かすかに
奈良を出る頃にはもうすっかり夕方になってしまっていた
「……zzz」
三浦と中野はぐっすりである。
単語帳を開きながら窓の外を眺める
遠くに山々が見える
「あれは…なんの山だ?」
名前はわからない。だけどどれが美しいとかではなく、
全部あわさったからこその美しさなのだろう
ずっと、遠くの山を見ていた
「旅館到着ー!」
「旅館ってこんなでかいっけ?」
「一学年で二百人なんだからそんくらいないと泊まれないでしょ」
「そっか〜」
「さっきまで寝てたと思えないくらい元気だな」
「お風呂入りたい〜あんた風呂沸かして」
「まだ風呂まで時間あるし、俺は沸かさんぞ」
「飯!何があるん?」
「お前の飯はコメ三合」
「肉も食べたい!」
三浦はいいとして、ここまで学級委員がはっちゃけるか?
気づけばもう夕食も風呂も終わって、消灯時間が迫っていた。
「夏山〜水買ってきて」
「自分で買いにいけよ」
「千円やるし、余った分使っていいから」
「まったく…流石に生徒間の金の貸し借りはダメだから返すよ」
「言ってくれんの?あざす!」
「はぁ…わかったよ」
そうして自販機の方へ行くと
「えっ、なんで夏山さんいるんですか」
「こっちが聞きたい」
「私は自分の水を買おうと」
「俺は三浦に買ってこいって」
「優しいですね」
「おまえに言われなくない」
「…少し話しませんか」
「珍しいな」
「負けたから?」
「……はい」
「なんで夏山さんは勉強し始めたんですか?」
「……だって志望校まで遠かったから」
「じゃあなぜ創英大附属を志望したんですか?」
「おまえには言わない」
「逆におまえは何をモチベーションに勉強してるんだ?」
「勉強しないと落ち着かないから」
「は?」
「やってないと置いてかれる感覚になるんです」
「………」
どこか、前の自分を見てるみたいだった
「けど……たまには息抜きをした方がいいんですね」
「そうじゃない?」
「じゃあ、また明日ですか?」
「明日は会いたくないな」
全部は分からない。けど、さっきのは少し分かる気がした




