異世界パパ、状況を確認する
ソルが拍手する。
「パパ、すごい! できたよ!」
オレはその場にしゃがみ込む。
「……オムツ交換って……こんなに……大変だったのか……」
長女がニコッと笑う。
「パパ、いつも“つかれた〜”って言ってたよ!ソルもおてつだいしたよ!!」
(前の父親……気持ち分かるわ……この人、亡くなる寸前までやってたのか……すげぇな……それに、長女の名前はソルって言うんだな。ソルとルナか。)
オレはルナを抱き上げ、そっと揺らした。
その小さな体がオレの胸に収まる。
(……オレ……本当に……大丈夫か!?)
そう思うのであった。
そんな不安が胸の奥でぐるぐるしていると、ソルが覗き込んでくる。
「パパ、どうしたの?つかれたの?」
「いや……ちょっとな。ソル、少し聞きたいことがあるんだが……」
ソルはぱぁっと笑う。
「いいよ!パパ、いつもソルに聞いてたよ!」
(前の父親……情報源ほぼソルだったのか……!)
オレは慎重に切り出した。
「まず……ここって、どんな世界なんだ?」
ソルは即答する。
「パパがいる世界だよ!」
「いや、それはそうなんだが……もっとこう……国とか、魔法とか……」
「パパ、いつも“魔法つかえたらいいのにな〜”って言ってたよ!」
「それはただの願望だろ!!」
ソルはケラケラ笑う。
「でもね、パパはね、魔法つかえないけど、ソルは好きだよ!」
(なんだその無条件の信頼……! 胸にくる……!)
オレは話題を変える。
「じゃあ……この家は?オレたちの家はどういう……」
ソルは指を折りながら説明する。
「ここはね、パパのおうちで、ソルのおうちで、ルナのおうちで、ママのおうちだったよ!」
「……だった?」
ソルは少しだけ寂しそうに笑う。
「うん。でもね、パパがいるから大丈夫だよ!」
(うわ……急に重い……! でもソル、強いな……)
慌てて話題を変える。
「じゃ、じゃあ……オレって、どんなパパだったんだ?」
ソルは満面の笑みで答える。
「パパはね──」
(ゴクリ……)
「よく転んでた!」
「そこ!? もっと性格とかあるだろ!?」
「あとね、よく“あれ〜?”って言ってた!」
「それは聞いた!!」
「あとね、よくソルに“たすけて〜”って言ってた!」
「それは……なんか……すごく分かる……!」
ソルはケラケラ笑う。
「でもね、パパはね──」
オレは息を飲む。
「ソルとルナのこと、いちばん大好きだったよ!」
(……やめろ……泣く……)
ソルは続ける。
「だからね、パパがちょっと変になっても、ソルはパパのこと好きだよ!」
「……変になって……?」
「うん!今日のパパ、なんか“がんばってるパパ”って感じ!」
(魂が入れ替わったなんて知らないから、
“ちょっと変なパパになった”くらいの認識なんだな……!)
そして、ソルが急に真顔になる。
何か、重大な事があるのか!?
「パパ、おなかすいた」
「急に現実的!!」
「うん!パパ、いつも“ごはんできたよ〜”って言ってたよ!」
(前の父親……料理もしてたのか……!
ハードル上げてくるな……!)
こうして、オレの 初めての料理編 が始まるのであった──。




