隼人と同じように。


 いやいや全然同じじゃねえわ。


 「ゲーム、専業主婦、須藤美奈子!!7−21!!チェンジコート(泣)!!」


 セカンドゲームを奪ったのは、神衣の力でダクネスに美味しいご飯を沢山食べさせた美奈子だった。

 まさかの予想外の事態に体育館中が、物凄い騒動に包まれてしまう。

 

 「セカンドゲームはまさかの展開になりましたね。藤崎さんは今回のセカンドゲームを、どう分析なされますか?」

 「メインのビーフシチューに加えてアスパラガスのサラダ、焼きおにぎり、コーンポタージュと、栄養バランスが上手く整えられた素晴らしい夕食メニューでした。」

 「それ程までに須藤美奈子選手の調理の手際の良さが、見事に表れた試合だと言えるのでしょうか。」

 「そうですね。特にアスパラガスのサラダにベーコンを添えたのは、実に見事な付け合わせでしたね。アスパラガスの美味しさを引き立たせるだけでなく、肉と野菜を同時に摂取出来るように工夫した、素晴らしいレシピでしたよ。」

 「成程…!!」


 相変わらず六花が、バドミントンの解説を一切しない最中。


 「はぁっ、はぁっ、はぁっ…!!」


 美奈子は激しく息を切らしながら、倒れ込むようにベンチに腰を降ろしたのだった。

 セカンドゲームではダクネスを圧倒した美奈子ではあるが、やはり神衣は強力ではあるものの、その代償としてスタミナの消耗が激し過ぎる諸刃の剣だ。

 何しろセカンドゲームで発動しただけなのに、今の美奈子の異常とも言える疲労度だ。

 隼人はこんな物を纏って、彩花を相手にあそこまで戦い抜いたのかと。

 美奈子は自分が神衣を纏った事で、改めて神衣の凄さと脆さという物を思い知らされたのだった。


 だがしかし、セカンドゲームでの美奈子の目的は充分に果たされた。


 「焼きおにぎり、うまー。(´・ω・`)」


 こうしてダクネスに美味しいご飯を沢山食べさせて、五感を奪う事に成功したのだから。

 神衣を解除した美奈子が、計画通り!!と言わんばかりにニヤリとした表情を見せる。

 これ以上の神衣の発動は体力的に無理だが、これでこの試合は貰ったも同然だろう。


 「ファイナルゲーム、ラブオール!!シュバルツハーケン、ダクネス・アンダーソン、ツーサーブ(泣)!!」


 2分間のインターバルを終えた後、なんかもう泣きそうな表情で、高台の上でファイナルゲームの試合開始を告げた隼人。

 一体全体、この試合はどうなってしまうのか。

 このまま五感を奪われたダクネスが、美奈子に一方的に蹂躙される展開になってしまい、スイス全土からカップラーメンが消えてしまう事態になってしまうのか。

 それともダクネスが、かつてのバンテリンドームナゴヤでの隼人や静香の時と同じように、自力で五感を取り戻すというミラクルを起こす事が出来るのか。


 しょ~もない運命のファイナルゲームが、今まさに始まろうとしていたのだった…。

 次回、ダクネス VS 美奈子、決着です。

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