あの空の向こうへ
10月中旬、コンクールのホールのあたりは、ようやく秋らしくなり、秋風が肌を心地よく撫でていた。
「合唱コンクール!ぜってぇ金賞取ってやる!!」
「体育祭で一位取れなかったからって興奮するな」
「お前は金賞取れなくてもいいのかよ。」
「金賞ってのは取りたい奴が取るんじゃない。クラスで団結して、親とかに一番心に響く声を届けた奴が勝つんだよ。」
「つまりなんだよ?」
「練習するぞ」「……わかった。」
そうして、本番前最後。そして、中学校生活最後の練習が始まった。
「飽きるほど聴いたこの曲もこれで最後かー。」
「三浦さん?誰が飽きたって?」
「鷹宮!違う違う!!そうじゃなくて、飽きたわけじゃなくて、そうなってもおかしくないくらいたくさん聴いたよねって」
「こんなに聴いたら飽きると?」
「いやそうじゃなくて、たくさん聴いたよねって言うのをわかりやすく……待って!髪引っ張んないで!」
「ほらほら、二人とも喧嘩しない。」
そう言って鷹宮の矛をおさめる
「じゃあ、円陣しようか。三浦。お願い。」
そういうと全員がいつもの隊形に並んだ。
「みんなで!最高の歌届けるぞー!」
『おー!』
そして、合唱コンクールが始まる。
「美咲?最後だけど、大丈夫か?緊張してない?」
「大丈夫。だって今までついてきてくれて、一緒に話し合ってきた四十人だから。」
「そうか。」
2組の周りの奴らの様子を見回してみる
3年2組は15番目。3年生の中でそして、このコンクールの中で最後である。
それなのに、クラスの誰も浮かべる顔は緊張ではなく、自信に満ちていた。
「最後は、3年2組の『あの空の向こうへ』です。」
指揮の手が振り上がる。
大空は羽ばたくような期待感のあるイントロ。
そして、最初のブレス。
「スッ」
完璧に揃った。声が聞こえるほど。
あれだけ苦戦していた入りも、4パート全て揃っていた。
サビ。男声パートが元気よく。そして、女性パートが綺麗に歌い上げる。
よく三浦がでかい声で音を外して、全員つられて外していたところも。鷹宮が一生懸命教えたところも、全部綺麗に歌い上げる
俺は
(歌ってて気持ちいい。)
そう思った。
そうして合唱が終わる。1・2年のどのクラスより、3年のどのクラスさえも超えるほどの大きい拍手が巻き起こった。その拍手がホールを包む。
退場する時。指揮者の顔は今まで見たどんな時よりも安らかだった。
結果発表までの間。2組は誰かが示し合わせたでもなく、中野を中心に集まっていた。
「みんな。すごく良かった!!まじで!!お客さん感動して涙流してる人いた。ちゃんと2組の歌が届いてるんだよ!すごい!だから、どんな結果だったとしても他クラスがびっくりするほど喜ぼう。盛大に!喜ぼう。」
『はい!!』
「じゃあもうそろそろ結果発表だから席戻ろう」
『はい!!』
もう、この『はい!』の時点で1・2年がびっくりするほどのでかい返事だった。




