天使の笑顔と爆発する謎の異世界料理
かまどの火は、ソルの指先から出た小さな火の玉によって、
ぽっ……と優しく燃え始めていた。
オレはまだ混乱していた。
(……魔法……
ソル、魔法使えるのか……
いや、使えるどころじゃないだろ……
肉をデコピンでひき肉にした時点で規格外だったけど……
火まで出せるって……
これ、絶対ヤバい才能だろ……)
そんなオレの混乱をよそに──
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ルナが再び泣き出した。
「あっ、そうだった!ミルク!!」
ソルが慌てて言う。
「パパ、ミルクつくろ〜!」
「お、おう……!」
かまどの火はもうついている。
あとはお湯を沸かすだけだ。
オレは鍋に水を入れ、かまどの上に置いた。
ジュワァァァァ……
(……火のつけ方は規格外だったけど……
火力は普通なんだな……よかった……)
ソルは横でワクワクしながら見ている。
「パパ、あったかくなったらね、まぜまぜするんだよ!」
「お、おう……」
お湯が温まってきたので、粉ミルクを入れる。
ソルが嬉しそうに言う。
「パパ、“おいしくなーれ”ってするんだよ!」
「……やっぱりやるのか……」
オレは仕方なく、
ミルクの入った哺乳瓶を軽く振りながら言った。
「……おいしくなーれ……」
ソルが拍手する。
「パパ、じょうず〜!!」
(いや、これ本当に必要なのか……
でもソルが喜んでるから……まあいいか……)
ルナは泣きながら手足をバタバタさせている。
「ほら、ルナ。できたぞ……」
哺乳瓶を口元に近づけると──
ルナはぴたっと泣き止み、
ちゅくちゅくとミルクを飲み始めた。
そして──
にこぉぉぉぉぉ……
天使みたいな笑顔になった。
「うわ……かわ……」
ソルが胸を張る。
「ルナちゃん、パパのミルクすきなんだよ〜!」
「てか“おいしくなーれ”の呪文、本当に効果あるのか……?」
ルナはミルクを飲みながら、
満足そうにオレの指をぎゅっと掴んだ。
(……やばい……
この子たち……かわいすぎる……)
その時──
ポフッ……ポフッ……ポフッ……
背後のフライパンから、
謎の爆発音が続いていた。
「……あっ、料理……完全に忘れてた……」
ソルが嬉しそうに言う。
「パパ、ひかってるよ〜!」
「光ってるのは知ってる!!
問題は“なんで光ってるか”なんだよ!!」
ポフッ……ポフッ……ポフッ……
光りながら時々爆発音を出す“原色ひき肉野菜炒め”を前に、
オレは深呼吸した。
「……よし。食べるか……」
ソルが嬉しそうに跳ねる。
「パパ、たべよ〜!!」
(いや、そんなテンションで言う料理じゃないんだが……
これ、光ってるんだぞ……?
食べ物が光ってるって、普通に考えてヤバいだろ……)
———そして、いよいよ実食の時がやってくる。




