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酔っ払い令嬢の英雄譚~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~  作者: ゆずこしょう
……とあるものを拾ってしまいました。

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……どうやらすごいものを拾ってしまっていたようです。

「皆さん、この度はお騒がせして申し訳ございません。せっかくの夜会です。会場に戻って楽しんでください。」


エヴァンジェリンは、その場にいた人たちに謝罪をすると会場に戻るように促した。


そして、皆が帰ったのを確認すると、エヴァンジェリンもその場を後にしようと歩き出した刹那――


「ま、ま、待ってくれ……」


頬を押さえたバルティオスが縋るような声を上げた。


しかし、エヴァンジェリンは足を一瞬止めるだけで、バルティオスの方を振り返ることはなかった。


「もう、貴方と話すことはありません。どうぞ、そちらの愛する女性と末永くお幸せに」


それだけ言うと、会場の外へと足を向ける。


「ユーリ。私達の用事もすんだし……帰りましょうか。」


「そうですね。帰りましょうか。」


(ここに長居をして、バレたらまずい……)


そのときだった。


「ハァハァ……エヴァンジェリンお嬢様。お、お待ちください」


会場を出て外へ向かうと、背後から声をかけられた。


「何でしょうか?」


エヴァンジェリンが後ろを振り返れば、チョコトーレとアリアーヌが立っている。


「あ、あの……」


チョコトーレは額から流れる汗をハンカチで拭いながら、顔色を窺うように逃げ腰のままエヴァンジェリンに近づいた。


エヴァンジェリンはその姿を見て首を傾げて、少し考えると、思い出したのか手をポンっと叩いた。


「あぁ~……まだお礼をお伝えしておりませんでしたね。今日はこのような機会を与えていただき助かりました。ありがとうございました。」


スカートの裾を摘むと、ふわりとスカートを広げながら足を後ろに引いた。


(さっきまで千鳥足だったくせに……)


ユーリは、エヴァンジェリンを見て小さく息を吐く。


(酒は抜けたみたいだから大丈夫か……)


「いえ、それはよいのです。エヴァンジェリン様のお役に立てて良かったです。それで……」


「あぁ~今後の取引ですか?それは大丈夫ですよ。高級宿屋はなくては困りますし……」


「いえ、そっちの話ではなく……いや、その話も大事なのですが……」


エヴァンジェリンは本当にわかっていないのか、もう一度首を傾げた。


「その、ユリウス第三王子とお話をさせていただきたいのです……」


「ユリウス第三王子殿下ですか?」


「はい……」


「前にもお話したと思いますが……ユリウス第三王子殿下のことは存じ上げません。もしかしたら他のところに行っているのでは……」


そこまで話すと、今まで黙っていたアリアーヌが口を開いた。


「そんなの嘘よ!絶対この女が嘘をついているんだわ!だって貴女が言ったじゃない。『ユリウスは私が貰う』って……私この耳でちゃんと聞いたんだから!!」


(いや、正確には私のものだと言ったんだがな……)


ユーリは心の中でツッコミを入れると、エヴァンジェリンはアリアーヌの言葉を遮るように大きなため息を吐いた。


「はぁ……」


そして、アリアーヌをちらっと見る。


「貴女ねぇ……場をわきまえなさい。」


「いい歳して……もう少し大人にならなくてはいけないわ。」


「まず、人を指でさすのはおやめなさい。それに、私の方が貴女より爵位は上です。こんな所でそんな態度とってもいいと思っているのかしら。隣のチョコレート侯爵を見てみなさい」


(いや、チョコトーレな……)


エヴァンジェリンがサッと視線をチョコトーレの方に向けると、アリアーヌも隣に立つ父親に目を向ける。


(顔が真っ青だな……)


「お、お父様も何か言ってください!!」


しかし、その異変すら目に入らないのか、アリアーヌはまくし立てるようにチョコトーレに声をかけた。


「……やめろ……」


絞り出すような小さい声で呟く。


「お父様……!聞いていますか!?」


しかし、アリアーヌには聞こえていなかったのか、そのまま話を続ける。


「……頼む……やめてくれ……」


「お父様?」


そして、次の瞬間――


「やめろと言っているんだ!!」


痺れを切らしたチョコトーレは今までにないほどの大きな声を上げてアリアーヌに怒鳴りつけた。


「お、お父様……?」


まさか、チョコトーレが怒鳴りつけると思っていなかったのか、アリアーヌは父親の変わりように思わず目を見開いた。


「お前には昔から何度も言っているだろう。感情で動くな。一回考えてから行動しろと……なのに、いつも感情でばかり動く。もう少しエヴァンジェリン様を見習ったらどうなんだ。お前より五つも年下だというのに、家業もこなし事業も行っているんだぞ?」


チョコトーレの言葉に何も言い返すことができないのか、アリアーヌは黙って話を聞いているように見える。


(……いや、聞いているんじゃなくて、わかっていないという感じか。)


「今だってそうだ。爵位が上の相手の方にそんな態度を取って。一から貴族教育を受け直すか?」


「それは嫌です……」


アリアーヌは首を横に振ると、そのまま黙り込んだ。


「では、貴族を辞めるということだな?」


「それは嫌です。私はユリウス第三王子殿下の婚約者なんですからそんなこと出来るわけないじゃありませんか」


その言葉を聞いた瞬間、ユーリの頭の中は一瞬停止した。


(こいつ……何を言っているんだ。)


「そんなの無理に決まっているだろ?そもそもお前がこのような事態を引き起こしたんだ。既に手遅れに決まっているだろうが!」


「ですが……お父様もそのつもりでユリウス第三王子殿下を探しているんじゃ……」


「はぁ。そんな訳がないだろう。何を言っているんだお前は!!」


二人のやり取りを横目にみていると、不意に突風が巻き起こった。


ひらり。


ユーリの頭から、ウィッグが外れる。


そして、その場にいた全員の動きが、一瞬で止まった。


「……ユリウス、様……?」


震えた声で、アリアーヌが呟いた。


次の瞬間、ざわめきが一気に広がる。


「……え?」


エヴァンジェリンは、ぽかんと目を瞬かせてから――


「えっ!? 貴方、第三王子だったの!?」


エヴァンジェリンの声が、アルノワ侯爵邸に響き渡った。

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