第16話
10月16日ぶん
早く書けたというよりは明日早起きしなきゃならんので、早い時間の投稿です。
乾いた地面に赤い染みが勢いよく広がっていく。
……なんだこれは
周囲にいる者達は騒ぐこともせず、ただ茫然とうつぶせのままピクリとも動かない彼女を見つめていた。
なんだ、これは……
自分は何をするためにこの場所に居たのだろうか。
彼女を見つめていると自分の存在価値が分からなくなる。
何故彼女は立っているのか、なぜ自分は立ったままなのか。
周囲の視線が自分の体に向いているような気がした。グサグサと、意識を周囲に向ける度体に杭が撃ち込まれるような痛みが走る。
なんだというのだ……、これは
自分は騎士だ。
主を身を挺して守ると誓い、曲がりなりにも剣を国王から受け取った騎士である。
身体に括り付けている物が盾二枚だろうと、守るべきものを守ろうと力を磨いてきた騎士のはずだった。
なのに、何故自分の目の前で自分よりも弱い人間が倒れているというのだろう。
なんだこれは……!
地面に突き刺さった、赤い粘性のある液体が滴る矢。
押し倒された経理担当は呆然と、足を矢が掠め傷ついていることすら認識できず、自身の下半身に覆いかぶさる形で動かなくなった彼女を見つめている。
ルクリア殿の姉は荷車から手を伸ばしたまま、現実を直視したくないのだろう、顔を俯けて震えている。
主は目を見開き顔を開けたまま固まっていたが、震える手はおもむろに腰に括り付けた直剣の柄に伸びていた。
ヒョゥ、と微かに空気を割く音が耳に入る。
先程までの賑やかな空気では認識することが出来ない程の微かな音だった。
「なんだというのだ、これは!!」
背負っていた大盾を振るい、主の背に迫っていた矢を弾き飛ばす。
「誰だ! 誰がやった!?」
クスクス
クスクス……
クスクス…………
この場に似合わない、音を殺した笑いがあちらこちらから聞こえてくる。
幻聴ではなかった。辺りを見渡せば笑うことを堪え切れなくなったのか肩を震わせている者すらいる。
何故笑える。
何故こんなにも多くの人間がこの場を目の当たりにして笑っていられる!
「誰がやったか聞き出して、お前はどうするんだよ?」
「なんだと?」
「人を殺せないお前が、お前が着任したせいで死罪を無くしたこの国が、誰がやったか聞き出してどうするんだよ?」
背後から聞こえてきた声にたまらず振り返る。
声をかけてきた人物は、まだ年若い青年だった。
弓を持ってはいない。ただ、彼は直剣を片手に持ち切っ先をこちらに向けていた。
「何を……?」
「なにを? 顔を忘れたか? ああ、お前には赤の他人の出来事だっただろうからな」
彼の瞳には、今自分に滾る感情と同じものが映っていた。
今日の筋トレ日記
腕立て伏せ30回
腹筋30回
背筋30回




