【メーナの勉強ノート11】
10/26 あさだけはれてた
せんせい:マナミ
メーナはもう3回の出撃を経験した。
とはいえ身体は母艦の操縦室に収まっているので、出撃したのはメーナの式を搭載した人型機動兵器だ。
クリームイエローの機体はナノマシンのエネルギーシールド装甲で形作られ、傷一つ無い。
まだ被弾したことがないのも、ちょっと自慢だった。
「えへへ‥‥ぴかぴか」
メーナは機体のカメラを自分の目と同じ様に使い、腕や足を眺める。
メーナ自身がそもそもコードで構成された式なので、その操る”式”は手足同然に動き、人型機動兵器は自分の身体となんら遜色ない感度で動いた。
「メーナは機体との距離がとても近いね」
アイ01はそう評価する。
アイカの式であるコピーAIのアイ達ですら、この人型兵器は機体として操る。
メーナは機体そのものが、自分の身体だと感じているのだ。
戦闘もアイ達に指導を受けたので、ゲーム感覚。
敵機には生身の人間は乗っていないし、こちらの機体にも生体パーツは乗せていない。
正しくゲーム感覚なのだ。
メーナは荷電粒子ショットガンがお気に入り。
両手に一丁づつ持ち、盾は装備しない。
全部避けるから要らないと持たないのだ。
アイ達が互いを、ピンポイントバリア搭載の盾で守りながら攻めるのと、スタイルが違った。
メーナは単独で行動する。
誰もメーナのカバーが出来ない速度と反応で動くから。
最初はアイ達が僚機となり、フォローしていたがデタラメに動くので追従出来ず諦めた。
リステル達大人も、メーナの実力で黙らされてしまう。
メーナの機体は、今ではアイ達の小隊に次ぐ戦果を上げていた。
そうして非常に調子に乗っていた。
今日の一戦目は3機編成の黒い敵機。
専用機でかなり強いから油断しないようにと、出撃前のミーティングでマナミに注意された。
「メーナはこの敵機初めてだから、今日は見てるだけでいいよ」
そういって、子供扱いされた。
マナミはいつもメーナをそう扱うので、特別だと感じなかった。
いつもの小言なのだなとだけ受け取ったのだ。
「メーナ、メネシスmkⅡ!いきまーす!!」
ばしゅうん!!
アイ達4機に続いてメーナもカタパルトから出撃。
メーナの専用機となったこのクリームイエローの機体に、メーナは自分の名前の由来になった神の名をいただいた。
初期の予備機を改造したものと違い、メーナの実力に合わせて設計された、アイ達の機体とも違うアッセンブリーだった。
アイ達の機体は実はこの艦の艦載機の中で一番重装備だ。
唯一実際にアイ達が乗り込んでいるので、手厚く守っている。
それ以外のリステルやリーベの操る機体は、消耗品として設計されている。
囮として使い潰すし、防御を重視しないので細身だ。
コスト的にもそれほど高いものではなかった。
アイ達の機体は重装甲で、他の式達よりも速いくらい動くが、メーナはさらに速い。
アイ達より軽装なので、なおさらだ。
高度も取り、戦場を俯瞰しているメーナ。
「アイちゃん達だ!もう戦ってるわ」
足元で絡み合うように3機の黒い敵機にまとわりつくアイ達。
敵機は全高150mになる、足の太いホバー式人型兵器で黒と紫に塗り分けられている。
高速でスライド移動しながら、巨大なバズーカを持ちアイ達を追い払おうとするが、アイ達の機体は小さく速いので捕らえられずにいる。
全長20mほどの小さいアイ達の式神弐式改2だが、火力は最前線のもの。
「のろまめ!こっちだよ!」
「アイ02よせすぎだよ!」
アイ02とアイ04が挟み込むように牽制射撃で誘導し、最後尾の機体を引き離す。
ずだぁぁあん!
アイ01の持つ41㎝電磁加速砲が火を吹く。
機体の全長よりも長い砲を、ホバリングしながら射撃して長距離狙撃。
その反動すら利用し敵弾も回避する。
被弾して打ち返した敵機が姿勢を崩すと、アイ02とアイ04の至近距離でのレールガン攻撃。
31㎝と一回り小口径だがどんどんどんと連射して、敵機体の被弾してシールドが弱い部分に集中して打ち込み続ける。
「くらええ!!」
ずがぁあん!
そこに地を滑るように接近していたアイ03の機体が、これも機体全高を越える長大な槍を突きこんだ。
ずぎゃぁあ!
槍はパイルバンカー式になっていて、突き刺さると荷電粒子のプラズマを先端から解放する。
どどぉん
誘爆する敵機から素早く距離を取るアイ03。
「いっちょあがり!」
へへんと余裕の雰囲気でアイ03が、02と04に合流する。
後方から寄せていくアイ01も揃い、4機で綺麗にダイヤモンド編隊を組み、残りの敵機に向かった。
それを上空から観戦していたメーナ。
「さすがアイちゃん達だわ。あたしもたたかいたいなぁ」
ちょっと楽しそうと思ってしまうメーナだった。
アイ達の小隊に追従していると、残りの敵機は母船の側まで攻め入っていた。
リーベとマナミ、リステルの3人で軍団規模の人型兵器を操り、いなしている。
全部で16機も居るので、6-6-4と3小隊に別れてそれぞれ迎撃する。
リーベの6機と母船の弾幕が一機受け持ち、マナミとリステルの息のあった連携がもう一機を追い詰めていた。
アイ達は弱っている獲物に襲いかかるように、マナミ達の方に合流する。
まもなく仕留めるだろうと、メーナはリーベの防衛する母艦側を見に行く。
「ままぁ!メーナもてつだう!」
メーナは実際には隣に寝ているはずのリーベに、ただいまあと声をかけた。
「ふふ、おかえりなさいメーナ。無理はしないで大丈夫よ、押さえていればマナミ達がすぐくるわ」
作戦としてはそうなのだとリーベは、防御と回避に集中する。
敵機の放つ56㎝の巨大なバズーカ弾頭は、速度はないが近接信管で爆裂するので、回避も防御も難しい。
人型兵器を母艦上甲板に3機配置し、最終防御ラインとして迎撃している。
連射の効くレールガンを持ち、エネルギーフィールドのシールドも持つので、いざという時は身を挺して母艦を守る。
残りの3機で牽制射撃を弾幕のようにはり、母艦に近づけないようにコントロールしていた。
守り抜けば勝ちなのだと、攻める気はない。
それがメーナには面白くないと映る。
「あたしに任せてよ、まま!」
同じく甲板で迎撃を手伝っていたメーナが我慢できずに飛び出していく。
「あぁ、だめよぉメーナ」
リーベは強くメーナを叱らないので、メーナを止めることが出来なかった。
しゅるんと滑らかな機動で敵機との距離を詰めたメーナ。
「ふふん、おそいよ!」
まったくメーナの接近に気づけず、母艦と撃ち合っている敵機の眼の前に飛び上がるメーナ。
すでに両手のショットガンはチャージ済みだ。
ずばばぁああん!!
至近距離から頭部に2連射を受けて、敵機がよろめいて離れていく。
「にがさない!」
とぉんと身軽に飛んで行くメーナが、もう一撃と思い追いかける。
敵機の真上に出た瞬間に、その巨大な胴体付近で激しい閃光が放たれた。
シュパァアア!!
それは目眩ましのフラッシュだった。
「あうぅ!!」
機体とほぼ同化しているメーナにとっては、実際に目を焼かれた痛みを伴って感じられた。
錐揉みで墜落したメーナのメネシスを、敵機の巨大な脚が踏みつけた。
ガァン!
「あぐぅん!」
これにもメーナは悲鳴を上げる。
機体のダメージを自分の身体が受けたように感じてしまうのだ。
「メーナ!!ベイルアウトを!」
リーベはとっさにそう叫びつつ、3機の式で突撃をかける。
式は破壊される瞬間にリンクしていると、実際に肉体に痛みが有るのだ。
ベイルアウトという言葉はこの場合、魔力リンクの緊急遮断を意味する。
リーベの救出は一歩及ばず、敵機のもつ長大なプラズマの剣が突き立てられる。
「いやぁ‥」
メーナは回復した視界いっぱいに迫る敵機の殺意に震えて動けない。
ずだぁああん!!
敵機の剣を持つ腕が砕けて千切れ飛んだ。
「メーナ!!」
アイ01の長距離狙撃がメーナの機体を救った。
がしっと敵機の下からアイ02とアイ04がメーナを救い出す。
「よくもやったな!!」
すれ違うようにアイ03が高高度から落下してきて槍を突き刺した。
ずがぁん!ずぎゃぁあ!!!
ぴょんとアイ03が離れると、敵機は盛大に誘爆し沈黙したのだった。
「クスン‥こわかったよぉ!」
機体を母艦にもどし、臨場をといたメーナは、ベルトをはずすのももどかしく、リーベに泣きついた。
「よしよし、いい子ねメーナ‥むりしちゃだめなのよ?」
リーベは優しくなでながらそう言って抱きしめる。
「こらあ!!メーナ!見てなさいって言ったでしょ!」
そこにマナミがぷんぷんで叱りに来た。
「ふぇ~ん、ごめんなさぁい」
泣きながらリーベに隠れたメーナは、ただただマナミに怒られるのが怖いのだった。
「危なかったんだからね!ベイルアウトの準備も常にしてなきゃダメよ!」
「あぅぅん‥わかったよぉ」
シクシクと泣いているメーナは、声が遠ざかったので、チラっとマナミを見てにんまり。
ウソ泣きはバレないで済むのだった。
もう、しかたないなぁと離れていくマナミの背に、べーっと舌をだすメーナを、クスクスとリステルが笑って見ていた。
しかたないなぁと笑いながら。




