第18話
10月18日ぶん
うーむ、二人の心に相違点と類似点を作り出すのが難しかった。二回目の騎士サイドはまとめるときにがらりと変える必要がありそうだ。騎士側を十分に掘り下げることが出来ていない。というか、謀反を起こした形になって、話したい内容からどんどんずれていった。
当初の予定通り、騎士が殺さなかったことで逃がしてしまった犯罪者たちを出せばよかったか。
というか、ルルはどこからどんな角度で矢に射抜かれたのか。城壁からだったら中には行った主たちも狙われるやん……。
人が死ぬことのない世界。
それを望んだことがいけなかったのだろうか。
望みを叶えるためにまずは死刑を撤廃した。それによって重罪人であっても法によって殺されることは無くなり、国のための重労働を強いられるが国によって生かされ続けることとなった。
閉鎖的な区画に送り込まれた重罪人達は、そこから帰還することなく老いて死ぬまで働き続ける。
それが貧民街に暮らす学のない者達にとっては、犯罪をすることで働き口が貰え、衣食住が満たされるものと映ったらしい。
事実は違う。重罪人たちは延々と続く過度な労働を与えられるだけで対価は存在しない。その場には娯楽も衣食住もなく、生きていることが不思議な環境で魔士の気まぐれによる治癒の魔法による延命措置のみ。
人が死なないだけで、そこはこの世の地獄だった。
だが、それを懇々と説明しようと、貧民街に住み着く人間の多くは納得しない。
いいや、理解することが出来ない。
まず、帰って来ないことの理由が犯罪をしたから、ということが理解することが出来ないのである。
昔はさらし首にするなり、民の前で公開処刑するなりで、学のない人間にも犯罪とそれに伴った罰を直結させることが出来た。
だが、今の制度では犯罪をすれば連れていかれて帰って来ないだけで、何をされているのか全く見当もつかない。身をもって体験しなければ、言葉では彼らは理解することが出来なかったのである。
だからだろうか、昨今では貧民街出身の人間による殺人事件が多発していた。
彼らは今の制度に存在しない希望を見出してしまったのである。
剣の切っ先を向ける人間たちは今回の政策は失敗だったと叫ぶ。
だから改革の必要があるのだと。
変えなければならないことは理解していた。
故に、主は何度も貧民街に赴き変革のための種を探している。
主は行動していた。だというのに彼らはどうか。果たして行動していただろうか。常々主が吐き出していた言葉がある。貧民街の住人でも出来る仕事がこの王都内にあれば、と。
華々しい王都中心部に拠点を構える人間達は、貧民街の人間を嫌って爪弾きにする。だから彼らは働くことが出来ないし、他の土地に行くための資金もないのだからこの土地に留まることしか出来ない。
ようやく重い腰を上げて行動した結果がこれだというのだろうか。
片手に掴んだ盾で身体を支えながら目の前に並ぶこの国の臣民だと思っていた人間たちを睨みつける。
変えたいと願っていた。
この国を、ここで暮らす者達を……。
華やかな王都であるはずなのに影が満ちてしまったこの土地を真の意味で主が大好きな場所としたかった。
人を、生き物を傷つけることが苦手な自分を、俺の目的に必要な人材だと笑いながら受け入れてくれた主に報いたかった。
「なぜ、分かった……」
「人を守ることを生業とする兵であるのに人の死を笑った者の顔を忘れるわけがない」
腹を掠めた、この国の兵が持っている槍の切っ先を掴む。
何故変革を望む者達は皆、人の死を望むのだろうか。
ああ、怒りが沸々と煮え、一つの願いを作り出す。
自分は昔から何も変わってやいなかった。
彼女のようにはなれなかった。
だとするなら、これは最後の我儘としよう。
槍が掠めた箇所から伝わってくる寒気と吐き気を感じ取りながら、自分は盾を横なぎに振った。
少女
・全て自分に原因があると考えている。
・体が弱いことを疎んでいる。
騎士
・全て周りに原因があると考えている。
・屈強な体をもって生まれてしまったことを疎んでいる。
少女は自分が騎士のように強い体を持っていたら姉を悲しませずに済んだのだろうかと悔やみ、騎士は少女のように強い心を持っていれば救える人間も増えたのだろうかと悔やむ……。
ちょっと後書きを書いていて騎士側があやふやだったことに気付いた。二人以上の登場人物に理由を付けるのが難しい。
努力します。




