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酔っ払い令嬢の英雄譚~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~  作者: ゆずこしょう
ご利用は計画的に……。

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自称第四王子。

「百万!!」


「千万」


宝石を見てからどんどん木札が上がっていく。


「三千万!」


「五千万……」


「七千五百万!!」


ここまで上がると、先ほどまで活発に動いてきた木札の動きが一気に遅くなる。


(そろそろかしら……)


「もう、いらっしゃいませんか?」


競売人が声をかけると、年老いた男が、ゆっくりと木札をあげた。


「……一億……」


あまりの高値に、騒がしくしていた人たちもピタリと声を止める。


「一億……いらっしゃいませんか?」


もう少しだけ……


そう思って手を途中まであげる人達も、ゆっくりと木札を降ろしていく。


カンカンカン


「一億バルスで落札です。」


木槌の音が、場内に木霊した。


競売に参加していた貴族たちも、これだけの金額で落札したならと、大きな拍手を送っていた。


が、しかし……


次の瞬間――


「ちょっとまってくれ!!その宝石は私達のものだぞ。」


VIPルームに入っていった男女のカップルはスっと立ち上がると、ズカズカと壇上に向かって歩いてくる。


そして、競売人の前まで来ると、飾られていた宝石を鷲掴みにした。


「お前たちのような下賤のものが手にしていいものではない!!」


全て自分たちの自由になるとでも思っているのか……宝石を鷲掴みにしたまま、この場を去ろうとした。


パシッ


泥棒男の腕を掴むと、競売人は目を細めて、男に笑いかけた。


「お待ちください。こちらは品物であって、貴方が手にしていいものではございません」


「な、なんだと……!?」


「まして……競売に参加していない時点で、あなたに勝ち目はない」


高貴なものだと知っているからか、誰もが、競売人の言葉使いにビクビクしていた。


「お、おまえ……俺にそんな口の利き方していいと思っているのか!?」


「『していいのか』も何も……仮面をしている以上、ここでは上も下も関係ないはずですが……違いますか?」


男は何も言い返せないのか、宝石を強く握りしめると、そのまま競売人に向かって勢いよく投げつけた。


「くそっ……」


宝石が投げつけられても、競売人は一歩も退かなかった。


仮面の奥で、静かに笑う。


「……続けましょう」


その一言で、会場の空気が、完全に変わった。


(やっぱりね……いつからあの二人は来ていたのかしら)


壇上にいる競売人と、スタッフを見る。


そこには見た目こそは違えど……雰囲気はそのまま変わらない、エヴァンジェリンとユリウスがにこやかな笑みを浮かべて立っていた。


その後も競りはどんどん続き――


「本日最後の一品となります。とある入手経路でやっと手に入れることができました。」


バサリ


掛かっている布を勢いよく外すと――


そこには誰もが見惚れるほど美しい布。


「同じ色は一切存在しないルナシルクです。」


その言葉を聞いた瞬間、会場にいた誰もが言葉を失った。


場内が静寂に包まれる。


やがて、皆が時を忘れた頃――


カンカン


競売人の木槌を叩く音で意識が戻った。


「あれは……本物か?」


「あの輝き……間違いようがない。絶対本物だ。」


まだ信じきれないのか……


そんな時、


先ほど騒いでいた男が、またまた大声をあげた。


「ルナシルクだと!?それは王族の私に献上しろ!それ以外の奴が使うことは許さんぞ!」


その言葉に、その場にいた誰もが唖然とした。


(あの話し方……やはりヴァルター殿下か……)


クラウス改め、クラウディウスは、ドスドスと音を立てながら壇上に向かっていく男を眺めた。


「また、貴方ですか……。」


競売人は、相手をするのが面倒なのか、ため息を吐くと、そのまま前を向き、指をパチンと鳴らした。


「では、本日最後の競売を始めましょう」


しかし――


「おい、俺を無視するとはいい度胸じゃないか!!」


壇上に上がってきた男は、自分のつけていた仮面に手を取ると、


カラン


そのまま床に投げ捨てた。


「……」


「では――」


競売人は、クラウディウスたちの方を向いた。


(あれは……木札を上げろと言うことか……)


「……千万」


クラウディウスが声を出したことを皮切りに、周りの観客たちも恐る恐る木札をあげる。


「……二千万」


「……五千万」


「おい!!俺の話を聞いているのか!?俺はこの国の第四王子だぞ!」


と、同時に……壇上にいる男のボルテージはどんどん上がっていく。


「……一億」


しかし、そんなことは露知らず……


どんどん上がっていく金額。


「二億!」


「三億!!」


そして、木札が上がらなくなったところで、競売人はカンカンカーンと木槌を鳴らした。


「三億以上の方はいらっしゃらないでしょうか?」


悔しそうな顔をする観客たちを見て、もう上がらないと確信した競売人は、軽く口角をあげた。


「では……三億で落……」


ドゴーン


競売人が落札と言おうとした瞬間――


大きい音が鳴り響き、気づくと、競売人は壇上の端へと吹き飛ばされていた。


そして、そこには自称第四王子の男が顔を真っ赤にしながら立っていた。


(あら……ついに手を出してしまったわね……)


ヴィオラが観客席から壇上で起こっている出来事を見ていると、スタッフとして台車を押していた女が、笑いを堪えているのが見える。


(……全く……楽しんでいる場合じゃないでしょうに……)


そして、無意識に先ほど注いだお酒に手を伸ばすと、ゴクゴクと飲み始めた。


「お、おい……あれって……」


「えぇ……間違いなく麦酒だわ……」


ヴィオラとクラウディウスは、その光景を見て、そろって深く息を吐いた。


「長い夜が始まりそうだな……」


「そうね……でもきっと面白くなるわよ」


普段ほとんど笑わないヴィオラが少し口角をあげる姿を見て、クラウディウスは頬を赤らめた。

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