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ほんとうのこと

2月に入り、受験まであと一週間ほどとなっていた。もう滑り止めの高校の受験は終わっており、合格通知が家に届いていた。

「先輩ー!この社会の資料問題どうするんですかー?農業出荷額とかなんかいっぱい書いててわかんないです!」

「………ごめん俺ほとんど人口だけで解いてるから参考にならないかも」

「………へ?人口だけ?」

「そうそう。だいたい250万ならこの県ってわかっちゃうんだよね」

「…………?(理解不能)」

「固まっちゃった。でもそんなことしなくても各地の特徴をなんとなく覚えてたら大丈夫!大分は地熱発電!とかそんなもん」

「そうなんですか」

そうやって話している間、中野は何か文句ありげな顔をしていた。

「………。今日はもう帰ります。さよならー!」

だいたい、そう言う時は中野が帰った後なんとなく笑顔になる

けど、今日は不機嫌なままだった

「今まで自分が固まってた側なのに、もう処理落ちさせる側なんだ」

「いや、あれといつものやつは違うじゃん。お前は処理落ちさせにきてるじゃん………」

静寂が一瞬俺と中野の間を流れる

「あのさ」

「どうした?」

「村上さんと話すの、楽しい?」

「まぁ…………そうだね」

自分でもわかっている。多分、中野は村上さんが苦手なことを。だけどなぜかはいまだにわからない。

「私と村上さん、どっちと話すのが楽しい?」

「中野だよ。」

「でも、あんた村上さんとよく話してるじゃん」

「だって、村上さんには自分からは話しかけないかな。」

「ふぅん。」

「なんで俺が宮創附属目指してると思ってんの?」

「え………?」

「あっ」

「…………ほぉ?」

「………中野。聞かなかったことにして」

「……どうしょっかなぁ〜」

中野の顔がどんどんニヤけていく。絶対にいいことを考えていない。

「ちょ、もう帰るから!また明日!!」

「まだ1時間やる約束だよー?」

「家でやる!!」

そう言って中野の家を飛び出した。

「やべぇ、バレたかも……」


「なんで俺が宮創附属目指してると思ってんの?」

もう夏山は帰ったのに、その言葉だけが脳内で乱反射している。

「私のために、そこまで………フフッ」

もう笑みが止まらなかった。止めようとしても止まらず、むしろどんどんニヤついていく。

「もう、夏山は素直じゃないんだから」

自分が言える立場じゃないが、そう独り言を呟く。

夏山が帰ってから一時間。普段なら国語の問題集10ページはできていたが、いまだにペンすら握れていなかった。

「もう夕飯の支度しなきゃ。」

そう言って夕飯の支度をしていたが、いまだに、脳内はあの言葉に支配されたままだった。


そうして夕飯の支度をしていると、一本の電話がかけられた。

電話番号を見ると、3年前に連絡先から消した兄のものだった。

「…………」

今更、何を連絡することがあるのだろうか。

3年前高校受験で失敗した兄は、その後学校にも行かず、部屋に引きこもっていた。

私は、そんな兄が見たくなくて親戚の家を出て一人暮らしを始めた。

それ以来、頼った親戚はともかく、兄とは一切連絡を取らずに連絡先からも消した。

……でも、それでも、前の兄ちゃんに戻ってるかもしれない。

そう思ってしまう私は弱い。

「はいはい、にいちゃん。何かありました?」

「宮本大学、合格したわ。」

「…………へ?」

「だから!宮本大学に合格したって」

「……………(思考停止)は?」

「何回言うんだよ俺!」

「単刀直入すぎる!!」

「だって変にいろんなこと言うのもあれだろ?」

「いや、そうかもしれないけど!!」

「で、お前も受験期だろ?どこ目指してんの?」

「………宮創附属」

「俺とおんなじじゃん!どう受かりそう?」

「あんたと違ってね」

「この三年間で言うようになったじゃんかー?」

「兄ちゃんだって随分陽気になりましたねー?引きこもってたのに?」

「高校からちゃんと行ってるわ!!」


「………じゃあ、なんで連絡してこなかったの?」

「だって、これくらいの実績引っ提げてこないと中野に顔向けできないなって。成績落ちて引きこもってた兄なんて恥ずかしいでしょ?」

「そんな理由で三年間も連絡たたないでよ!!」

「…………………」

近所迷惑も気にせず、大声を出してしまった。だけど、それでも出てしまった。

「どうせ兄ちゃんは私が兄ちゃんが落ちぶれたからでたったと思ってるでしょ!違う!!私は兄ちゃんが落ち込んでるのを見るのが辛かったの!元気でいてくれたらいいの!だから………連絡とってよ」

「……………ごめんな。」

「もういいよ。……だから、受験の時一緒にきて。後でLINEに入れ直して日時送るから。絶対に来てね?」

「……わかった。兄ちゃんがついてったる!」

「………ありがと。あと、宮本大学合格おめでとう。」

「そうだったな。ありがとう」

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