【メーナの勉強ノート10】
10/17 すごくくもり
せんせい:アイ達全員
メーナもちゃんと式を動かせるようになったので、一緒に行きたいとごねる。
リーベは結局メーナに甘いので、リステル達を説得して全員で行くことにする。
正直Bセクターに挑むには、いちいち戻るのが億劫だと言う意見も有ったのだ。
ヴェスタ達から情報をもらい、急げば再配置前に黒森の拠点まで一度行けるねとマナミは喜んだ。
リステルは何時ものように、笑うのだが不満があるとマナミとメーナだけは読み取った。
マナミはリステルへの思いで読み取り、メーナはアストラル・プロジェクションだ。
リーベが責任持って言い聞かせると決まり、青い森の拠点を引き払う事となった。
大人たちがせっせと撤収している間、アイ達は交代でメーナの面倒を見る。
もうすっかり妹分としてアイ達も身内だと認識している。
アイ達のサイボーグボディはかなり性能もよく、今は現地のパーツで組み立ててあるので信頼性も高い。
そこで荷運びでも大活躍しているのだ。
何しろティア9の義体や保護スーツには敵わないが、10才程度の小さな身体で大人の何倍も力があり、制御はAI品質だ。
何をやらせてもメーナと違い失敗しないので、すっかり戦力だった。
今はアイ01と02がメーナ係で、マナミの作った戦闘用の式を扱う練習をしている。
「うん!じょうずだよメーナ。いいよいいよ」
アイ02がメーナを応援する。
メーナは積み木を積んでいた。
立方体の上に円柱を立てて、その上に三角形を乗せていた。
円柱の直径が意地悪な細さなので、なかなか成功しない。
三角の底面積の1/4程度の太さなのだ。
これは正しくセンサーの情報を受け取り、機体と対象の位置関係を把握し、正確に指先まで動かす訓練でも有った。
「あぁああん!!」
メーナも慣れてきていいペースで積んでいたが、うっかり手を離す時に指が当たり、積み木は崩れた。
どぉおん!!ごぉごおん!!
ずぅうん
積み木は観光バスほどの大きさだった。
メーナは人型機動兵器に式で臨場して、これを操作していたのだった。
メーナ本体は母船のコックピットに専用の席が準備されたので、そこに座っている。
リーベこだわりのオーダーメイドで、恐ろしいほどぴったりサイズ。
4点式シートベルトをすると、拘束されたように身動きできなくなる。
横にはアイ達の席も4つあり、機動兵器に臨場する時は、そこにサイボーグ体を置いていく。
アイ達の本体はあくまで中にある式神弐式なのだった。
今はアイ01がメーナの体を見ていて、アイ02は体を置いていって機体に臨場している。
「ねぇアイちゃぁん、積み木あきたよぉ」
メーナがほっぺを膨らます。
午前中いっぱいをランニングと積み木訓練で過ごしたので、刺激が無く飽きたようだ。
「うーん‥じゃああたし達と一緒ならいいって言われてるから、ちょっと飛んでみようか?」
メーナは椅子から動けないが、がんばってぱたぱたと小さくバンザイする。
「やったー!」
あははと笑ってアイ01は、メーナのベルトを外してあげるのだった。
リステル達スパイラルアークⅡチームの母船は、文字通りの母船、機動兵器母艦となっていた。
全長は250m幅は80mと狭いが、上部に4本の電磁式カタパルトを備え、格納庫には式を搭載できる人型兵器が20機以上待機している。
格納庫の左右からも発進できるので、運用に適した形状になっている。
全長20m程度の人型兵器を20機運用し、予備機体を入れて26機を搭載している。
中でもアイ達の機体は純白の装甲に朱色のラインも美しいアイカカラー。
アイ01が自分専用の機体に乗り込み起動する。
メーナに手で運んでもらって、首の後ろにある穴にすぽんと刺してもらうだけだ。
傾斜にそってするすると滑っていき、定位置に付くと電磁ラッチが固定する。
アイ01の式神弐式が制御式を放つと、いままでサイボーグ体を動かしてきたように機動兵器が起動する。
アイ達のサイボーグ体のようなスマートな体型だ。
ガシャっとフェイスガードが少し上がり、出来た隙間にある暗がりで真紅のツインアイが輝く。
「アイ01、式神弐式改Ⅱいきまーす!」
必ず音声のログを残すルールになっているので、訓練でも発進時は宣言するのだった。
決して気分で叫んでいるのではない。
びーびーとアラームが鳴り赤色回転灯が光る。
今日は右の格納庫ハッチを開けて歩いて出ていく。
いってらっしゃーいと手をふるメーナは、急いでコックピットに戻る。
交代で戻ったアイ02の式神弐式を胸に抱いて。
アイ達は4人で1小隊のエースチーム。
スパイラルアークⅡで一番撃墜数の多い小隊なのだ。
アイ01は普段はジュノのようなロングライフルを持って狙撃要員だが、今日は普通のライフルを肩の後ろに積んでいるだけだ。
大きなシールドも置いてきた。
目的はメーナの補助だからだ。
メーナの機体は予備機をベースに、リーベが改造してくれたもので、アイ達の機体と素体は同じだ。
装甲の色がメーナの希望でレモンイエローに塗られて、紺色のラインが入っている。
これはリーベ小隊のパーソナルカラーで、リーベの小隊は装甲は白でラインが紺色だ。
マナミとリーベは、なんとこの式臨場式人型機動兵器を最大6台まで一人で操作する。
もともと操っていた式の数だけ動かせるのだった。
リステルも4台まで動かせるので、一人で1小隊動かす。
リーベも自分の式だけなら4つまで動かせるようになっているので、将来的には小隊長に格上げの予定だ。
隊長機は識別のために角が額に生えている。
アイ01は小隊長なので角付だ。
「アイちゃんのかっこいいな!角が付いてるよ!メーナのとちがうわ」
がしゃんとメーナの隣にきたアイ01が手をつなぐ。
「ふふ、メーナの黄色もかわいいよ」
アイ01にほめられて、えへへとにんまりするメーナ。
「じゃあ最初はまっすぐに上がって降りるよ。規定高度は越えられないようになっているけど、無理しないでね」
高度2000mを超えると危険だと、ルクール達が身を以て調べてくれていた。
「あーい!」
メーナはわくわくしてアイの指示を待つ。
「じゃあ行くよ、ゆっくりフロートから入れてみて」
フロートパーツとは、この星の重力制御装置だ。
ふぉんとうなり、二人の機体が上昇していく。
「やったぁー!とんだよ!」
あはは、とアイ01も笑う。
手を繋いだまま、楽しそうに上昇し、高度1000あたりでホバーリング。
この機体はフロートの他にもホバーパーツとロケットブースターを積んでいる。
ホバーを展開してふわりと滞空するアイ01。
メーナも器用にホバーで浮いているが、右に左にとふらふらする。
「アイちゃん上手ね!ぜんぜんゆれない!」
アイ01は普段空中からも狙撃するので、これくらいはお手の物だ。
「なれたらメーナも出来るよ!」
そうして初めてのホバー体験中にその波動が襲った。
ブオォン!!
唸りを伴う一瞬の波動が駆け抜け、アイ01の機体がツインアイを消灯し、ひゅううと落下する。
メーナは驚いたが、ロケットブースターも使い、追いかけて捕まえる。
がしゃん!
メーナが体当たりの様に捕まえた頃、やっとアイ01は再起動して機体の制御を取り戻した。
「なになになに?!アイ02どうなった?!」
『わかんないよ!?こっちも式神弐式が一回止まったよ!アイ03達も倒れたって』
アイ02は慌てた声で報告してくる。
「‥‥‥メーナありがとう。たすかったよぉ‥‥‥そっちは平気だったの?」
アイ01はメーナに助けられて、地上に落ちなくて澄んだ。
「うん?なんとも無かった。ぶぉんって言ってたけど」
メーナは言わなかったが、そのぶぉんに覚えが有った。
あのルニーアの気配だったのだ。
(いったい何が有ったの?‥‥‥ルクールとかって人に会えたのかな?)
メーナは詳しく知らないのだった。
ルニーアが一度ヴェスタ達を攻撃すらしたことを。
二人は慎重に地上に戻り、あちこちでパニックになっているチームの手伝いをするのだった。
結局被害があったのはアイ達の式と、リステルの保護スーツだけだった。
その時間に丁度ヴェスタが落下していようとは、知りようも無かった。




