バイト先で、、
薬指の日焼けの痕でなんとなく気づいた別れの予感、というのは僕が作詞作曲した歌で、僕の小説の中にしょっちゅう出てくるので、既視感がある人もいるかもしれません。
薬指の日焼けの跡でなんとなく気づいた別れの予感。慌てながら微笑んで、ポケットから取り出したハンカチーフに指輪を包んで僕に渡してきた。嫌いなわけじゃない。なんて一番ずるいね。不思議と君といるとなんだか実家にいるみたいだった。君の前だと自然でいられた。だから居心地が良かったし、まさかこんな日が来るなんて思いもしなかった。
二人の幸せよりも夢を選んだ君を僕はこころの底から応援しているよ。二人が写った思い出のアルバム。いっつも真顔の君が初めて笑った。古都奈良の大仏、二人で撮ったポラロイド。さよなら。僕の愛しき君。
僕らが出会ったのはバイト先だったね。ただ、楽だからと選んだクリーニング屋の受付。夜学だった僕が早番で君は遅番。住宅街の中にある個人経営のクリーニング屋だったからそんなにお客さんも来ないし、よくあんな経営状況でバイト二人も雇えたと思うけど、二人を出会わせてくれたから感謝してる。僕は土曜日は染み抜きも手伝ってたから、君と一緒にシフトに入れる土曜日は楽しみだった。どこから見てもお嬢様タイプの君は常連客のおじさんたちに人気だった。
あれ、覚えてる? 初めて君と僕が出会った日。店長がしゃがんだ瞬間にお尻の生地が破れたの。僕と店長がゲラゲラ笑ってたけど、初日の君は遠慮して必死で笑いを堪えてたの。君はいつだって真顔だった。笑わないけど、その愛らしい顔でお客さんのこころを鷲掴みにしてたのは僕にも欲しい技術だったよ。
早番の僕と遅番の君が入れ替わるわずか5分だけの引き継ぎ、て言ったって大したことないんだけど、その時間が唯一喋れる時間だったから僕は楽しみだった。
日曜日は店長の子どもを連れてあちこちへ行ったね。今でもいい思い出だよ。(了)
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