異世界パパ、初めて乳幼児のお風呂を体験する
オレは、ゆっくり温まってからお風呂を出る。
オレはそっとルナを抱き上げた。
「よし……次はルナだな。
初めてのお風呂だぞ……ゆっくりな……」
ルナはスヤスヤ眠ったまま、
ぽよん魔法の余韻を残している。
ソルは湯の中からワクワク顔で覗き込む。
「ルナちゃん、ぽよんしたおみずに入るんだよ~~!!」
(ぽよんしたお水ってなんだよ……
もう名称が定着してるじゃん……)
オレはゆっくりルナを湯に近づける。
ルナの足先が湯に触れた。
ちょん。
その瞬間──
ルナの顔が “?????” になる。
完全に未知との遭遇。
ソルは爆笑。
「ルナちゃん、かお~~!!
おもしろ~~い!!」
ルナは湯にゆっくり浸かり──
にこぉぉぉぉぉぉぉ……
と、とろけるような笑顔。
「きゃっ……きゃっ……」
(……かわいい……
かわいすぎる……
お風呂の力で赤ちゃんがとろけてる……)
ソルが言う。
「パパ~!
ルナちゃんのあたまも、あらうの~?」
「そうだな。
汗かいてるし、ちょっと濡らしてやるか。」
オレはルナの頭をそっと支え、
手で湯をすくって──
ざばっ。
ソルが叫ぶ。
「パパーーー!?
みみ、ふさがないとーーー!!」
「えっ!?
耳ふさぐの!?
そんなルールあるの!?
誰が決めたの!?
文明の法律!?
赤ちゃん法!?
知らんぞそんなの!!」
ソルは湯の中で慌てて両耳を押さえるジェスチャーをする。
「こうやるの~~!!
こうやって、みみをぎゅってするの~~!!」
「いや、知らんて!!
誰も教えてくれなかったて!!
ババァ女神も説明書くれなかったって!!
老眼で読めなかったって!!」
ルナは──
びちゃっ。
頭から湯をかぶり、
一瞬固まった後──
ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!
ソルが大慌て。
「ルナちゃん~~!!
みみ~~!!
みみ~~!!」
オレはテンパりながらルナを抱きしめる。
「ごめん!!
ごめん!!
オレの知識が足りなかった!!
耳ふさぎ知らなかった!!
誰も教えてくれなかった!!
ババァのせいだ!!」
遠くの空間の裂け目から、
ババァ女神の声が聞こえた。
「わしのせいにするな!!
老眼じゃ!!
老眼が悪いんじゃ!!」
(聞こえてんのかよ!!)
オレは、何とか耳を塞いで初めての入浴ミッションを完了した。
「それにしても、気持ち良かったな。」
「‥‥うん!ソル、お風呂好き~!!」
「‥‥だろ!?作って良かったな。ありがとな。ソル・ルナ。」
「‥‥うんっ!!」
オレ達がお風呂から上がってしばらくした後、ババアの悲鳴が聞こえるのだった。
「あっつぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
(‥‥ふっ‥‥入る前に、きちんと温度調整しなきゃ、ただの釜茹でになるに決まってるじゃん‥‥)
「‥‥老眼で説明書見えなかったから仕方ない。」
「‥‥パパ?何か言った?」
「‥‥いいや。何でも無い。さて、寝ようか。」
「‥‥うん!パパ、おやすみぃ~」
「ソル、ルナおやすみぃ~。」
そう言うと、朝まで爆睡‥‥
————出来るわけが無かった。
3時間おきに、ミルクだのオムツだので起こされ、気付けば朝日が昇っていたのだった。
ソルに揺さぶられて起こされるオレ。
「パパ〜!おなかすいた〜!」
(……寝たばっかりなんだが……
3時間おきのミルクとオムツで、もう脳が溶けてるんだが……)
目をこすりながら起き上がる。
「……朝ごはんか……」
ルナを起こさないように、そーっと寝室を出る。
ソルは元気いっぱいで、足をぴょんぴょんさせている。
(このテンション、どこから湧いてるんだ……?)
キッチンへ向かうと──棚はスッカラカン。
「……食材ゼロかよ……」
困ったときのソル頼み。
「ソル……朝ごはんって、どうしてたんだ?」
ソルは満面の笑みで答える。
「鶏舎で、鶏さんから卵もらうの〜!」
「……鶏舎?」
「うん!いっぱいいるよ!」
嫌な予感しかしない。
ソルに手を引かれて外へ出る。
「ここだよ〜!」
ソルが指差した先には──
巨大な木造の鶏舎。
まるで体育館。
いや、村の集会所レベル。
そしてその中には──




