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【メーナの勉強ノート12】

11/1 くもりのちくもり

せんせい:リステル


 メーナ達スパイラルアークⅡのチームは、黒い森を進みヴェスタ達の築いた拠点まで至った。

事前に注意事項を色々とアイカから教えてもらっていたので、ヴェスタ達より大分早くここまでこれたのだ。

今は拠点を中心に3方向あるルートを、一つずつ攻略している。

「やーん!」

最後の敵機を仕留めて着地したメーナは、ばしゃっと沼に片足をおとしてバランスを崩す。

母船は広場に入れないので、一旦陣地にした入口近辺に着陸したのだが、アイ達やリステル達の機体で一杯で、最後に降りたメーナは沼にはみ出したのだ。

バランスを取ろうと振り回した腕を、がしっとアイ達が捕まえて止めた。

「えーん、よごれちゃったよぉ‥‥」

メーナは自分のクリーム色の機体が気に入っており、塗装が痛むこの酸の沼がある森を嫌っていた。

右手を捕まえて引き寄せたアイ02が慰める。

「後でリーベにお願いして洗ってもらおうね」

「うん‥‥ここキライ!!」

メーナは手でこすっても汚れが落ちないので、諦めて帰艦することとした。

 

 母船の格納庫には洗浄剤のコートもできる洗機スペースがあり、出撃前にもコートして出てきた。

この洗浄剤のコートが切れると、沼に落ちずともシールドががりがり削れるのだ。

20機を越える機体を運用するこの母艦では、帰艦後も整備と補給でかなりの仕事量がある。

アイ達は自分達で整備もするので、この時間にメーナは第二格納庫の羊たちの世話を任されていた。

世話といっても水を足して、寝床を掃除するくらいなのだが、メーナを暇にしておくのも心配なので、大人たちが仕事をするためにここを任せていた。

「めめめん!ただいまあ!」

メーナが来ると、一番小さい羊のめめめんが、ころろんとベルを鳴らして走ってくる。

「メェエエエ」

嬉しそうに鼻先でメーナに触れてくるので、わしわしと撫でる。

気持ちよさそうにするのが可愛いので、ぎゅうっと抱きしめるメーナ。

「いいこねめめめん。あれ?なんだか大きくなった?」

2日と開けず来るメーナだが、抱っこしたのは久しぶりで、抱き心地の変化を感じた。

「メエェ?」

そうかなといった感じで首をかしげるめめめん。

「まいっか!」

なでなでと最後に毛並みを整えてあげると、嬉しそうに目を細めた。

 テキパキと作業をしてしまうメーナ。

さすがに慣れてきたので、手際も良くなった。

地面にしいたアルドゥナの土に、ナノマシン由来の栄養価の高い草が生えている。

その一面の緑に、白い羊たちがそこここにたむろしている。

第二格納庫の小さな牧場を動くメーナの後ろを、ころんころんとベルを鳴らして子羊がついて回る。

そんなのどかな風景がここにはあるのだった。


 まきばの仕事が終わると、手を洗っておやつの時間になる。

いつもアイ達と共にするが、整備が長引いているのかまだ戻っていなかったので、少し本を読んで待つことにした。

リステルが持ってきてくれる本のお陰で、日々知識を深めるメーナ。

さり気なくリステルが誘導して、ちゃんと役に立ちそうなものを読ませている。

誘導しようとしているとメーナは知っているが、面白いのは間違いないので異存はない。

今日は化学の本で、ちょうど今酸の森で戦っているので、そういった化学知識を覚えてほしいのだろう。

その中でもメーナが反応の良かったタイプの本を準備するリステル。

マーケティングが確かなので、メーナは退屈せずに読了した。

「ふむ、だからあの汚れはこすっても落ちないのね‥‥さらにこの森がイヤになったわ」

うんうんと腕組するメーナ。

読み終わった後に下にスクロールして、評価ボタンをクリックする程度の手間はかけられる面白さだった。

読んでいた端末を机に置き、今日のおやつはなにかなとキッチンを覗きに行くことにした。

「ふんふーん♪」

小腹もすいてきてお菓子がおいしいぞと、にこにこでご機嫌に進むメーナ。

お茶もいるから準備をしておこうとも考えたのだ。


 キッチンにつくと、手を洗うメーナ。

特にその必要性を感じないが、マナミが怒るので洗うことにしている。

今見ていなくても、後で「洗ったのか」と聞かれるのは解っている。

前にウソをついたらバレて、おしりを叩かれたので、しかたなく手間をかける。

どうもマナミはメーナがウソをつくと、何かしらの手段で暴いてしまうとメーナは警戒している。

実はメーナがアストラル・プロジェクションの力を常時使っているので、その方面に明るいマナミとリーベにはメーナの気持ちが伝わりやすいのだ。

 メーナがポットに水を汲んでいると、リステルが最初に帰ってきた。

「ただいまー。お、メーナえらいね」

よしよしと頭を撫でられるメーナ。

皆の分なので、結構な重さになるポットをキッチンの所定の場所に置くと、IHで勝手に沸かし始める。

一つでは足りないので、2つ目をリステルがしてくれた。

メーナがしようとすると、踏み台を移動しないといけないので大変なのだ。

「そうだ!リステルのくれた本、読み終わったよ。面白かった」

メーナの評価を聞いて、リステルは脳内のメーナ用読書パラメーターを更新する。

ちゃんと履修が偏らない工夫がしてある。

「うんうん、また何か探しておくね」

そういってにっこりと笑うリステルは、ちゃんと心もにっこりで安心するメーナ。

リステルは見た目と中身が違うので、注意が必要なのだ。

 そうしてリステルがお茶を準備しながら、格納庫の話をしてくれる。

「洗浄機が故障してね、途中で作業が停まってしまってるんだよ」

だからアイ達がまだ戻ってこないのかと、メーナは納得した。

「ちょうど私の分が終わったトコで停まっちゃったのよ。メーナのは最初に洗ったから終わっているよ」

そういってにっこりと笑ったリステルは、今襲撃が有るとこまるなと、笑顔と違い心では少し焦りを持っていた。

びー!びー!びー!

そんな話をしたからなのか、エマージェンシーのアラームが鳴る。

「まさか‥‥」

カタンと椅子を鳴らして立ち上がったリステルは、すごい勢いで走っていった。

メーナはちょっと考えて、格納庫に向かうリステルを追わず、操縦室に向かった。

機体に臨場したほうが速いと思ったのだ。

生身のメーナが行ってもあまり役に立たないとも考えた。

こういった判断を出来るようになってきたのも、リステルの持ってきてくれる本達のおかげだった。


『まずい、結構な数がいるよ!』

コート待ちの間ひまだしと、索敵に出ていたアイ03から報告が入る。

拠点から西に向かう広場を攻略しているのだが、ここは奥まで広く繋がっていて、リンクした敵機が時間差で来たようだ。

『ダメだ‥‥コートが落ちちゃってるから被弾できない‥‥一旦もどるよ』

共有している短距離通信から、これはまずいとメーナは判断する。

長引けばおやつの時間そのものが失われてしまう。

小腹の空いてきているメーナの決断は早かった。

『メーナがでる!あたしのはコート終わってるから!』

丁度帰還したアイ03の機体を受け入れるため、正面ハッチが開いていた。

駐機場の充電ラッチをパージして、メーナが機体を進める。

「ダメよ!メーナ!戻って!リステルがでるわ」

マナミが叫んで、リステルが格納庫へ向かっているのは知っているが、メーナは待てなかった。

今日のおやつはメーナの大好きなシナモンチュロスだと、リステルの心を読んで知っていたから。

「メーナ、メネシスmk.Ⅱ!でるよ!」

発進の音声ログを残し、マナミ達の許可も待たずにフロートで飛び出した。

何回かの実戦を越えて、メーナの操作技術はアイ達に並ぶほど。

飛行させるだけなら、アイ達もついていけないレベルだ。

格納庫の天井と立ち並ぶ機体の間にあるわずかな隙間をするりと抜け、外に出たメーナがパルスを吹いた。

ぼひゅ!!

一気に高度を取ると、アイ03を追うように押し寄せる8機程の敵機。

先頭のホバー戦車の上にガシャんと着地するメーナ。

相手は100m程度あり、体格が全く違う。

敵機もメーナが速すぎて、何をされたか判断出来ていなかった。

ずばぁああん!!

至近距離から両手にもつビームショットガンが火を吹く。

踏まれた上に上から撃ち抜かれたその機体が崩折れ、踏み台にしたメーナは更に別の機体を蹴って、ショットガンをぶっ放す。

そうやって半分を壊した所で、敵機は特殊攻撃をしてくる。

残っていた逆脚の機体4機がメーナの機体に飛びついて、もろともに酸の沼に落としたのだ。

「うぎゃゃあーーん!!!」

メーナは奇声を発して暴れる。

式とのリンクが深いメーナは機体にひどいダメージが入ると、身体で受けたように感じて痛むのだ。

巨大な敵機の腕がこすり、洗浄コートの剥げた部分が焼けるように痛かった。

暴れているメーナの救援にリステルの機体4機が現れ、次々倒し救い出された。

「大丈夫!?メーナ?‥‥こまったな洗浄機はまだ動かないんだよ」

リステルは酸まみれになり、きしきし鳴るメーナの機体に困り果てる。

「もういい!!」

メーナはばひゅーとパルスジェットで飛んでいく。

「メーナっ?!」

あわててリステルが追いかけるが、速すぎて追いつけない。

「ど、どこにいくの?!」

リステルは途方に暮れる。

メーナは母艦を通り過ぎて、拠点の方向に飛び去ったのだ。


ざばぁあん!!

しゅわあああ

「はうぅうっ‥‥痛かったぁ」

メーナの黄色い機体が、ショップ横の湖に頭からダイブして浸かっていた。

「よし!これくらいだ」

ばしゃんとお風呂を出るように上がってくる、メーナの機体メネシスmkⅡ。

黄色い塗装はあちこち傷だらけになり、茶色のサビを浮かせていたのだが、きれいにぴかぴかとアルカリコートされるのだった。

「リステルの選んだ本を読んでおいてよかったわ!」

今日の本には酸とアルカリの中和反応の話ものっていたのだ。

にっこりとなるメーナは、やっぱりリステルは役に立つなと、また評価を上げるのだった。

メーナのこころのリストにある、評価ボタンの星を押して。





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