第16話:聖王国の国境、決戦の幕開け
現れたのは、白銀の鎧に身を包んだ、聖王国の国境守備隊――『聖騎士団』の一隊だった。
「報告の通りだな。禍々しい暗黒の魔力を放つ漆黒の鎧、そして背中の不気味な十字架の棺……。お前が最近、各地で盗賊を虐殺して回っている『仮面の死神』か!」
聖騎士の隊長が、光の魔力が込められた大剣をシンに向ける。
「待ってください! この人は悪い人じゃ――」
ミキが庇おうとするが、聖騎士たちは聞く耳を持たない。
「騙されるな、娘よ! その男の背負う棺からは、ドス黒い死霊術の気配がする。穢らわしい不審者め、聖王国の法に基づき、その棺ごとここで拘束、あるいは消滅させる!」
『美紀の棺を消滅させる』。
その言葉を聞いた瞬間、シンの驚愕の表情が、一瞬で狂気と激怒へと反転した。
「……消滅させる、だと?」
ゴオォォォッ!!!と、シンの身体から、遺跡の時とは比べ物にならないほどの、圧倒的な暗黒の魔力が噴き出した。周囲の木々が一瞬で黒く凍りつき、夜空がシンの怒りに呼応するように歪む。
「俺の美紀に……指一本でも触れてみろ。この国の人間を、王ごと根絶やしにしてやる……ッ!!」
完全に理性を失い、修羅の力に呑まれそうになるシン。
だが、そんなシンの前に、真紅の衣装を翻したミキが立ちはだかった。十字架の剣を抜き、聖騎士たちへ向ける。
「シン、暴走しちゃダメ! あなたをこれ以上、本当の怪物にさせない……! 聖騎士の皆さん、私のシ……この人に触らせません! お相手は、この私がしますっ!」
見た目は最高にかっこいい凛とした女戦士。
しかし、戦闘態勢に入ろうと一歩踏み出した瞬間、ミキは自分の新調したブーツの紐を逆の足で踏んづけた。
「ひゃうっ!?」
お約束の、大一番でのズッコケ。
だが、その転んだ勢いで振り回されたミキの十字架の剣が、偶然にも、聖騎士たちが展開しようとしていた『光の結界術』の魔法陣の、最も重要な基点を完璧にぶち壊した。
バガァァァンッ!!と、結界が暴発し、聖騎士たちが自爆する形で吹き飛んでいく。
「な、なんだあの動きは!? 計算された、一撃必殺の体術か!?」
「くっ、あの真紅の女、ただ者ではないぞ! 構えろ!」
思わぬ形(お尻アタックに続く、ドジっ子奇跡の剣)で聖騎士の出鼻を挫いたミキ。
シンは仮面の中で「……相変わらずめちゃくちゃな奴だ」と呆れつつも、彼女の存在によって、暴走しかけた暗黒の魔力がすっと収まるのを感じていた。
「ミキ、援護する。……前へ出ろ!」
「はいっ、シン!」
美紀の記憶を巡る最大の謎を抱えたまま、二人は聖王国の精鋭たちとの、命がけ(&ラッキースケベ)の国境突破戦へと身を投じるのだった!
物語は一気に緊迫感と謎が深まる最高の中盤戦に突入しました!
シンはミキが「美紀本人」ではないかと疑い始め、聖騎士たちは棺を狙ってきます。




