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ブリーフ

なんでこんなタイトルをつけたのか、自分でもわかりません。仮タイトルなんで、適当に付けてるんでしょうね。

 上映時間中、周囲の客は皆一様にハンカチを握りしめ、時折鼻を啜ったり、涙を流したり、あるいは嗚咽する者もいた。俺はスクリーンに映像が流されているあいだずっと、隣で涙ぐむ連れの横顔をチラチラ観ながら、悔しい思いとやるせない気持ちが絡んだ複雑な感情を抱いていた。

 決定的だったのは最後の場面だった。彼女の泣きながら発したセリフ。それが俺が書いたものと寸分の狂いなく同じものだったのだ。

『テールライトの残像』

 アニメに詳しくない界隈にでさえそのタイトルぐらいは聞いたことがあるに違いない。フィルムの上映開始以来、チケットは売り切れ続出で、新聞やテレビや雑誌といったメディアもこぞって連日のように特集を組み、関連用語がクイズ番組で出題されるような勢いだ。もちろん映画だけにとどまらない。秋にはゲーム化が決まっており、缶バッジ、タオル、カードといった関連グッズだけでも化け物級の売上で、トレンディ雑誌のヒット番付の上位に食い込んでいる。

 俺がこの映画を観るのはこれで都合4回目だ。何もこの映画のファンではない。俺は確認のために映画の割引の日を狙ってできるだけ安い方法で観に来るのだ。

 俺が裕福でないのは経歴を見てもらえれば一目瞭然だ。地元の公立の中学校を出て、隣町(正式には隣の市だが)の高校を出た後、定職にありつけず、何やら便利グッズのようなものを売りつける訪問販売の派遣社員として食いつないだ。それも長くは続かず、実家の酒屋を手伝った。不景気の煽りは酒屋も例外ではなかった。酒屋や米屋など「屋」のつく商売は皆右肩下がりに落ちていった時代だった。近くには二十四時間営業のコンビニが増え、取引先の居酒屋などは歳を理由に閉めていく店が増えた。新規の開拓先は見込めなかった。高校時代、夏休みに家の手伝いと小遣い稼ぎのつもりで実家を手伝った時は、あまりにキツくて投げ出しそうになるぐらい忙しかったのに、俺がいったん社会に出て、戻ってきたときには、トラックの半分もビールケースが埋まらなくて、思うように稼ぐこともできずに苦しい思いをした。そんな中、高校を卒業してから四年が経った頃、大学へ進学した周りの同級生たちは俺がおおよそ想像もつかないような大手有名企業への就職を決めてきた。SNSには大学を卒業間近に控えた高校の同級生が肩を組んで酒を酌み交わす写真が堂々と何枚もアップされるようになり「いいね!」が何十件と付く。仲間のいない俺は記事をアップしても二、三件「いいね!」が付けばいい方だが、リア充たちはあげて数分で二桁の「いいね!」が付く。住む世界が違うな、というのはもう大学へ進学できなかった時点で大方の予想は付いていた。(了)

 

ありがとうございました。なんか、前書きと後書きの方が長いかもしれませんね。

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