第二章 1話 硝子の割れる音
蒸気機関が発達した都市グラン・ロア
そこで暮らす政府高官の一人娘、アリシア・フォン・ベルクは、大企業の御曹司に失恋してしまいました。
失恋の傷も癒えないまま、アリシアの周りには様々な事件が巻き起こります。
そんな彼女の前に現れたのは、御曹司と顔がそっくりな従兄弟のレオン・アシュフォード。
顔は瓜二つなのに、性格は正反対。自由奔放なレオンに振り回されながらも、アリシアは少しずつ世の中を知り、成長してゆきます。
そしていつしか彼のことを……。
蒸気都市グラン・ロアを舞台に、謎と事件を解き明かすスチームパンク物語、開幕です!
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※本作は小説家になろう、カクヨムで同時掲載しています。
蒸気都市グラン・ロアに、朝がやってくる。
巨大な煙突から白い蒸気が立ち上り、時計塔の鐘が街に響く。喧騒に包まれる下層区をよそに、上層区は静寂に包まれていた。
その一角にそびえるレイウッド公爵邸で、一人娘のアリシア・フォン・ベルクが静かに目を覚ますと、館の静寂を叩き壊すように、硝子の割れる甲高い音が、下の階から聞こえる。
朝のまどろみを振り払い、ベッドから跳ね起きたアリシアは、洋服掛けから素早くローブを掴むと、乱れた銀髪も気にせず通路へ飛び出す。
走りながらローブを羽織ると、廊下では若手のメイドが青ざめた顔で身を縮めていた。事情を聞けば、荒々しい男が執務室に押し入ったのだという。
アリシアは壁際に立てかけられていた清掃用のモップを引っ掴むと、迷わず執務室へと走った。
「お父様!」
扉を開けると、父レイウッド公爵と執事ギルバートが、一人の男と対峙している。執務室を険悪な空気が支配していた。
男は四十代半ばといったところか。上質な仕立てながら着崩した洋服、そして右腕には痛々しい大きな斜め傷が見える。ちぐはぐな甲冑の着こなしからして、正規の兵士ではなく傭兵か冒険者だろう。
男はモップを構えているアリシアの存在に気づくと、くたびれた顔に皮肉めいた笑みを浮かべた。
「公爵閣下のお嬢さんか。……亡くなった母君に似てきたな」
「なっ……」
なぜ、この粗野な男が母のことを知っているのか。亡き母の名を軽々しく口にされた怒りで、アリシアの視線が鋭く尖った。
蒸気都市グラン・ロアの物語、第二幕。アリシア・フォン・ベルクの新たな物語が始まりました!
第二章から、更新ペースを変更します。
各章は二十話前後、一話あたり千〜二千文字弱を予定しています。前作を読んでいなくても楽しめる内容になっておりますので、初めての方もお気軽にお読みください。
毎日更新できるように頑張ります。
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