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『失恋した完璧令嬢は、歯車仕掛けの蒸気都市で恋と謎を解き明かす』  作者: かあまる01


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第二章 12話 騎士の面目

 蒸気機関が発達した都市グラン・ロア

そこで暮らす政府高官の一人娘、アリシア・フォン・ベルクは、大企業の御曹司に失恋してしまいました。


 失恋の傷も癒えないまま、アリシアの周りには様々な事件が巻き起こります。


 そんな彼女の前に現れたのは、御曹司と顔がそっくりな従兄弟のレオン・アシュフォード。


 顔は瓜二つなのに、性格は正反対。自由奔放なレオンに振り回されながらも、アリシアは少しずつ世の中を知り、成長してゆきます。


 そしていつしか彼のことを……。


 蒸気都市グラン・ロアを舞台に、謎と事件を解き明かすスチームパンク物語、開幕です!


 感想・ブックマーク・評価をいただけると、とても励みになります。よろしくお願いいたします。


※本作は小説家になろう、カクヨムで同時掲載しています。

 レオンの一言が路地に響いたその瞬間、周囲の空気がガラリと変わった。熱狂していた群衆の顔から野次馬根性が消え、マテオたちに向けられる視線が「白け」と「冷ややかな疑念」へと変わっていく。


「確かに……もう勝負はついてたろ」


「騎士様が丸腰の奴を殺すのか……?」


 マテオたちの耳に、住民たちのひそひそと囁き合う声が聞こえる。部下の従銃士たちも青ざめ、狼狽したように顔を見合わせた。


「く……っ」


 マテオは屈辱に顔を歪め、掴んでいたレオンの襟首を突き飛ばすように放した。


 アリシアは拘束が緩んだその隙を逃さず、従銃士隊の手を振り払い、レオンの元へ駆け寄った。彼の差し出した腕にしがみつくと、胸の奥から安堵の温もりがこみ上げてくる。


「レオン……っ。本当に、貴方って人は……!」


「おやおや、アリシア様、感謝していただけますか?  命がけの演出だったのですよ?」


 レオンはおどけて見せるが、その体はかすかに緊張で硬くなっていた。


 そこへ、騒ぎを聞きつけたダストン巡査部長率いる警官隊が、息を切らせて割って入ってきた。


「そこまでです! 従銃士隊の皆様、我々は決闘が行われているとの通報を受けて駆けつけました。従銃士隊の方の治安維持へのご協力、感謝いたします。 後の処置は、我々警察が引き受けますので、どうかお任せください」


 完全に場を奪われ、面目を潰されたマテオは、苦々しい表情でレイピアを鞘に収めた。


「……撤収する。アリシア様、お送りいたします。このような卑しい場所にお一人で居られるのは危険です」


 マテオが冷たい手を差し伸べてくる。だが、アリシアはレオンの腕を固く抱き締め、真っ直ぐに見つめ返した。


「結構ですわ、マテオ隊長。執事に迎えに来るように伝えてあるので、お心遣いは無用です。……本日の護衛、ご苦労様でした」


 アリシアの冷ややかな一言に、マテオの額に青筋が浮かぶ。だが、あくまで冷静に振る舞い、部下に撤収の指示を出す。


「かしこまりました。それではこの件は、公爵殿にもお伝えいたします」


 マテオは忌々しげにレオンを鋭く睨みつけると、部下たちを引き連れて踵を返した。


 帰り際に、レオンとマテオの視線が一瞬、交錯する。


(あの男、民間人のくせに、余裕の態度は何なんだ。それに、胸ぐらを掴んだときの奴の身体つき、只者ではない……)


           ◇


「クリスタ・ボールド・アーキンだな。君を剣不法所持の現行犯で連行する。いいね」


「……勝手にしろ」


 クリスタは抵抗せず、剣を取り上げられ、ダストンたちに連行される。連れ去られる間際、一度だけアリシアを振り返ったが、何も言わずに目を伏せた。


 周りの警官隊が、群衆に解散を命じて、静けさが戻った夕暮れの路地に、アリシアとレオンだけが残される。


「あの……アリシア様。随分と大胆ですね。僕としては光栄ですが、噂になりますよ?」


 レオンの可笑しそうな指摘にはっと気づき、慌てて彼の腕を離した。じわじわと顔が熱くなっていくのがわかる。身体の震えは収まったが、今度は胸の動悸が止まらない。


「もう!  本当に怖かったんですから! レオン ……助けていただいて、ありがとうございました」


「いいえ。アリシア様に怪我がなくて何よりですよ」


 レオンは微笑んだが、その視線はクリスタが連れていかれた路地の奥へと向けられていた。


 陽が落ちかけた薄暗い街並みを見つめる彼の横顔には、先程の軽薄さは微塵もなかった。胸が締め付けられるような、底深い寂しげな色が浮かんでいる。


「……レオン?」


「……行きましょう、アリシア様。お屋敷まで送りします」


 レオンはいつもの掴み所のない笑顔を貼り直すと、ゆっくりと歩き出した。


 その背中に言い知れぬ切なさを感じながら、私は静かにレオンの後に続いた。

 蒸気都市グラン・ロアの物語、第二幕。アリシア・フォン・ベルクの新たな物語が始まりました!


 第二章から、更新ペースを変更します。


 各章は二十話前後、一話あたり千〜二千文字弱を予定しています。前作を読んでいなくても楽しめる内容になっておりますので、初めての方もお気軽にお読みください。


 毎日更新できるように頑張ります。


 評価・感想・ブックマークなどをいただけると、とても励みになります。


 どうぞよろしくお願いいたします!

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