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酔っ払い令嬢の英雄譚~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~  作者: ゆずこしょう
……とあるものを拾ってしまいました。

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月光花。

「ねぇ、私が来てよかったのぉ?」


中庭――


「あぁ、ペアで参加して欲しいという話だったからな。」


王宮とは違い、月の光が反射したような黄色い花が咲き誇っている。


「それだったら、婚約者と参加するのが普通なんじゃない?」


「あんな地味なガリ勉女と来たって楽しいわけがないだろ?せっかくの夜会くらい、好きな女と参加したいじゃないか」


その言葉に、彼女は一瞬だけ目を伏せてから、そっと笑った。


「……ふふ。なら、いいんだけどぉ」


そう言いながら、彼の腕に軽く指先を絡めると、肩にもたれかかった。


「レグ、見てみて?白い花も綺麗だけど、黄色い花も綺麗ね。」


「まるで、星が落ちてきたみたいじゃない?」


まるで世界には二人しかいないとでも思っているのか……


二人は向き合うと、どちらからともなく顔を近づけた。


「そうだな。でもエマのほうがここにあるどの花よりも美しいよ。」


「ふふ……上手いんだから。それよりも……」


エマは一瞬だけ間を置いて、甘えた声で、


「いつあの子とは別れてくれるのぉ?」


バルティオスの耳元で囁いた。


「もう少し待っていてくれ……一旦あいつとは結婚しないといけないと知っているだろ?」


「知ってるけどぉぉぉ……やっぱり、レグがエマ以外と結婚するなんて嫌だなぁって思っちゃってぇ……」


バルティオスの胸辺りにグリグリと人差し指を押し付ける。


「本当に可愛いな。エマは……あいつとは大違いだ」


バルティオスはギュッとエマリアを抱きしめた。


「エマ愛してる。」


「私もよ……レグ、愛してるわ。」


その瞬間――


「みぃぃぃ~っつけたぁぁぁ~!!」


甘い空気をぶち壊すかのように、二人の間に悪魔の声が響き渡った。


***


♪~♪~♪


「おい、どこに行くんだ?」


「ん~?ついてからのお楽しみぃ~♪」


ユーリは鼻歌混じりで歩くイリスを後ろから眺めていると、中庭の前でピタリと足を止めた。


(……用があったのはここ……か?)


中庭の前まで来たものの、外に出ようとはせず、キョロキョロと辺りを見渡してから、外から見えない位置にしゃがんだ。


「……何してる……」


「シッ!!」


ユーリがイリスに声をかけようとすると、イリスは人差し指を口元に持ってきて、もう片方の手で、音を立てないようにとある方向を指差した。


(あれは……どこかで見たことあるような……)


月光花の間で抱き合っている男女と、その二人を食い入るように見るイリス。


途切れ途切れだが、声が聞こえてくる。


「あんな……ガリ勉女と……楽しい……無いだろ?せっかく……夜会くらい……好きな女と……」


「……エマの……どの……美しい……」


(ガリ勉女……?ということは男の方には婚約者がいるのか。)


イリスを見ると、目を輝かせながら楽しそうに二人を見ていた。


(イリスも興味があるのか……?)


「エマ愛してる。」


「私もよ……レグ、愛してるわ。」


そして、二人が愛を囁いた瞬間――


『待ってました!』と言わんばかりに、イリスがガバッと立ち上がった。


そして、二人の前に歩いていくと、今までに見た事のないような満面の笑みで、


「みぃぃぃ~っつけたぁぁぁ~!!」


二人に声をかけた。


「きゃぁぁぁぁ~!!」


イリスが声をかけると、抱き合っていた二人はまるで幽霊でも見たかのように大きな声を上げた。


「えっ!?」


「お、お前は……」


イリスを見ると、二人は目を大きく見開いてから、同じ方向に首を傾げた。


「「……誰?」」


(知り合いじゃなかったのか!?)


ユーリは思わず心の中でツッコんだ。


「んふふ……お久しぶりですね。バルティオス様。」


「君とどこかで会ったことあるだろうか。君のような綺麗な女性……忘れるはずないと思うんだが……」


バルティオスの言葉に、エマリアはジロリと睨んだ。


「貴方……もしかして……」


「い、いや……俺はエマリアと出会ってから他の女性と付き合ってはいない。」


二人の間に不穏な空気が流れると、その空気に乗せるように、イリスはゆっくりとバルティオスへ歩み寄った。


月光花が咲き誇っているからか、イリスの灰金の髪がキラキラと金色に光っている。


(月光花に浮かぶ赤い瞳か……まるで魔女だな。)


「それは酷いですね。私と貴方はもっと深い関係じゃないですか。」


「深い関係……?」


「ふふ……そうですよ? だって……」


イリスはわざと言葉を切ると、少し間を開けてから――


「……婚約者ですから」


二人は理解できないのか、イリスの言葉の余韻だけが残る。


やがて、時計の針が動き出したかのように、二人は大声をあげた。


「「えぇぇぇええええ!?」」


「こ、こ、婚約者!?全然ガリ勉じゃないじゃない!」


「えっ、お、お、お前……エヴァンジェリンなのか!?」


(まさか、婚約者だったとはな……)


「って、え!?婚約者!?」


遠くから見ていたユーリも、イリスの言葉を聞いてから心を落ち着けるように深く息を吐いた。


そして、馬車の中の言葉を思い出す。


(婚約破棄……ってこの事だったのか……)


エヴァンジェリンは三人が落ち着くのを確認してから、話し始めた。


「名乗りが遅れましたね。私、エヴァンジェリン・アイリー・シルヴァリアと申します。正真正銘……」


ビシッ


エヴァンジェリンはバルティオスを指さすと同時に、


「そこの浮気野郎の婚約者です!」


と声を上げた。


その瞬間――


示し合わせたかのように、貴族たちが中庭へと集まってくる。


「ふふふ……これでもう逃げられませんね?バルティオス様と……エクレア様。」


「エクレアじゃなくてエメリアだ。」


「違うわよ!エマリア。エ・マ・リ・ア!!」


エヴァンジェリンは、静かに微笑んだ。


「別に、貴女の名前なんてどうでもいいんですよ。」


ざわり――


中庭に集まった貴族たちの視線が、一斉に二人へと向けられる。


「それよりも、始めましょうか?本当の夜会を……」


(……終わったな。)


ユーリはそう確信しながら、静かに息を吐いた。

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