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日の出屋物語
文学賞に出したやつの荒削り版です。
「そろそろお昼にでもしまひょか」
日の出屋の女将が方々に醤油やらの染みのついた割烹着姿で職人たちに声をかける。待ってましたとばかりに職人たちは食事場である大広間に急ぐ。それでも一人、中間昭雄だけは持ち場を離れない。急きモノがあるからと洗剤の入った冷たい桶に素手を入れてささらを握って、染みを落とす。一番下っ端の昭雄にはどのみち大広間に行ったところでまともな飯にはありつけぬ。先輩職人たちの残った米粒をさらえて汁にして飲むぐらいである。だから体は目に見えて細ってきて、皮と骨だけのような薄っぺらい体だ。
昭雄には強い思いがあった。一人前になるまでは故郷へは帰らないと。だから人一倍努力をしてなんとか一人前になろうと必死だった。
「おい、坊主。はよ飯食ってこい」
声をかけてきたのは二番頭の三宅だった。
「ありがとうございます。これ一着終えたらいただきます」
「仕事に没頭するのもええけど、俺らみたいに学のないもんは体が資本やけえ、体壊したらあかんさかいにな」
三宅に促されて大広間に向かった。お櫃の中を見ても先輩の食べた後だったもんで、米粒がへばりついているほどだった。でも、それにお茶を注いで、かき集めて茶碗に盛った。(了)
ありがとうございました。




