異世界パパ、ようやく自分の名前を知る
光る野菜炒めの余韻で胃が忙しい中、
オレはふと気付いた。
(……あれ……?
オレ……名前知らなくね……?)
「ソル、ちょっといいか?」
「なぁに〜?」
「オレ……名前……何だっけ?」
ソルがきょとんとした。
「パパの名前?」
「そう。オレ、自分の名前忘れちゃったんだけど……?」
ソルは指を折りながら言う。
「パパの名前はね──」
(ゴクリ……)
「パパだよ!」
「いや、それ役職!!
肩書き!!
本名じゃない!!
オレの本名は!?!?」
ソルは首をかしげる。
「パパはパパだよ?」
「いやいやいやいや!!
それはそうなんだけど!!
読者が困るんだよ!!
“主人公の名前:パパ”ってどういうことだよ!!」
ソルは少し考えてから言った。
「パパね、ママがよんでたよ〜」
「おお!?
それだ!!
ママは何て呼んでた!?」
ソルは胸を張る。
「アウリスってよんでたよ!」
「アウリス!?
それオレの名前!?
なんか急にファンタジー主人公っぽい名前出てきたな!!
もっと早く言ってくれ!!」
ソルはケラケラ笑う。
「パパ、アウリスだよ〜!」
(……よかった……
名前あった……
“パパ”じゃなくてよかった……
読者も安心しただろ……)
「で、ソル。オレって仕事何してたんだ?」
ソルは指を折りながら言う。
「パパのおしごとはね──」
(ゴクリ……)
「ソルとルナのおせわだよ!」
「いや、それ育児!!
仕事じゃなくて家庭内業務!!
他には!?
村で何かしてた!?
お金どうしてた!?!?」
ソルは少し考えてから言った。
「パパね、みんなに“アウリスさん、いつも助かります!”っていわれてたよ!」
「助かります!?
オレ、何した!?
何を助けた!?
村の何を!?!?」
ソルは胸を張る。
「パパね、なんでもできるっていわれてたよ!」
「なんでも!?
なんでもって何!?
具体的に何!?
読者が困るんだよ!!
“なんでもできる人”って説明になってないんだよ!!」
ソルは嬉しそうに言う。
「パパね、木なおしたり、お水くんできたり、畑みたり、いろいろしてたよ!」
「それ便利屋じゃん!!
オレ、村の便利屋だったの!?
なんでも屋アウリスだったの!?
それなら生活できるわ!!」
(‥‥これで、名前問題と仕事問題は解決‥‥)
「じゃあソル、買い物とかどうしてたんだ?」
ソルは即答する。
「パパね、いつも“ソル〜、これどこ〜?”って言ってたよ!」
「それ生活能力ゼロじゃん!!
オレ、ソルに頼りすぎじゃん!!
読者が心配するだろ!!」
ソルはケラケラ笑う。
「パパね、ソルといっしょにおみせいってたよ!」
「店あったんだな!?
よかった!!
文明あった!!
オレ、物々交換とかしてなかったんだな!!」
ソルはさらに続ける。
「パパね、いつも“ソル、これおいしい?”ってきいてたよ!」
「それ試食係じゃん!!
オレ、ソルに味の判断全部任せてたの!?
だから原色調味料使ってたのか!!
納得したわ!!」
「‥‥パパ、ときどき、どくしゃが?なんとかって言ってたけど、それってなに~?」
意外と鋭い所を聞いてくるな‥‥
「‥‥まぁ、パパの仕事の話だよ。ソルは気にしなくても大丈夫だよ。」
「‥‥そっかぁ。わかった!!」
そう言うと、ソルはニッコリ笑う。
———かくして、オレの情報も何とか収集する事に成功した。




