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酔っ払い令嬢の英雄譚~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~  作者: ゆずこしょう
"二人”という秘密。

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覚悟。

「エヴァンジェリン……?」


ユリウスが恐る恐る聞き返せば、エヴァンジェリンは首を傾げながら「なに?」と一言返す。


そして、周りの雰囲気でなんとなくこの状況を飲み込んだのか、ヴィオラの方を見た。


「まだ何も伝えておりません」


(やっぱり……話が上手く繋がらないと思ったのよね)


「そっか。じゃあ、あの事も?」


「はい、勿論です」


エヴァンジェリンとヴィオラが二人にしか分からない話をしていると、ユリウスが割って入った。


「すまない。二人で話しているところ悪いが……出来れば何が起きているか教えてくれると助かる。」


その言葉にエヴァンジェリンたちは顔を見合わせる。


そして――


少し考えてから、エヴァンジェリンが重い腰を上げた。


「そうね。ここだと狭いし、場所を移動しましょうか」


「エヴァお嬢様……いいのですか?」


(……まぁ、秘密の共有者が増えるのは不安じゃないって言ったら嘘になるけど……)


「そうね。味方が増えるのはありがたいし、この四人なら、私の代わりに色々動いてくれそうだから。エヴァンジェリンのためにも頑張ってもらわないと……」


その言葉にヴィオラは渋々納得したのか、四人を別室へと移動させる。


「……って、私もエヴァンジェリンなんだけど」


皆が部屋を出たことを確認すると、エヴァンジェリンは一人呟いた。


その声は、どこか他人事のようだった。


***


ギィーッ――


「ここでお待ちください」


ヴィオラが、重い鉄で出来た扉を開けると、そこには広めの机と椅子がいくつか置かれていた。


「この中に入るのか……」


試しに壁を叩いてみれば、


カン、カン――


響くような、普段壁に使っている木とは違う別の音が聞こえてくる。


そして、ヴィオラが壁にあるボタンのようなものをカチリと押すと、


パッと部屋中が明るくなった。


咄嗟に、全員が目を細める。


「ま、まぶしいな……」


「えぇ……いつもより白いというか……蝋燭の光ではないですね」


「あぁ、陽の光でもない。一体どこから……」


まばゆい光を放つその場所を、四人は揃って見上げた。


天井近くに並ぶ、細長い棒状の何か。


「細長い棒が光ってる……?」


「あぁ、あんなの初めて見たぞ。」


「これが普及すればかなり生活も楽になるんじゃないか!?」


蝋燭の火のように揺らぐこともなく、一定に同じ光を放ち続ける異質な物を見て、それぞれ思いを巡らせる。


その時――


ギィ……


重い鉄の扉が開いた。


「そうね……ここにある物……いえ、シルヴァリア公爵領にある物があれば……この国を発展させることも簡単だわ」


(どこかで話を聞いていたのか……?)


どうやら、四人の会話の中に当然のように入ってくるエヴァンジェリンを見て、ユリウスは怪訝そうな顔を向ける。


「ふふっ。別に、貴方たちの話を聞いていた訳じゃないわ。ただ、なんとなく話している内容がわかっただけよ。それに……」


エヴァンジェリンは一度呼吸を置くと、近くの壁を叩きながら――


「ここは防音室よ。外に声が漏れないようにしてあるの」


「「「防音室!?」」」


初めて聞く言葉に四人は目を丸くする。しかし、エヴァンジェリンは慣れているのか……


そのまま話を続けた。


「そう。気になるのであれば一旦外に出てみるといいわ!中の声が聞こえないはずだから」


エヴァンジェリンが、片目を閉じて親指を立てながら扉を指し示すと、ヴィオラが重い扉を開ける。


すると、ルカリオスは「興味深い……」と言いながら外に出た。


ヴィオラが扉を閉めるのを確認すると、エヴァンジェリンは話を続ける。


「皆、どこでもいいから適当に座ってくれる?」


その声に合わせて、ルカリオス以外の全員が一番近くにあった椅子に腰を下ろした。


全員が席につくと、ルカリオスが目を輝かせながら戻ってくる。


「エヴァ!!あれは、すごいな。本当に声が聞こえなかった。」


「おい、エヴァンジェリンお嬢様だろ?」


ルカリオスがエヴァと呼ぶのを聞いて、ウィンデルが止めるように言えば、エヴァンジェリンは「そのままでいいわ」と答える。


「「「えっ!?」」」


「聞こえなかった?エヴァでいいって言ってるのよ。堅苦しいのは嫌いだし……」


「じゃ、話を始めるわね……っと、その前にこれから話す内容は他言無用でお願い。貴方たちなら大丈夫だと思うけど、念のため誓約書も書いてもらうわ」


エヴァンジェリンの言葉に合わせて、ヴィオラがユリウス達の前に誓約書とペンを置いていく。


「もし、約束できない。誓約書に名前を書けないならここから出て行ってちょうだい。」


いつもよりも真剣な目をする彼女に、ユリウス達は息を飲んだ。


部屋の中を、コツ、コツと机を指で叩く音だけが響き渡った。


それからしばらく――


ユリウスは誓約書を読むと、隣に置かれたペンを持ち、自分の名前を書き記した。


それを見ていた他の三人も、ユリウスが書き終わるのを確認してから誓約書にサインした。


そして――


誓約書を受け取ったエヴァンジェリンは……


受け取って早々に、中身を確認することなく


ビリビリビリ


「……ふふ……ふふふ……ふははははは……貴方たち本当に根性あるわね!」


そう言って誓約書を破った。


「「「……!?」」」


急に笑い始めたと思えば、誓約書を破く。


そんな彼女をみて、その場にいた全員が口を開いたまま固まった。


「ど、ど、どういうことだ……!?」


絞り出すように何とか話し出すユリウスとそれに続くようにうなずくルカリオスたち。


「……これは、あなたたちを信じるための言わば試験のようなものだったの。」


「試すような真似してごめんなさいね。でも……」


「これから話すことはそれだけ、大事なことなのよ。だから、貴方たちの覚悟を知りたくて……」


ユリウスは眉を下げて話すエヴァンジェリンとその隣に立つヴィオラを交互に見た。


(嘘を言っている訳じゃない……か……)


「それで?俺たちは……?」


「もちろん合格だわ!」


「もちろん合格よ」


そう言って微笑んだエヴァンジェリンの目は、先ほどまでの冗談めいた色をすっかり消していた。


その視線を受け、ユリウスは遅れて気づく。


(……これは、結構重たい話なんじゃないか!?)


しかし、時既に遅し――


後戻りできない場所に足を踏み入れたことを悟ったユリウスは、誰にも気づかれないようにこめかみをピクリと動かすと同時に、背中に嫌な汗が流れるのを感じていた。

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