第13話
10月13日ぶん
朝に書こうとしたけれど、頭が働かず残骸を残して夜の部へ。
やっぱり一気に書き上げないといけないらしい。後々になって書こうとすると、書きたかったことが書けなくなる。だけど、その日中に投稿したいし……。
どうしたものだろう。
夢を見た。
一面見渡す限りに咲く色とりどりで可愛らしい花達。その一つ一つは大木に咲き誇る大輪と比べれば小さすぎるけれど、美しさは見劣りしない。
温もりある日差し。肌を晒しても寒くも暑くもない、陽に見つめられながら仰向けになってそのまま寝てしまいたくなる程心地よい温もりだった。
風に乗って運ばれてくる甘い香り。花の蜜の香織が鼻孔と心を擽り、心を穏やかなものに変えてくれる。
花の上を旅する蝶たちもこの情景を楽しんでいるのだろうか、気持ちよさげに風の流れに身を任せ色鮮やかで繊細な翅を羽ばたかせていた。
そんな幻想的な空間に一組の男女。
女の子は私。今まで着たことのない可愛らしい服に身を包み、花畑の中をクルクルと回りながら走り回っていた。
男の人は騎士さん。身を包んでいた甲冑はなく、優し気な笑みを浮かべながら私を見守ってくれている。
ああ、こんなにも自由に青空の下を走り回れたらどんなに気持ちいいのだろうか。
出来るならこの夢の中に姉も出てきてくれれば、なんて思ったけれどそれは贅沢というものだろう。
夢の景色から目が覚めると、いつも通りの木目が目に入った。
姉が洗ってくれたお蔭で綺麗になったお布団、ベッド、この部屋……。
私はこの街に縛り付けられたまま。私に縛られた姉は同様に自由を得ることが出来ない。いや、私以上に姉は不自由だ。
私のために働いて、私のために街の中を駆けずり回って……。
数日の休息を置き元気を取り戻したのは一昨日のこと。
昨日から再び体調の悪化が始まり、今日は少しの眩暈が起き抜けに襲ってきた。
私がこんな体じゃなければ、どんなに姉に楽な思いをさせることが出来ただろうか。もしかしたら、あの日騎士さんが持ってきた封書に書かれていたことを受け入れ外の世界へ旅立つことも出来たかもしれない。
ああ、それはなんてすばらしいのだろう。
ふと、ベッドの横にある机に目を寄せる。
そこにあるのは、触りたくても今は触ることが許されていない銀の細工飾り。あんなにも輝いて私を照らしてくれていた光はもうない。
「ねぇ、ルル。お話があるの」
ノックされ、扉越しに姉の声が聞こえてきた。
珍しい、というより、初めてのことだ。
今は早朝。まだ通りに出た店もまばらな朝早い静かな時間帯だ。私がいつもより遅く起きてしまったのかと窓へ視線を向けるも、やっぱり人はまばらだし喧騒なんて聞こえて来やしない。
入室を促すと、いつも以上に真面目な表情を浮かべた姉がお部屋に入ってきた。ベッドの横に置いてある姉専用の椅子に腰かけ、ベッドの上に足を伸ばしたまま座っている私の顔を宝石を思わせる双眸で覗き込んでくる。
何かを決意したような顔。またこの姉は私のために自身を犠牲にするのだろうか。そんな一抹の不安がよぎる。
だけど、不安がよぎっただけで嫌な予感はしなかった。
私の嫌な予感は当たりやすい。私の身近な人に対するものなら特に。
だから、これから姉の口から出てくる言葉は姉とって悪いものじゃないはず。
不安を表に出さないように小さく吐き出した息と共に要らない感情を吐き出すと、私はいつも通りの笑顔を浮かべる。
「なに? お姉ちゃん」
私は姉の決意を全て受け入れよう。
その先に救われる道がきっとあると信じて。
今日の筋トレ日記
腕立て伏せ30回
腹筋30回
背筋30回
これを2セット




