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『失恋した完璧令嬢は、歯車仕掛けの蒸気都市で恋と謎を解き明かす』  作者: かあまる01


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20/21

第二章 10話 剣を抜いた冒険者

 蒸気機関が発達した都市グラン・ロア

そこで暮らす政府高官の一人娘、アリシア・フォン・ベルクは、大企業の御曹司に失恋してしまいました。


 失恋の傷も癒えないまま、アリシアの周りには様々な事件が巻き起こります。


 そんな彼女の前に現れたのは、御曹司と顔がそっくりな従兄弟のレオン・アシュフォード。


 顔は瓜二つなのに、性格は正反対。自由奔放なレオンに振り回されながらも、アリシアは少しずつ世の中を知り、成長してゆきます。


 そしていつしか彼のことを……。


 蒸気都市グラン・ロアを舞台に、謎と事件を解き明かすスチームパンク物語、開幕です!


 感想・ブックマーク・評価をいただけると、とても励みになります。よろしくお願いいたします。


※本作は小説家になろう、カクヨムで同時掲載しています。

「アリシア様!  お怪我はございませんか!  方々でお探しいたしましたぞ!」


 部下たちが強引にアリシアとクリスタの間へ割り込み、壁際へと押しやる。


「離しなさい!  無礼ですわよ!」


「危険です、アリシア様!  お下がりください!」


 両腕を騎士たちに掴まれ、アリシアは身動きを封じられた。若い男性と身体が密着する不快感に、思わず顔を歪める。


 マテオは腰のホルスターから最新式の小型魔導銃を引き抜くと、一切の躊躇なくクリスタの胸元へ突きつけた。金属の無機質な輝きが、薄暗い路地でギラリと光る。


「クリスタ・ボールド・アーキン。貴様、グラン・ロアにおける『剣狩り』の法令を知らぬわけではあるまい。武器を捨てて即座に投降しろ」


 マテオの瞳に宿っていたのは、アリシアを守る使命感などではない。自らの地位を見せつけ、弱者を合法的に痛めつけようとする、冷酷な心だった。


「待ちなさい、マテオ!  彼は私に危害を加えるつもりなど――」


「アリシア様、この男は公爵邸を襲撃した危険人物です。言葉を交わす価値もございません」


 マテオはアリシアの言葉を遮り、冷徹な笑みを浮かべた。


 異変を察知した下層区の住民たちが、ぞろぞろと集まり始めていた。煤けた服を着た野次馬たちが遠巻きに包囲し、黒山の人だかりができる。彼らにとって、高慢な貴族騎士と落ちぶれた冒険者の衝突は、格好の娯楽でしかなかった。


 逃げ場を失ったクリスタは、集まった群衆と、突きつけられた銃口を静かに見つめた。そして、小さく溜息をつくと、痛む右腕を庇いながら、背中の剣をゆっくりと引き抜いた。


 クリスタが剣を抜いた仕草を見たマテオの口角が上がり、白い歯を見せる。まるでクリスタが剣を抜くことを待っていたかのように。


「貴様、決闘か? いいだろう。その汚い剣ごと、貴様の誇りを切り刻んでやる!」


 マテオは嘲笑うと、銃を腰に収め、代わりに細身のレイピアを抜いた。鏡のように磨かれた刃が美しく翻る。


「やめて!  二人ともやめてください!」


 アリシアの叫びは、群衆の血に飢えた歓声と、どよめきの中にかき消された。


 次の瞬間、刃と刃が真っ向からぶつかり合い、甲高い金属音が路地に鳴り響いた。


 マテオのレイピアは流麗で、疾風のごとき刺突を繰り出す。対するクリスタの大剣は重厚で、一撃一撃が地鳴りのような威力を秘めていた。


 だが、勝負の行方は初めから決まっていた。


「ぐっ……ぁ……!」


 クリスタが剣を振るうたび、その右腕が苦痛で激しく痙攣した。昔の傷が苛んでいるのだ。顔を歪め、荒い息を吐き出すクリスタに対し、マテオは涼しい顔で間合いを保ち、いたぶるように刃を滑らせていく。


 レイピアを振る鋭い破空音が響き、クリスタの肩口から鮮血が噴き出した。


(熟練の冒険者なら、少しはやるかと思ったが、やはり我流の野良犬か。所詮、栄光あるガルア騎士団の敵ではない!)


 マテオのレイピアが、舞うようにクリスタの足、腕、胸元を浅く切り裂いていく。確実な致命傷を避け、苦痛を長引かせるための残忍な攻撃。


 ついに膝を突いたクリスタから、手入れの行き届いていない剣が滑り落ち、むなしく石畳を転がった。


 血と汗に塗れ、地面に這いつくばるクリスタ。

誰の目にも、勝負はついたかに見えた。野次馬たちの歓声も、次第に引き始めていく。


 だが、マテオは止まらなかった。


 マテオの瞳から人間らしい感情が消え、ぎらついた目から明確な『殺気』が宿る。マテオはレイピアを両手持ちに変えると、倒れたクリスタの無防備な首元へ向けて、体重を乗せた必殺の刺突を踏み込んだ。


「やめてぇぇぇ――っ!!」


 私が悲鳴を上げ、目を背けたその瞬間。


 ころん……ころころ……。


 不意に不調和な音が響き、マテオの踏み込んだ足元へ、真っ赤な果実が転がってきた。


 突如として足元をすくわれたマテオは、盛大に体勢を崩した。必殺の刺突は大きく逸れ、レイピアの切っ先が虚しく石畳を削って火花を散らす。


「一体何なんだこれは!」


 アリシアがりんごが転がってきた方向に目を向けると、人混みの中をかき分けて、誰かが出てくる。それはアリシアが良く見知った顔……。


「レオン!」


 蒸気都市グラン・ロアの物語、第二幕。アリシア・フォン・ベルクの新たな物語が始まりました!


 第二章から、更新ペースを変更します。


 各章は二十話前後、一話あたり千〜二千文字弱を予定しています。前作を読んでいなくても楽しめる内容になっておりますので、初めての方もお気軽にお読みください。


 毎日更新できるように頑張ります。


 評価・感想・ブックマークなどをいただけると、とても励みになります。


 どうぞよろしくお願いいたします!

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