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酔っ払い令嬢の英雄譚~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~  作者: ゆずこしょう
"二人”という秘密。

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秘密。

「エヴァンジェリンには二つの人格があるの。」


「……ッ」


(何となく……何かあるとは思ったが……これは信じていいの、か……?)


「んー、人格っていうのはなんか変ね。別に分かれている訳でもないし……」


エヴァンジェリンの突拍子もない発言に、ユリウスだけでなくその場にいた誰もが動きを止めた。


「って言っても、信じられないわよねぇ~。」


重たい話のはずなのに、エヴァンジェリンの口調のせいだろうか。


(作り話みたいだな……)


「だって、私もそうとしか思えないもの」


ユリウスが、ヴィオラが準備した菓子をパクパクと口に詰め込んでいくエヴァンジェリンを見ながら、返す言葉を考えていると――


気にもしていないのか、そのまま話を続ける。


「私は、エヴァンジェリンの時の様子を覚えているんだけど、エヴァンジェリンは私の時の記憶はないの。そこまで言えば何となくわかるかしら?」


「……ま、まぁ……なんとなくだが……」


「ふふ……無理に理解しようとしなくていいわ。私もわかっていないし。」


本当に自分でもわかっていないのか、エヴァンジェリンは軽く流す。


ユリウスはエヴァンジェリンの話すテンションについていけないのか、ヴィオラを見た。


しかし、ヴィオラも慣れているのだろう。


ただ聞き入るだけで、それ以上何も話そうとしない。


(ヴィオラの態度……本当だということなんだろうな。)


ユリウスは目の前の出来事を、理解しようと深く息を吐いた。


「話は何となくわかった。その、一つだけ聞いてもいいか?」


「……なに?」


「……エヴァが切り替わる時はどんな時なんだ?」


(何となく……想像はついているが……)


「ふふ。」


エヴァンジェリンは『よく聞いてくれました!』と言わんばかりに目を輝かせて笑うと、そのまま勢いよく立ち上がった。


「それはね~……」


その場にいた全員がエヴァンジェリンの声に耳を傾けていると、


「アルコールを摂取した時……です。」


ヴィオラが、表情を変えることなく、一言伝えた。


「ああ!!私が言おうと思ったのにぃ~!」


「遅いんですよ。さっさと言わないと話が進まないじゃないですか。それに……そろそろ時間ですよ?」


ヴィオラがチラリと時計を見ると、


ゴーン、ゴーン、ゴーン


タイミングよく、鐘の音が鳴った。


「あら、皆こんな所で集まって何しているの?」


「「「……は?」」」


急に人が変わったような態度に、その場にいた全員が言葉を失った。


そして、エヴァンジェリンもまた――


全員が驚く姿を見て、首を傾げた。


そんな中、一人だけ普段と変わらない女が一人。


「エヴァンジェリンお嬢様。あなたはチョコレートを食べてから少し眠ってしまわれていたのですよ。疲れていたのですね。」


ヴィオラはエヴァンジェリンに新しい紅茶を差し出しながら、何事もなかったように話す。


「その間に……今後の話をしやすいようにこちらに移動しておきました。」


(さすがだな……慣れているということか。)


「寝ちゃったのね。たまにチョコレート食べるとあるのよね……」


そう言って、彼女は深く考える様子もなくカップに手を伸ばした。


「じゃあ、さっきの話の続きをしましょうか。」


「あ、あぁ……そうだな。」


覚えていないからか、彼女もまた何事もなかったかのように話を進めた。


そして、その様子に戸惑いながらも、ユリウスは無言でうなずいた。


「……で?どこまで話していたっけ……」


「生産量に対して、商品が少ないということ。それと……」


ヴィオラはそこで一旦区切ると、手を強く握りしめた。


「ルピナスト伯爵家が関わっているかもしれないということでした。」


「あぁ~、そうだった、そうだった!」


軽くポンッと手を叩くと、これからの事について話し出した。


「皆にはそれぞれやって欲しいことがあるの。」


「「「やって欲しいこと?」」」


「そう、あなたたちにピッタリの仕事よ!」


ペンを取り出すとサラサラと紙に文字を書いていく。


(……誓約書の時も思ったが、紙もペンも初めて見たな。)


「その紙……そんなに使って大丈夫なのか?」


「あぁ、この紙?全然大丈夫よ!羊皮紙と違って量産できるものだしね。ペンも毎回インクをつけなくて良いからすごい楽なのよね。」


その言葉を聞いて、今まで静かに話を聞いていたヴィンデルが身を乗り出した。


「エヴァンジェリンお嬢様。その紙とペンを俺に譲っていただけたり……なんかしないでしょうか?」


(いや、紙もペンも高価なものだし無理だろう……)


「やっぱり……無理……」


「……いいわよ。」


「……です……って、良いんですか!?」


文字を書き続けているため机から顔をあげることはないが、話はきちんと頭に入っているようだ。


「うん。ヴィオラ、あとでウィンデルに紙とペン渡してくれる?」


「かしこまりました。」


タイミングよく、ペンを置くとエヴァンジェリンは紙を全員が見える位置に置き、今後について説明を始めた。


「ウィンデルにはお父様の仕事を手伝ってほしいから、お父様たちのところに向かってくれる?ちょっとどこにいるかは分からないんだけど……きっとどこかにいるはず……それに……多分貴方には向いてると思うわ。」


「わかった……って、探すところから!?」


「そう!たぶん……夜会とかお茶会で営業してると思うから。よろしくね?」


「よろしくって……お茶会と夜会ってどれだけ……ってもう聞いてないし……」


ウィンデルが不服そうな顔でエヴァンジェリンを見ているが、彼女は既に別のところに視線を向けていた。


「ルカリオスは、私の従者があってると思う。領地経営とか手伝ってくれるかしら?」


「……いいだろう。」


ルカリオスまでトントン拍子に話を進めていくと、エヴァンジェリンは先程よりも真剣な表情で、クラウディウスとヴィオラを見た。


「そして、ここからなんだけど……クラウディウスとヴィオラには……」


「ルピナスト領に行って欲しいの。」


その言葉にクラウディウスとヴィオラは顔を見合わせた。

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