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9/19

異世界パパ、ようやく自分の名前を知る

光る野菜炒めの余韻で胃が忙しい中、

オレはふと気付いた。


(……あれ……?

オレ……名前知らなくね……?)


「ソル、ちょっといいか?」


「なぁに〜?」


「オレ……名前……何だっけ?」


ソルがきょとんとした。


「パパの名前?」


「そう。オレ、自分の名前忘れちゃったんだけど……?」


ソルは指を折りながら言う。


「パパの名前はね──」


(ゴクリ……)


「パパだよ!」


「いや、それ役職!!

肩書き!!

本名じゃない!!

オレの本名は!?!?」


ソルは首をかしげる。


「パパはパパだよ?」


「いやいやいやいや!!

それはそうなんだけど!!

読者が困るんだよ!!

“主人公の名前:パパ”ってどういうことだよ!!」


ソルは少し考えてから言った。


「パパね、ママがよんでたよ〜」


「おお!?

それだ!!

ママは何て呼んでた!?」


ソルは胸を張る。


「アウリスってよんでたよ!」


「アウリス!?

それオレの名前!?

なんか急にファンタジー主人公っぽい名前出てきたな!!

もっと早く言ってくれ!!」


ソルはケラケラ笑う。


「パパ、アウリスだよ〜!」


(……よかった……

名前あった……

“パパ”じゃなくてよかった……

読者も安心しただろ……)


「で、ソル。オレって仕事何してたんだ?」


ソルは指を折りながら言う。


「パパのおしごとはね──」


(ゴクリ……)


「ソルとルナのおせわだよ!」


「いや、それ育児!!

仕事じゃなくて家庭内業務!!

他には!?

村で何かしてた!?

お金どうしてた!?!?」


ソルは少し考えてから言った。


「パパね、みんなに“アウリスさん、いつも助かります!”っていわれてたよ!」


「助かります!?

オレ、何した!?

何を助けた!?

村の何を!?!?」


ソルは胸を張る。


「パパね、なんでもできるっていわれてたよ!」


「なんでも!?

なんでもって何!?

具体的に何!?

読者が困るんだよ!!

“なんでもできる人”って説明になってないんだよ!!」


ソルは嬉しそうに言う。


「パパね、木なおしたり、お水くんできたり、畑みたり、いろいろしてたよ!」


「それ便利屋じゃん!!

オレ、村の便利屋だったの!?

なんでも屋アウリスだったの!?

それなら生活できるわ!!」


(‥‥これで、名前問題と仕事問題は解決‥‥)


「じゃあソル、買い物とかどうしてたんだ?」


ソルは即答する。


「パパね、いつも“ソル〜、これどこ〜?”って言ってたよ!」


「それ生活能力ゼロじゃん!!

オレ、ソルに頼りすぎじゃん!!

読者が心配するだろ!!」


ソルはケラケラ笑う。


「パパね、ソルといっしょにおみせいってたよ!」


「店あったんだな!?

よかった!!

文明あった!!

オレ、物々交換とかしてなかったんだな!!」


ソルはさらに続ける。


「パパね、いつも“ソル、これおいしい?”ってきいてたよ!」


「それ試食係じゃん!!

オレ、ソルに味の判断全部任せてたの!?

だから原色調味料使ってたのか!!

納得したわ!!」


「‥‥パパ、ときどき、どくしゃが?なんとかって言ってたけど、それってなに~?」


意外と鋭い所を聞いてくるな‥‥


「‥‥まぁ、パパの仕事の話だよ。ソルは気にしなくても大丈夫だよ。」


「‥‥そっかぁ。わかった!!」


そう言うと、ソルはニッコリ笑う。


———かくして、オレの情報も何とか収集する事に成功した。


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