十七話 見るしかない
「あれってなにさ。」
「流星群だよ流星群!」
目を輝かせながら言う町田に、華も共鳴してわくわくとしてきた。
「え!?見れるの!」
生まれてこの方生で流星群を見たことはない。いかにもロマンチックな光景だけにいつか見てたいと願ってはいたがまさかそれが叶うとは。
「そう!見たいでしょ?」
「見たいよ!」
話への食いつきがすごい華に誇ったような顔で答えている。
「流星群ってどこでも見れるの?」
ゆーかも興味はあるが、それ以上に本当に見られるかの方が心配らしい。
「大丈夫だって。暗くて開けてる場所ならだいたい見れるらしいよ?」
「へー。じゃあ町田の家の近くなら見えるかな?」
山の中腹にある町田の家はご近所さんがいないので夜になると周辺が真っ暗になる。辺りに高い建物もないため、流星群を見るには悪くないスポットだった。
「見えるんじゃない?」
見える確証があるわけではないが、見えないならないでまあ普通にお泊まり会にすればいいのだ。
「いつ行く?」
「うーん。やっぱ平日よりは土日の方がいいよね?」
手帳を広げて予定を確認しながらゆーかが聞く。
「金曜でもいいけどね。次の日休みだから。」
「おー確かに。じゃあいつでも行けるね。今週?」
わくわくしながら華が尋ねるが、町田が首を横に振りながら答える。
「それがさ、晴れてないと見えないから...」
「あー...」
残念なことに今週いっぱいは雨が続くらしいと家を出る前のテレビで言っていた気がする。こんなことなら来週の分も見とけばよかった。
「じゃあ来週は?」
「いやー曇りなんだよね。」
なんか急に怪しくなってきた。
「え流星群っていつでも見れるの?」
見られる期間が決まっているかどうかはかなり重要である。まさか流星群がお月様のように毎晩毎晩流れているイメージはないのだ。
「なんか活発な期間があって、その間ならいつでも見れるらしい。」
「そんなセールみたいなことあるんだ。」
流れ星の見える時期は一年に何回かあるが、五月はそのうちの一つだ。残念ながら最も活発な五月六日は過ぎてしまったが大体五月一杯は見ることができる。
「まあ五月中だったらいいからあと3回ぐらいチャンスはあるよ。」
「ふーん。じゃあまあ土日に行くのが一番いいか。」
流石に学生なので夜更かしして学校に遅れるぐらいなら大人しく次の日が休みのタイミングにした方がいいだろう。
「ってなると意外と難しかったりするかもね。」
「えーやだよ見たいよ!」
晴れていて予定がない土日でないと三人で見ることは難しい。とはいえ、三人でじゃなければなんとかなるのだが。
「華の家からでもわんちゃん見えるんじゃない?」
「いやどうせなら三人で見たいじゃん!」
「そうだけど見るだけ見れるでしょ。」
自分一人で見るんじゃなくて三人で見たいから言っているのになんて非情なやつらだ。それに一人で流星群をみるならどうせならもっといい条件で見たいし。
「まあなんにせよ、泊まれる日を抑えておいて晴れることを祈るだけだね。」
「まかせてよ。スーパー晴れ女だからね!」
旅行からなにからだいたい晴れてくれている、気がする。胸を張って言う華に逆に不安になりつつも、これまでもその恩恵にあずかってきているので今回もお願いしておくしかない。
「じゃあよろしく。」
「任せた。てるてる坊主でも作る?」
ハンカチを取り出した町田が言う。
「いや今作っても意味ないから。どこに飾るのって話だし。」
おー、と町田の手からぶんどって、自分のハンカチを包むようにして作り始めた華だが、油性ペンで顔を描こうとして止められている。
「なんちゅーことしてんだ。」
「いや冗談だって冗談。」
鬼の顔で睨まれてはへへへと揉み手で答えるしかない。
「てか再来週辺り中間考査あったよね?」
ふと思い出したゆーかが言うと、町田も華もあからさまに嫌な顔をする。
「うげえ、思い出させないでよ。」
「いやどのみち授業でも言われるから。」
ゴールデンウィーク前からテスト範囲も言われていたし、真面目な人間であればこの休みの間に勉強してきているだろう。もちろんここにいる二人はそんなことしていなかったが。
「もー。ついさっきいっぱい課題やったばっかなのにもうテスト?」
「華はテスト勉強してる暇なかったからこっからやらないとだよ。」
赤ちゃんの頃に戻りたい。こんなにたくさんやることがあると言うのに時間は簡単に溶けてしまう。
「しかも今からやらないとどうせ直前にならないとやる気出さないのが見えてるしね。」
「テスト直前にやるから今はいいと言う考えは?」
無理矢理にでも今のうちからさせておかないと、課題のように溜めまくって徹夜でやろうとするのはもう確定的に明らかだ。それに、もしそんなことをやって赤点でもとろうものなら予定に大きな影響が出る。
「補習で休みの日が潰れてもいいなら。」
「げえ。」
二人は問題なくとも、華の親が許してくれないかもしれない。そうすると泊まりで流星群を見る計画がおじゃんになる可能性が高い。それは困る。
「しかも夏にも補習あった気がするよ?」
「絶対にやだ。」
まず休みの日が潰れるのもやだし、暑い日に外に出るのもやだ。
「じゃあせめて赤点は取らないように勉強しときなよ。」
「うん、そうする。」
流石に予定が潰れるかもしれない上に夏休みまで削れるとなれば勉強しとくかと殊勝に答えるが、これまでの実績から悪い方向に信頼があった。
「そんなこと言っといて結局家に帰ったらやらない気がするんだけど大丈夫?」
「たしかに。やらなそう。」
確かな信頼によって胡乱げな目で見られている。自分の信頼のなさに憤慨するが、どう考えても自分のせいなのでなにも言えない。
「ぐぬ。...まあ、やらない気はするけども。」
「いや自分でもそう思うんだ。」
しかしそうなると、どうにかしてやる方法を見つけなければならない。そんなものあったらこれまでも困ってないのだが。
「えーどうしよっかな。」
腕を組んで考える華を見て町田が思いたことを聞いてみる。
「ゆーかが家庭教師したら?」
「ええ?めんどくさいなあ。」
一人でやるからできないわけで、誰かといたら勉強するやる気もでるかもしれない。だがそうなるとそれに付き合わなければならないわけで、まあまあめんどくさい。
「まあまあそう言わずにやってよ。」
「えー。」
華は両手を組んでこちらを向いて祈っている。
「自分でできるようにならなきゃ結局解決してなくない?」
渋い顔で言うゆーかだが、華には今が大事なのだ。
「正論ではご飯は食べれないんだよ?」
「ご飯を食べるために正論を言ってあげてるんだけど。」
なんだかんだとずっとできないままな気がするがまあいいか。
「じゃあ付き合ったげるけどちゃんとやってよ?」
「いやほんと任せてよ。」




