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F#

この、袖口がテカテカで、ハンカチを貸すという物語をあちこちで書いているので、重複ちょうふくがあるかもしれません。

『ハイスクール・バイスクール』


 憧れの彼の焦茶色の制服の袖口の釦の周りがテカテカに光っている。少しだらしのないところがかえって女心をくすぐる。しっかりした学級委員タイプの割に隙がある。スクールバッグに詰め込んだポーチの中から柄物のハンカチーフを取り出して彼にそっと差し出した。

「ほら、鼻水出てるよ。これで拭きなよ」

 根っからの男勝りな性格と照れ隠しからかどこか男っぽい口調できつく言ってしまう。素直になれない女の子の感情は古今和歌集の時代から何ら変わってないような気がする。

「サンクス」

 必死で照れをごまかす私とは対照的に彼はケロッとして、ハンカチを鼻の下に当てて、サンクスを繰り返す。

「汚いから、返さなくてもいいから」

 とか言いながら、本当はそのハンカチ頂戴! って心の中で叫んでみる。届かないだろうなあ、この気持ち。

 駅前の駐輪場の定期利用のゾーンに自転車を置いて改札に向かう。改札を抜けてホームで電車を待っていると、向かいのホームの待合室に高校生のカップルがくっついている。遅番の時間だったし、反対側は海側へ向かう逆ラッシュだから人があまり来ない。私の空想の中で、彼と彼女はキスをする。そう思っていると、本当に彼と彼女がチュって軽いキスをした。甘酸っぱいような、それと同時に自分にはあり得なかった青春時代への嫉妬が

入り混じった複雑な感情が湧いてきた。(了)



 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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