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酔っ払い令嬢の英雄譚~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~  作者: ゆずこしょう
三領地記念祭。

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記念祭開幕!!

パンパンパン!


乾いた祝砲の音が空へと弾ける。


「いよいよここまで来たわね!!」


三領地記念祭当日――


エヴァンジェリンたちは、三領地の中央に位置するルピナストに集まっていた。


街は色とりどりの旗で飾られ、広場にはすでに多くの人が行き交っている。


「今日から一週間、鉄の箱の移動は無料。貴族も平民も平等よ。」


エヴァンジェリンは広場を見渡しながら言った。


「だからこそ……」


「変な輩が出てくる可能性もある、ということだな?」


ユリウスの言葉に、エヴァンジェリンは小さくうなずく。


「そういうこと。警備は強化してちょうだい。他国からの来賓も多いわ。三領地がどういう場所か、しっかり見てもらわないと。」


ユリウスは視線を巡らせる。


騎士の配置。


人の流れ。


死角。


「既に二重にしてある。だが、人が増えれば盲点も増える。」


「それを潰すのがあなたたち騎士団の仕事でしょう?」


記念祭のために、三領地から選りすぐりの騎士たちを集めて結成された騎士団。


これを取りまとめるのはユリウスだ。


エヴァンジェリンを見ると、口元は笑っているはずなのに目が笑っていない。


(失敗したらまずいな……)


その場にいた全員にも同じような緊張感が伝わる。


「いい?私たちはもてなす方なの。絶対に気を抜いてはだめ。常に緊張感を持って対応すること。わかったわね?」


エヴァンジェリンのひとつひとつの言葉が胸に突き刺さる。


と同時に、


大きな高揚感が走った。


祝祭は、ただの祭りではない。


三領地の力を示す舞台。


各々が、持ち場に散っていく。


そして、大きな門の上――


記念祭の主催者であるエヴァンジェリンと、アウレリウス、レオニダスが立つ。


「それじゃ……準備はいいわね?」


エヴァンジェリンの声に二人が頷くと、


次の瞬間、


パンッパンッパンッ


快晴の中、空に色とりどりの花が咲いた。


そして、アウレリウスとレオニダスの声が響き渡った。


「――開門!!」


号令とともに、広場へと続く大門がゆっくりと開かれる。


刹那、一斉に歓声が上がった。


色とりどりの旗が風をはらみ、屋台からは香ばしい匂いが漂う。


甘い焼き菓子の香り。


炙られる肉の音。


子どもたちのはしゃぐ声。


ポッポー


鉄の箱が軌道を滑る音が、規則正しく響く。


普段は貴族しか乗れない移動手段に、今日は平民も列を作っている。


遠方から訪れた商人が驚きの声を上げる。


「な、なんだこれは……こんな乗り物初めて見たぞ!?」


「本当に無料なのか?」


「三領地は太っ腹だな!」


広場中央に進めば、巨大な舞台が設置されている。


そこには三領地それぞれの紋章が掲げられ、その下に長い赤絨毯が伸びていた。


赤絨毯の両脇には、整然と並ぶ騎士たち。


胸に刻まれた紋章は違えど、纏う空気は一つ。


その先――舞台中央には三つの席。


エスペリア公爵に、ヴァルター辺境伯。


そして、シルヴァリア公爵。


三領地を象徴する者たちが集っている。


やがて、太鼓が鳴り響く。


ドン――


ドン――


ゆっくりとした重い音が、広場の熱気を会場全体へと広がっていくのと同時に、歓声が徐々に収まり、数万の視線が舞台へと向けられた。


「静粛に!」


ルカリオスの声が広場を切り裂いた。


そして――


三領地の代表が、ゆっくりと歩み出る。


「三領地同盟ができて一年。初めての試みに、戸惑う者も多くいただろう。」


低く、よく通る声が広場に響く。


「昨今、国内外で小競り合いが絶えなかったことも、皆知っているはずだ。」


「領地を奪い、田畑を奪い、力を誇示し合う日々。」


「互いを疑い、睨み合うことが当たり前になっていた。」


皆が今までの出来事を思い出す。


エヴァンジェリンが手を差し伸べる前は、税ばかり重くなる一方で生きるのもやっとの生活を送る領民ばかりだった。


「しかし――」


バサッ


旗のはためく音とともに、空気が変わった。


「我らは、剣を向けるかわりに、手を取った。」


「奪うのではなく、支え合う道を選んだ。」


静寂が広場を包む。


「三領地同盟は、互いの力を認め合い、力を合わせるという決断だ。」


「そして今日、その決断が間違いではなかったと示す。」


それぞれの領主から、重たい言葉が投げかけられる。


「いま、我らの周りには数年前には考えられなかった光景が広がっている。いがみ合う時代は終わった。」


ドンッ


一度、太鼓の音が大きく鳴り響いた。


「我らは証明した。」


「争わずとも、強くなれると。」


ドンッ!!


「奪わずとも、豊かになれると。」


ドンッ!!ドンッ!!


太鼓の音に合わせて、ざわり、と広場にうねりが走る。


「三領地は、互いを支えることでここまで来た。」


ゆっくりと視線が民衆へと向けられる。


「一瞬でいい、周囲を見渡してみてくれ。」


人々が顔を上げる。


貴族も平民も、同じ広場に立っている。


笑い合う商人。


駆け回る子どもたち。


同じ紋章の下で並ぶ騎士。


「ここにあるのは、争いではない。」


「ここにあるのは――未来だ。」


三人の領主の言葉が重なった。


そして。


「今日より一週間、この地を楽しめ!」


「三領地は、開かれている!」


次の瞬間――


歓声が爆発した。


太鼓が鳴り響き、旗が揺れ、色紙が空を舞う。


鉄の箱からは黒煙が黙々と立ち上り、屋台の鉄板からは炎が舞い上がる。


そしてほのかに広がるウイスキーの匂い。


笑い声が重なり、音楽が広場を包み込んだ。


三領地は、確かに一つになっていた。


舞台の上で、エヴァンジェリンは小さく息を吐く。


その瞳には、不安ではなく――確信があった。


(つかみは上々ね!!)


エヴァンジェリンは、ルドリオスの開会宣言を聞き終えると共に次の会場へと移動する。


三領地記念祭はまだ始まったばかりだ。

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