縄に向き合う
「なかの〜」
「何?」
「生徒会のやつで思い出したけどそろそろ体育祭だな」
「そうだよ。だから早く中庭行けー大縄の練習。」
「そうだ忘れてた!」
「忘れてたの!?もうみんな出てるのに!?」
「急げー!」
階段を全力で駆け下り、一直線に中庭に駆け出した。
「夏山遅いぞ〜早くやりたいのに〜」
「どうしたんですか」
「ごめん鷹宮・三浦、忘れてた」
「忘れてた…?」
鷹宮から普通に困惑されてしまった
「あと美咲は?」
「中野は生徒会長としての仕事」
「おっけー!」
「じゃあ、目指せ50回!!」
「50回か。飛べるかな。」
「まぁ、頑張りましょう。」
そうして大縄が弧を描く。
『1、2、3』
一つ一つのカウントを全員で数える。だから、疲れはするが。なんだか、まとまってる感じがして楽しい。
「4!5!6!」
結局今日は12回しか飛べなかったが、体育祭練習はまだまだこれからだ。
三浦や中野が主導して円陣を組んだ。
「目指せ50回!」
「えい、えい、おー!」
そして練習3日目。なのだが
「今日の記録、まだ11回だよ!気合い入れてこ!」
「はい」
体育祭はあと一週間、時間がないのに、記録が伸びずにいた。
「4組30回行ったってよ」「1組も25回」
クラスは焦燥に包まれていた。
「もう一回!行こう」
そう言って三浦が始まるが
「1!2…」
一回目で引っかかることが多くなる。
「ちゃんと縄見て!!」「誰だよ引っかかったやつ」
うまくいかなくなると、必然的に誰かのせいにしたくなってくる。
その日の5時間目、学活の時間。
「みんなどうすれば回数増やせると思う。意見出してほしい。」
中野がそう呼びかけるが、誰も手を挙げなかった。
30秒くらい経ったのち。三浦が手を挙げる。
「俺バカだからよくわかんねえけど。結局誰のせいとか言ったり、他のクラスと比べるんじゃなくて、純粋に縄に向き合って集中したらいいんじゃね?最後は気持ちって先生が言ってたぞ。」
誰も反論しなかった。いや、反論できなかった。誰かのせいにして、ほかのクラスと比べて、縄そのものに、向き合ってなかったからだ。
「……そうだね。そうかもしれない。じゃあみんな、円陣組んでみない。今ここで。初心に帰って、純粋に縄に向き合うために。」
中野がそう言うと、誰が示し合わせたでもなく、スムーズに円陣の隊形になった。1日目の、あの時と同じ隊形。
「絶対に、50回行くぞ!!」
『おー!!』
そこからも鰻登りではなかった。前日よりも記録が少なかった時もあった。だけど、その度に円陣を組んで、気持ちを入れ直した。
そうして、体育祭前日。
「1!2!3!……10!……20!」
「30!………40!………46!47!48!49!」
「50!!」
ついに目標の50回を達成した。
『おっしゃー!!!』
「これが2組の実力じゃーー!!」
皮肉にも、他クラスと比べなかったうちのクラスが練習で唯一50回を達成していた。
当日7時半、教室に、学校全体よりもちょっと前に集まった。そして、いつもの円陣をくむ
三浦が、叫ぶように言う
「本番も、絶対50回行くぞ!!」
『おーー!!!』
その声は、校舎全体に、市全体に、世界全体に響いたような気がした。
そして最初、大縄が始まる。
「よーい!ドン」
「せーの」
「1!2!3!」
その掛け声は、唯一無二の声で
「23!24!25!」
みんなで縄に向き合うための合図に。
「47!48!49!」
そしてーー
「50!!」
クラスを繋ぐ紐になった。
記録は57回、クラスの過去最高記録である。
「しゃー!!」「おりゃー!!」「やったー」
クラスは各々の叫びが重なり合って、もう何も聞こえないほどだった。
結果発表。
「二位!3年5組!47回」
「まだまだ焦るな焦るな」
もう一位なのが確定してるが、中野が落ち着かせる。
「一位!3年2組!!57回」
「おおぉぉぉぉ!!」
皆が2組の白のハチマキをぶん投げたり回して、喜びを表現している。これだから、体育祭はやめられないのである。




