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第17話

 10月18日

 書きたい展開が書けない。

 熱い描写にしたいと思っているのに途端に冷めていくのはどういうことだろう。

 向いていない、で片づけるのは簡単だが、今はまだ研究が足りないということにしておきたい。

 憎悪の感情を瞳に宿し、青年は剣を片手に切りかかってきた。



「ここでお前が! お前の周りにいる人間が死ねば! この国は変わるんだ!!」

「くっ……!? 何を……」



 戦いながら彼が吐き出した言葉が自分の記憶に残っていた出来事を掘り返してくる。

 あれは、自分が出立する数か月前の出来事。とある女性が路地裏で惨たらしい状態で投げ捨てられていた事件だ。犯人は捕まり、現在は無期懲役を科せられ国の外れで労働の任に就いているはずだ。

 彼はその女の恋人であったらしく、犯人が今ものうのうと生きていることが我慢ならないらしい。


 涙が溢れて前が見えないのだろうか、乱雑に振るわれる剣の切っ先は狙いが定まっていない。

 自分はそれを盾で受けながら、隙を見て飛来する矢もまた盾で受けながらこの状況から抜け出す方法を模索する。

 第一に考えなければいけないのは、この場にいる非戦闘員と主を逃がすことだ。


 こちらを眺めていた群衆の中からポツポツと武器を手にするものが現れ始める。

 そう多い数ではない。

 だが、この場にとどまり続けて残った命を守りながら戦える程少ないわけでは無かった。



「主! 二人を荷車に乗せて城壁の中へ迎え!」



 地面に未だ横たわったままの彼女達を攻守の隙を見て荷車に放り込んだ後、大盾を一つ使って彼女達の体が隠れるように蓋をする。

 主に任せてしまうのは心もとないが、この場に運べる人間は一人しかいない。なるべく荷車を軽くするためと、相手を牽制させるために荷を勢いよく周囲に飛散させた後、もう一度主を呼ぶ。

 すると、剣の柄に添えていた手を開き荷車に体を向けてくれた。


 一縷の希望を託したわけでは無い。

 自分は人を傷つけることが嫌いであっても、戦士として生きてきた身だ。人間がどこをどれだけ傷つけられれば死ぬかは理解している。

 だから剣を向けたくなかった。

 だから周りに置きたくなかった。

 弱い者達は勝手に傷つき倒れていく。自分がどれだけ手加減しようと、自分がどれだけ愛情を注ごうと。それを分かっていたはずなのに、ああ、何故だろう。

 感化されたとでも言うのだろうか。


 蓋をした盾の裏から慟哭が漏れてくる。

 自分の中に刻まれた数少ない名前がこんなにも悲痛な叫びによって繰り返し音となるのがこんなにも辛いとは、思いもしなかった。



「王太子殿下! 私達が護衛に就きます!!」

「門番の貴様らが付いていってどうする! お前たちはここを俺と共に死守しろ! 中のことは全て兄上に任せればいい!!」



 門を抜けた主を見送り、自分は退路を断つ。

 大砲が撃たれたと錯覚するほどの音と振動が体を襲い、辺りに砂塵が舞う。

 釣り上げられた門は落とした。

 もう、ここの門が開くことは無い。


 今日の筋トレ日記

 腕立て伏せ30回

 腹筋30回

 背筋30回

 これを2セット

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