消雪パイプ
「うん。」
そう言って別々の席に着く。
席は離れていたが、同じ教室というだけでとてつも無い安心感があった。
「おはようございます。これから、宮本大学附属高等学校の学力試験を始めます。はじめに注意事項を説明します」
しかし、試験の放送が流れるたび、その安心感がなくなって、代わりに緊張がくる
英語の試験の問題が配られる。
時計の針の音すら聞こえるほど、教室は静かだった。
「はじめ。」
問題を開く
最初の文法問題。普段ならすぐに思い出せるのに
今は緊張が頭を支配している。
(くそ……なんで出てこねえんだよ。)
しかし、時間まで粘りなんとか解答欄をほとんど埋めることができた。
数学の問題
だんだん調子が復調していくのがわかる。普段と同じように問題が解けるようになる
しかし、まだ完全に復調していなかった
(あと少し……ここを書き終われば)
「終了です。筆記用具を置き、回答用紙を後ろから回してください」
あと一歩のところで書き終わらない問題があった。
休み時間。あたりを見回すと中野がこちらを見つめていた。中野が同じ教室にいるということを思い出し、再び安心感が出てきた。
国語の問題
(………いける。少なくとも国語は。)
問題との相性が良かったのか時間が余るほど余裕があった。
試験が終了し、解散となる
「中野〜どうだった」
「思ったよりもいけるね。」
「…………は?」
「……………ごめん。もしかして結構やばかった?」
「そのまさかですよ。英語と数学がちょっと……」
中野はうまく行っているのを聞き。余計苦しくなる。
「まだあと5校あんだから、慣れるよ。落ち着いて。冷静になりな。」
「…………うん。」
受験教室があった大学2号棟を抜けると、外は雪が降っていた。
「あの雪とおんなじだよ。今は雪が降ってるかもしれないけど。雪はいつか溶ける。だけど時間がないからあんたは消雪パイプで除雪するんだよ。」
「消雪パイプて!!」
「そうすると道路はどうなる」
「赤くなる。」
「そう。丸とおんなじ、赤。」
「バツも赤でつけるだろ」
「そうだったわ」
そんな話をしてると、門の前に背の高い人が人混みの中で一際目立って立っている。
「どうだった?宮大附属」
「ちょっと………ね?」
「まぁしゃあない。起こったことは仕方ないんやから、次に切り替え?」
「中野のお兄さんって関西出身でしたっけ」
「違う!関西弁はノリでやっただけ。」
「なんのノリですか。」
「じゃあ、飯食べにいくか!ちょうど昼時だし!」
「にいちゃん何食べんの?パスタ?ハンバーグ?」
「今日は…………金ねぇわ。ちょっとATMで金おろしてくるから待ってて!」
そう言って駅の方へ先に走って行った。
「相変わらずだな。にいちゃん。」
そう中野がつぶやいていた。
「あんま普段を見てないからわかんないんだけど、普段からなの?」
「そうだよ。家出た時も鍵ごと持っていきかけたもん」
「えぇ………」
「お待たせ!何食べる?」
「夏山に任せる」
「えぇ!?……じゃあサ◯ゼで」
「わかった」
そうして宮本駅前のサ◯ゼでパスタを注文した。
「ほら、初日受験お疲れ様。夏山くん、俺の奢りだからたくさん食って元気だしな。」
「じゃあカルボナーラと明太パスタとチキン3つとマルゲリータと………」
「待て待て待て!!どんだけ食べるんだ君!?俺の財布が」
「でも奢りって……」
「そうだけど………もうすっかり元気じゃないか。びっくりしたよ俺!」
そうしてたらふくに腹を満たして帰った。
駅まで着いて、いよいよ別れる交差点に着いた。
「じゃあ、夏山くん。受験頑張ってね。」
「ありがとうございます」
「君の凄さは美咲から十分伝わってるから。自信持って行ってきなさい」
「ありがとうございます。………実はそれ中野に言われた」
「まじで?」
「そうだよ。なんならにいちゃんの前でも言ってた気がする。」
「そう!?まあでも、おれもそう思ってるから。頑張れよ!!」
そう言って家まで帰った。
明日も頑張らなくちゃ。




