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異世界パパ、至福の時を過ごす

オレのツッコミが炸裂した時、家からソルが着替えを持って来る。


「パパー!きがえ、あったよー!!」


オレは、ババアに手でシッシッと合図を送る。


ババア女神は、よっこらせと言いながら、破れた空間へ戻っていく。


空間の裂け目は、

ビリビリ……ビリビリ……ぺちん。

と、妙に可愛い音を立てて閉じた。


(……いや、閉じ方かわいいな……

あのババァ、絶対わざとだろ……)


ソルは着替えを抱えて走ってくる。


「パパー!きがえ、もってきたー!!」


オレは笑顔で受け取りながら、

心の中でそっと呟いた。


(……よし。

風呂は完成した。

ババァも許可した。

文明も作る。

この世界、絶対に快適にしてやる……)


ルナはスヤスヤ眠ったまま、

ぽよん魔法の余韻を残している。


ソルは着替えを持ってニコニコしている。


そして、

空間の裂け目の向こうで、

ババァ女神が小声で言っているのが聞こえた。


「……次は……

シャンプーを持ってくるかのぉ……」


(聞こえてんだよ!!)


「よし、まずはソルから入るか。

ルナは寝てるし、赤ちゃんは慎重にいかないとな。」


ソルは釜を覗き込んで目を輝かせる。


「パパ~!

これがふろなの~!?

おみずいっぱい~~!!」


「そうだ。これがお風呂だ。」


「お風呂ってすごいねぇ~~!!」


ソルは釜の縁に手をかけないようにして──


よいしょっ!!


と勢いよく入ろうとして底板が浮く。


「うわっ!?

ソル、勢いが強い!!

底板が浮く!!」


ソルは慌てて板を踏み沈める。


「えいっ!!」


ズボォッ!!


「勢いよく沈めすぎだ!!ゆっくり沈めないと浮いてくる!!」


ソルはケラケラ笑う。


「パパ、おもしろい~~!!」


(いや、面白くない……

オレのケツが危ない……)


なんとか体勢を整え、

ソルも湯に浸かる。


「わぁぁぁぁぁぁ……

あったかい~~~~!!

パパ~~!!

これすごい~~!!」


「だろ?これが文明だ。」


「ぶんめいってすごいねぇ~~!!」


ソルは湯の中で嬉しそうに手をぱちゃぱちゃさせている。


「パパ~!

きもちいい~~!!」


「だろ?

風呂は最高だろ?」


そう言いながら、

オレはふと気付いた。


……石鹸が無い。


(……しまった……

文明の象徴・風呂を作ったのに……

肝心の石鹸が無い……

汗しか流せないじゃん……)


ソルは湯の中で体をくねくねさせながら言う。


「パパ~!

からだ、つるつるになるの~?」


「……いや、ならない。

石鹸が無いからな。」


ソルは目を丸くする。


「せっけんってなぁに~?」


「それもまた、文明だ。」


「ぶんめいってすごいねぇ~~!!」


(いや、すごいけど……

今は無いんだよ……

文明の象徴が……

ここに無いんだよ……)


オレは湯の中で拳を握りしめた。


「……ソル。

今日は汗を流すだけだ。

でもな……」


ソルが首をかしげる。


「なぁに~?」


「明日絶対石鹸作る。

この世界に文明をもたらす第一歩だ。

風呂があるなら石鹸も必要だ。

これは絶対だ。

絶対に作る。

絶対にだ。」


ソルは湯の中でぴょんぴょん跳ねる。


「パパ、ぶんめいつくるの~~!?

すご~~い!!」


「すごいだろ。

オレはやるぞ。

天職・引きこもりを舐めるな。

快適な生活のためなら文明を作る!!」


(……よし……

明日は石鹸だ……

文明の炎が燃えてきた……)


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