四十人寄れば文殊の知恵
合唱練が一週間経過した
「そろそろみんなで合わせて合唱してみようか」
そう中野が言い、ついに合同練習になる。
だけど、
「ズレてる。」
そう、パートごとの出来がいいからと言って全体が良くなるとは限らない。特に2組はパート練が多かったため、パート間でのタイミングや、声の大きさ。そこが違和感を生んでいた。
「パート練、そろそろやめたほうがいい。」
「そうだね。だけど、予想以上に全体で合わせるのが難しくなりそう。」
やはり中野もそう感じていた。
「みんな!パートごとはできてるんだけど、パート間でズレてるから周りよく聴いてね。」
中野がそう言うものの、言われたからと言ってすぐに意識できるものではない。
「テノール。入るタイミングがズレてる。」
「はい。」
パート練で他のパートがなかったせいかタイミングが他のパートも曖昧になっている。
放課後。ちょっと過去問のわからないところを確認していたら、教室は中野と二人になっていた。
「アキラ、私、間違えたかな。」
「は?」
「いや、明らかにパート練ばっかだった弊害出てるじゃん。」
「まあ、そうだけど、パート練が多かったからこその良かったところもあるぞ。」
「たとえば?」
「パートがめっちゃ上手くなってる。特に音はどんだけバスがでかい声出そうがみんな音を外さないくらいになってる。」
「あとはちゃんと合わせることができれば金賞も狙える。と俺は思う。」
「じゃあどうやって合わせんのさ。」
「…………知らん。」
「知らないのかよ!!」
「でも、2組四十人中の誰かは方法を思いついてるんじゃない?」
「………………確かに。」
「美咲。合唱コンクールはあんたのためだけじゃないし、失敗したら責任を一人で背負うものでもない。みんなで作り上げる合唱コンクールだ。みんなで意見出し合って話し合って良いものを作り上げてく。それがいいんじゃねえか?」
「……そうだね。……会長に立候補する時、みんなのためのって連呼してたのになんで忘れちゃってたんだろう。」
「誰にでも忘れることはある。あんたは思い出せたんだから、しっかりやるんだぞ。」
「……なんか、今日はアキラが先生みたいだね。」
「………勉強じゃ教えらんないけどな」
翌日の朝の会
「え〜。今までパート練ばっかさせてたからだと思うんだけど、正直言って、なんかパート間で合わないんです!だけどどうすればいいかわかんないです!なので意見ください!!」
「めっちゃ堂々と言うな。」
「これくらい言ったほうがわかりやすいでしょ。」
でも、その効果もあり続々と手が上がった。
「三浦!どうすればいい思う?」
「美咲さん!やっぱ最後は気持ちじゃん。だから、いっぱい歌えばいいと思う!!」
「………ごめん流石に脳筋すぎる」
「え〜!いいじゃん脳筋でいこうぜ!」
「三浦、黙れ」
「」スン
流石にこれ以上喋らせるとクラスが脳筋に染まりそうなので黙らせた。
「次、鷹宮。なんか意見ある?」
「パート練で、みなさん音程は完璧に取れているので、他のパートを聴く時間とか取ってみては?」
「確かに、効果ありそう」
そうして、たくさん集まった意見を一つ一つ試してみた
「じゃあテノールパートだけ聴いといて、ここが入るタイミングとか意識しといてね。」
「はーい」
「………特定のパートだけいないのなんか歌いにくい」
「…それはそうかも」
そうやって回数を重ねていくうちになんとか揃ってきた。
「やっぱたくさんやったからでしょ!!」
「試行錯誤しながら方法検討したでしょ。たくさんやったからだけじゃない。」
「………まあ、それはそうかも」
「三浦に理論が通じる!?」
「馬鹿にしてるだろお前!!」
「ごめんごめん」
「まぁ、でもようやくここまできたね。」
中野が入ってくる。
「そうだな。あとは明日全力を出すだけだ。」
「もう明日!?早いって!」
「明後日からは三浦くんもちゃんと勉強しなよ」
「え〜やだ!!」
「これは中野塾行きだな」
「1日8時間、週7でしてあげる⭐︎」
「いやだぁ!死にたくない!!」
空はどこまでも青かった。




