第二章 11話 りんごが止めた凶刃
蒸気機関が発達した都市グラン・ロア
そこで暮らす政府高官の一人娘、アリシア・フォン・ベルクは、大企業の御曹司に失恋してしまいました。
失恋の傷も癒えないまま、アリシアの周りには様々な事件が巻き起こります。
そんな彼女の前に現れたのは、御曹司と顔がそっくりな従兄弟のレオン・アシュフォード。
顔は瓜二つなのに、性格は正反対。自由奔放なレオンに振り回されながらも、アリシアは少しずつ世の中を知り、成長してゆきます。
そしていつしか彼のことを……。
蒸気都市グラン・ロアを舞台に、謎と事件を解き明かすスチームパンク物語、開幕です!
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※本作は小説家になろう、カクヨムで同時掲載しています。
とっさの出来事に、誰もが目を疑った。
「一体何なんだこれは!」
たたらを踏んでどうにか踏みとどまったマテオは、靴底で踏み潰された完熟りんごの無惨な姿を見て、周囲を睨みつけた。果汁がマテオの美しい革靴を汚している。
「誰だ! 我々の治安維持活動を邪魔する者は!」
殺気立つマテオの叫びに対し、人ごみをかき分けて姿を現したのは、両手に抱えるほどのりんごを詰めた紙袋を手にした、レオンだった。
「いやあ、これは大変失礼いたしました。下層区の名物りんごを買った帰りだったのですが、つい手が滑ってしまいまして。お邪魔でしたか?」
レオンは呑気にしゃがみ込むと、足元に転がっていたもう一つのりんごを拾い上げ、服の袖で軽く拭いて照れくさそうに笑ってみせた。
「貴様、一体何者だ」
マテオの問いに、レオンは立ち上がり、うやうやしく一礼してみせる。軽い口調にそぐわず、その仕草から、ただならぬ気品がうかがえる。
「これは失礼いたしました。私はレオン・アシュフォード。ロイヤル・ギア社の次期当主……」
「な、ロイヤル・ギアだと……」
「の、従兄弟でございます。何卒、お見知りおきを」
「貴様、ふざけているのか!」
激高したマテオが詰め寄り、レオンの襟首を掴み上げる。だが、レオンは顔色ひとつ変えず、一向に柔らかい表情を崩さない。
「滅相もありません。ただ私は、ガルア騎士団の従銃士隊のお方ともあろう人が、街なかで決闘、しかも明らかに劣勢な相手を手にかけてしまっては、世間の目はどう見るのかと、思った次第です」
蒸気都市グラン・ロアの物語、第二幕。アリシア・フォン・ベルクの新たな物語が始まりました!
第二章から、更新ペースを変更します。
各章は二十話前後、一話あたり千〜二千文字弱を予定しています。前作を読んでいなくても楽しめる内容になっておりますので、初めての方もお気軽にお読みください。
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