ズレ
7月の模試が返却された。
五教科偏差値72.6
過去最高の出来だった。
「なかのー、模試どうだった」
「………まだ見てない。」
「えー!そうなん。じゃあ俺のだけ見せるわ、72.6!自己ベスト!!どう!」
「……よかったんじゃない。」
「もうちょい褒めてよ頑張ったんだから」
「……はいはい。すごいね。」
「む〜。」
こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかった。
もっといい点数取って。宮創付属にいって。大学進学して。
だけど………
〇〇模試結果
五教科偏差値69.8
このまま兄ちゃんのように落ちてくのかもしれない。
[クソ…なんでこんな勉強してるのに。]……!?
[俺から賢さがなくなったら何が残るんだ]…….!?
頭が……いたい。3ねんまえの……にいちゃん…?
3年前。一緒に家を出た兄は受験に壊されてしまった。
9歳の頃。私と私の兄は教育熱心な家庭で育てられた。
親の口癖は「それ、勉強に関係あるの?」「勉強しなさい。」だった。
それに耐えかねた兄は私を連れて、家を出た。なけなしのお小遣いをもって、なんとか親戚の家にたどり着き。保護してもらった。
中学1年の時の兄の偏差値は73、宮創付属を目指していた。兄は親にさせられなくても自分でできるんだ。そう言っていた。
中学3年の7月、兄は偏差値70を切った。そこから、兄はズルズル偏差値を落とし、受かったのは偏差値63の滑り止めの高校。7月から2月までで、兄はよく自分の部屋で泣くことが多くなった。兄の部屋に行くたびにエナドリの空き缶が増えていた。最終的に受験した偏差値65の公立に落ちた時は3日間学校に行っていなかった。その時に、私は一人暮らしをして、そこから兄とは連絡をとっていない。あんな兄の姿もう見たくないから。
それなのに
「自分がおんなじようになってく……」
[俺から賢さがなくなったらなにが残るんだ]………?
私から賢さがなくなったらなにが残るんだろう。そういえば、夏山、72.6だったな。抜かされちゃった。最近、書記の村上さんと関わってるし、多分私はもういらないんだろうな。
じゃあーー
なんもなくな……る?
あれ。あたま…が……くらくら……す……
「どこ……ここ……」
「病院のベッドです。」
「え?入院……?」
「はい。」
「今日何月何日ですか?」
「7月19日です」
模試が返されたのは7月17日。その翌日にだったはずだから19日か。
「近隣の方から、隣の部屋で大きな物音がしたあと、生活音も聞こえないと通報があったので助かりましたが、発見が遅れていたらかなり危険でした。」
「……死んでたかもしれないですか?」
「そこまで重大なものではないです。」
「よかった。」
「ですが、危険だったことに変わりありません。数日間は安静にしておいてください。」
「わかりました」
窓から、強い日差しが差し込んでくる。
「今日、終業式だったんですよね。」
「そうですね。」
「そういえば、夏山からLINE来てるかな。」
スマホを見るが来ていない。よく考えれば、まだ8時、学校にも来ていない時間帯だ。
だけどーー
「私のこと、もういいのかな。」
そう考えてしまう。
市街地のあのタワーは日差しに照らされてよく見えなかった。




