【メーナの勉強ノート8】
9/28 すこしくもり
せんせい:リステル
今日はアイカ達が倒してくれた青い森Bをズルして抜けるとリステルが言う。
「敵機がでないから、半日くらいでついちゃうんだよ」
今日はリステルが教えてくれる日なので、いつものように抱っこされて本を一緒に読む。
リステルはなんでも知っていて、メーナがわからないことを教えてくれる。
そして言葉では一度もメーナを叱らないので、都合がいいなとメーナはリステルと居るのを好む。
「楽をできるのは良いことだよ?」
リステルはそれが悪いことのように考えている。
メーナにはアストラル・プロジェクションを通して、そういった、人の本音が見えてしまう。
リステルはメーナの事を心配して、マナミのことも心配する。
リーベと話していても、色々と気遣いをしている。
メーナは悪い人ではないのだなと判断していた。
「そうだねえ、メーナ達を危ない目に合わせないで済むのは良いことだよ」
そう言ってにっこりと笑う。
わたしにとってはズルなんだけどねと、リステルは心の中で残念そうに付け足す。
メーナはよくわからないので、もうそこは気にしないことにする。
しばらくはリステルが持ってきて「これが面白いよ」という本を読む。
今ではメーナはなかなかの読書家で、結構難しい本でも読めてしまう。
メーナが質問しなくても、一緒に見ているリステルが答えを考えてくれるので、聞かずとも読めるのだ。
読んでいて手が止まると、リステルがちらと見て一瞬でメーナがわからない部分を見つけ、「こうなんだよな。難しかったかな?」と考える。
メーナはそれを感じ取って、わからない部分を知っていった。
これはとても学習効率がよく、リステルはとても優秀な教師だった。
そうして宇宙構造学の総論を学習していて、ふとメーナは聞いておくべきことを思い出す。
くりっとリステルを見て聞いた。
「そもそもどこに何をしにいくの?」
メーナは自分達が何処に向かっているのかを知らなかった。
リステルはあれ?といった顔で、前に話したんだけどなと考えた。
しまったと思ったがメーナは顔に出さない。
聞いたことを忘れていると、叱られるからだ。
「森の奥にお店が有るとヴェスタ達に教えてもらったんだよ。大事なものが売っているとね」
そして強くならなければとリステルは考える。
じいっとメーナが見つめていると、別のことを考え出す。
とても難しいことが考えられて、メーナは面倒になって本を読むことにする。
ミラサネルとはなんだろうかと、リステルがとても心配している事をちょっとだけ覚えた。
なんだか響きが良いなとおぼえたのだ。
ミラサネルと。
そうしてまたしばらく本を読んでいると、もやっとメーナは思い出す。
(そもそも何を買いに行くの?大事なものってなんだろう?)
くりっとリステルを見るメーナ。
リステルはちょっと悲しいことを思い出していて、にこにこしているのに、心が泣いていた。
メーナは可哀想だなと思い、手をのばしてリステルの頭を撫でてあげる。
よしよしと優しく撫でてあげるのだ。
そうすると、ちょっと困った顔をするのだけれど、心が悲しくなくなるのだとメーナは経験で知っていた。
リステルは悲しい時にも笑うから、誰にも悲しいことを知ってもらえないのだと、哀れに思うのだ。
「どうしたの?メーナ」
リステルは困った顔で、困ったなと言う。
「いいの、なでなでしたいの」
メーナはなでなでして、リステルに悲しくなくなってほしいのだ。
その悲しいは、メーナも悲しくしてしまうから。
そしてとても役に立つリステルに、側にいてほしいと思うから。
そうしてメーナは表情をあまり変えずに、リステルをなでなでっとし続けるのだった。
リステルが悲しくなくなるまではと。
その日の夕方には目的地のショップという場所に着く。
大人たちは派手な建物の所で、ずっと話し合っている。
とても難しい話なので、メーナには興味がない。
それよりも、青い水が沢山あって、とても気になった。
メーナは間近に海を見るのは初めてだったのだ。
アイ達が4人でメーナを守るから、側まで言ってみてもいいと言われた。
マナミはしつこいくらい「アイ達の言う事を聞くのよ」とうるさかった。
アイ01がメーナの手を握ってくれて、一緒に近くまで行く。
スーツのヘルメットはむずむずして嫌だが、これを被らないとダメと言われて被っていた。
アイ達はサイボーグなので、素顔のままだ。
リーベも被っていたので、おそろいだよと言われて、被ったのだった。
「アイちゃんすごいよ!いっぱいのお水だ」
メーナが走り出しそうだったので、反対の手もアイ03に捕まる。
「メーナ、走っちゃダメだよ」
そういってにこりとアイ03が笑う。
アイ達はそもそもあまり考えが見えないし、見えても大したことを考えていないので、あまりメーナは気にしない。
「ふわあぁ‥‥‥」
メーナはその青い水に、あの淋しい宇宙で見上げたアルドゥナを思い出した。
小さなその丸い青だけが、メーナの友達だったのだ。
目が覚めてからずっと何ヶ月も一人でいて、淋しかったのを思い出す。
そんな淋しい気持ちも、アイ達といると辛くなかった。
いやな感じではないが、すこしだけ胸がきゅっとなる。
それは望郷という感情なのだが、メーナは感情の名称を知らない。
ふと何かを感じて、メーナは大人たちの方を見る。
リステルのとなりに寂しそうな顔の女の人が立っていた。
金色のぴかぴかした服を着て、なにか黒いもやに包まれている。
「アイちゃん‥‥‥あのひとだれ?リステルの隣の人」
んっとアイ01とアイ03がリステルを見る。
マナミとリーベが並び、その前にリステルが腕を組んで立っている。
「んと‥‥‥マナミとリーベしかいないよ?」
アイ01が答えて、アイ03もうんうんとする。
不思議そうにメーナとリステルを見比べていた。
(ああそうか、あの人もそうなんだ)
メーナは自分には見えても、他の人には見えない人がいると学んでいた。
最初は解らずにリーベやマナミに聞いて、怖がられた。
マナミは怖いくせに怒った。
メーナにはそこにいなくても、強い気持ちを残されると見えてしまうのだった。
本で調べながらリステルの心を読んで、それが生霊とかインプリントとかいう現象だと知った。
リステルの横にいるのに、その女の人は森の方をずっと見ているので、関係ないのだなと、気にしないことにする。
ただ、とても寂しそうだなと、哀れに思うのだった。




