↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/18

異世界パパ、人生初のオムツ交換で死にかける

改めて実感する。


———この子達が、この世界を救う!?


いたって、普通の子供にしか見えない。


「パパ、はやく~!ルナちゃんがないてるよ!」


・・・・なるほど、次女の方はルナという名前なのか・・・・


そう思いながら、オレはゆっくり上半身を起こして立ち上がる。

すると──


(……ん?)


自分の体とは違う感覚が一気に押し寄せてきた。


まず、目線が高い。


オレは現世では171cm。

中肉中背──いや、小太りだった。


だが今の視界は明らかに高い。

部屋の梁が近い。


(……これ、180cmくらいあるんじゃないか?)


そして──


体が軽い。


軽いというか、動きやすい。

関節がスムーズに動く。

腰も膝も痛くない。

十五年引きこもっていたオレの体とはまるで別物だ。


腹を触る。

柔らかい肉がない。

胸板は薄くない。

腕も細すぎず、適度に筋肉がついている。


(……痩せてるだけじゃなくて、普通に“若い男の体”じゃん……)


神様が言っていた“最適化”というやつか。


長女がオレの服を引っ張る。


「パパ、たっちできた! よかったぁ……!」


その笑顔がまぶしい。

オレは思わず頭を撫でた。


(……この手もオレのじゃないんだよな……)


指は長く、節がしっかりしていて、爪も綺麗だ。

現世のオレの手とはまるで別物。


———感慨にふけっている場合ではない。いかん。ルナだ。


泣き声の方を見ると、木製の揺りかごの中で赤ちゃんが手足をバタバタさせていた。

顔を真っ赤にして、全力で泣いている。


長女が当然のように言う。


「パパ、オムツかえてあげて!」


「えっ!? オムツ!? オレが!?」


「うん! いつもパパがしてたよ!」


(……前の“本物の父親”がやってたってことか……!

オレは中身45歳のニートだぞ!? オムツなんて触ったことないぞ!?)


しかし赤ちゃんは泣き止まない。

泣き声がどんどん大きくなる。


長女が潤んだ瞳でオレを見る。


「パパぁ……はやく……!」


オレは深く息を吸った。


(……よし。やるしかないか)


そして──人生初のオムツ交換が始まった。



揺りかごの中のルナをそっと持ち上げる。

軽い。

あったかい。

柔らかい。


(……うわ……こわ……! 壊れそう……!)


ソルが横で応援してくる。


「パパ、がんばって!」


オレは震える手でオムツを開いた。


──その瞬間。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


予想を遥かに超える惨状が広がっていた。


「パパ、いつも“うわぁぁぁぁぁ”って言うね!」


(前の父親も叫んでたのかよ!!じゃあこれは正常な反応なんだな!?)


オレは深呼吸した。


深呼吸をして、思いっきり吸い込み、そして噦(・)く(・)。


オレ、アホだな・・・


「……よし……落ち着け……オレ。……お前はできる……はず……」


どうやら、元居た世界のオムツとは違う素材だが、形状は一緒で、紙おむつだ。ちゃんと止める用のテープも存在する。


え?何でオムツを知ってるかって?


オムツ、売ってましたから。学生時代にドラッグストアのバイトで。


商品補充の時に、否が応でもパッケージに書かれている説明書きや写真を見る。その時に見ていて覚えていたのだ。


オレは、ゲームで鍛えた集中力と、テレビで見た事のあるオムツ交換の映像を総動員し、布を取り、ルナの足を持ち上げようとすると──


長女が声を上げる。


「パパ、ふきふきの布と、新しいオムツもってきた!まずは、ふきふきしなきゃ!」


さすが、長女。完全に頭になかった。


『ありがとう。助かったよ。』


そうして、まずはキレイにふきふきする。


丁寧に拭き上げようと、足を持ち上げようとすると、ルナは全力で動こうとする。


「ちょっ……動くな動くな動くな……!」


ルナは容赦なく足をバタバタさせる。


長女が横でアドバイスをくれる。


「パパ、いつも“じっとして〜!”って言ってたよ!」


(なんだこの“父親の歴史の継承”は……!)


なんとか汚れを拭き取り、新しいオムツを広げる。


「えっと……こうして……こう……?」


ソルが覗き込む。


「ちがうよパパ! それ、おしりじゃなくておなかのほう!」


「えっ!? 逆!? これ逆なの!?」


「うん! パパ、いつも逆にして“あれ〜?”って言ってた!」


(前の父親、どんだけドジだったんだよ!!いや、親ってそんなもんか!?)


試行錯誤しながら、なんとかオムツを装着する。


最後のテープを止めた瞬間──


「……できた……?」


ルナが泣き止み、ふにゃっと笑った。


人生初のオムツ交換ミッションが終了したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。