異世界パパ、ババア女神に物申す
ドゴォォォォォォン!!!!
地面が揺れた。
竈の横の空間がビリビリと裂け──
ババァ女神が落ちてきた。
「お、おおおおおおお……!?
い、痛いわい!!
なんで毎回着地が雑なんじゃ!!
わしの腰が粉砕されるわい!!」
ババァ女神は杖をつきながら立ち上がる。
「ふぅ……
やっと来れたわい……
お前さん、予定にないことをしとるじゃろ……?」
「予定?」
ババァ女神は釜を指さす。
「五右衛門風呂は予定にありません!!」
(はい出た。予定にありませんババァ。)
オレは深呼吸した。
「……ババァ。
ちょうどいい。
言いたいことがある。」
ババァ女神はビクッとする。
「ひっ……!?
な、なんじゃ急に……
わしに不満でもあるんか……?」
「あるよ!!
山ほどあるよ!!
むしろ不満しかないよ!!」
ババァ女神は杖を落とした。
「ひぃぃぃぃぃ!!
か、神様に不満を言うやつ初めて見たわい!!」
「まず!!
この世界のこと、何一つ教えてくれなかったのは何でだ!?」
ババァ女神は目を丸くする。
「えっ……?」
「オレ、いきなり異世界に来て、
“はい、子育てよろしく〜”って丸投げされたんだよ!?
この世界の常識も文化も魔法も何も知らないのに!!
説明ゼロ!!
レクチャーゼロ!!
マニュアルゼロ!!
新人研修ゼロ!!
ブラック企業か!!」
ババァ女神は慌てて言い訳する。
「ち、違うんじゃ!!
わし、説明書を作ろうとしたんじゃ!!
でもな……
字が小さすぎて読めんかったんじゃ!!
老眼じゃ!!
老眼が悪いんじゃ!!」
「老眼のせいで異世界転移の説明が消えたの!?
そんなことある!?」
「あるんじゃ!!
老眼をなめるな!!
神でも老眼には勝てん!!」
(いや、勝てよ。)
「次!!
姉妹にこんな力があるって、なんで言わなかった!!」
ババァ女神はさらに震える。
「えっ……?」
「ソルは岩盤粉砕するし、
釜浮かせるし、
地形変えるし、
指で触ったら石が消えるし!!
ルナは水をぽよんって出すし!!
乳児が水魔法使う世界なんて聞いてない!!
心臓止まるわ!!
事前に言え!!
“この子たち、規格外です”って言え!!
説明責任どこ行った!!」
ババァ女神は涙目で言う。
「そ、それは……
わしも驚いたんじゃ……
予定より強く生まれてしもうて……
魔力配分を間違えたんじゃ……
“ちょっと多めに”のつもりが……
“ドバァァァァァ!!”って出てしもうて……
わしの指が滑ったんじゃ……」
「指が滑って世界の救世主が誕生したの!?
そんなガチャみたいなノリで世界救わせるな!!」
「す、すまん……
ほんとにすまん……
わしもびっくりしたんじゃ……
“あれ?強すぎん?”って……」
(いや、気づいたなら言え。)
「最後!!
この姉妹が世界を救う理由!!
なんで言わない!!」
ババァ女神は完全に固まる。
「……え……?」
「オレは聞いてないんだよ!!
なんでこの子たちが世界を救うのか!!
何が起こるのか!!
どんな脅威が来るのか!!
全部黙ってるじゃん!!
情報ゼロじゃん!!
これでどうやって育てろって言うんだよ!!
世界の命運を託すなら説明しろ!!」
ババァ女神は震えながら言った。
「……す、すまん……
それは……
その……
わしもまだ知らんのじゃ……」
「知らんのかい!!!!!」
ババァ女神は慌てて補足する。
「ち、違うんじゃ!!
“この子たちが世界を救う”っていうのはな……
未来視の神様が言ったんじゃ!!
わしじゃないんじゃ!!
わしはただの連絡係なんじゃ!!
郵便局みたいなもんなんじゃ!!」
「郵便局のノリで世界の命運を託すな!!」
「すまん……
ほんとにすまん……
わし……
異世界転移の仕事……
初めてで……
段取りが……
分からんくて……」
「初めてかよ!!」
ババァ女神は涙をぽろぽろ流しながら言った。
「……不満は……
全部聞いた……
全部反省する……
だから……
風呂は……
正式に許可する……」
「ありがとう。」
ババァ女神は釜を見つめて、ぽつりと言った。
「……わしも入っていいか……?」
「いいけど!!
絶対火吹き竹は使うなよ!!
火事になるからな!!」
「使わん!!
使わんから入らせてくれ!!
わし、風呂大好きなんじゃ!!」
ふと、白い服に黄色いシミが付いていたのを思い出す。
「‥‥あと、入って良いが、オレ達が入った後でコッソリ入れよ。んで、ちゃんと栓を抜くこと。」
「‥‥分かったわい!風呂は何百年ぶりかのぉ~」
(‥‥今、聞いてはならない事を口走ったような気がするが、聞かなかった事にしよう。次、入る時は釜をピカピカにしてから入ろう‥‥)
「‥‥あ、あと‥‥」
「‥‥何じゃ!!まだ何かあるのかえ!?」
「‥‥オレもこの世界の救世主になるわ。」
「‥‥は?」
「‥‥オレは、この世界に文明という物を作る!!」
「‥‥いやいやいや。何を言っておる!?!?それは予定に‥‥」
「‥‥天職・引きこもりを舐めるな。オレは快適な生活を送る為に、この世界に文明をもたらすっっ!!!これは、ババアが何を言っても、やるからな!」
ババア女神は、ぷるぷると震えなが言う。
「‥‥これは、未来が変わってしまうかもしれぬ‥‥こうなったら、わしがこうして様子を見に来て、未来視の神様に逐一報告しなけりゃいけないねぇ‥‥」
「‥‥そう言う口実で、風呂入りたいんだろ?」
ババアはビクッとする。
「‥‥そ‥‥そんな事は言うておらぬ。様子を見に来た時に、すこ~しばかり風呂に入って帰るだけじゃ!!!」
「‥‥やっぱり、風呂じゃねーか!!」




